CASE・MaaS時代の車内UI/UXの最前線…レスポンス20周年記念特別セミナー/東京モーターショー2019

オリーブストーン UXデザイン総括 取締役 キム・ギョンス 氏
オリーブストーン UXデザイン総括 取締役 キム・ギョンス 氏全 3 枚

東京モーターショーの期間中である10月31日に、会場である東京ビッグサイトで開催された「【レスポンスセミナー】CASE・MaaS時代の車内UI/UXの最前線」。レスポンス20周年記念特別セミナーとして開催され、多数の来場者を集める注目のセミナーとなった。

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テーマとなったのはCASE・MaaS時代のUI/UX。クルマの中で非常に大切なUI/UXだが、自動運転などの進化でますますその注目度が上がっている。そんなクルマのUI/UXがどのように進化して行くのか、実際に開発を担当している現場の開発者の声を直に聴くことで、現在そして近未来のUI/UXの状況を知ることができるというセミナー内容となった。

超大型ディスプレイや後席でのUI/UXの進化

オリーブストーン UXデザイン総括 取締役 キム・ギョンス 氏オリーブストーン UXデザイン総括 取締役 キム・ギョンス 氏最初に登壇したのは韓国でUI/UXを手がけるオリーブストーン社のUXデザイン総括取締役であるキム・ギョンス氏。モバイルから自動車まで幅広いUI/UXを手がけてきたデザイナーであり、ヒュンダイ自動車の先行開発なども手がけた実績を持つ。当日は「後部座席でのUXの新展開」をテーマに講演した。

キム氏はモバイルデバイスやウェラブルの開発で得た経験を、クルマのイノベーションに使うことになる。2008年頃にはクルマのクラスターパネルがアナログからデジタルへと変化する時期だった。その時に高級車のLCDプロジェクト開発に参加し、将来のビジョンが見えてきたという。そこでキム氏は「クルマはIT機器と捉える」こととし、クルマのUI/UXの可能性を探ることになる。

CASE時代のUIにはデザインの上ではSkeumorphismと呼ばれるアナログ的なデザイン要素から、Minimalismと呼ばれるシンプル・華やかさを追求するものがもてはやされることになるという。実際にEVのクラスターパネルにはホワイトやマットなデザインを用いたものも多くなっていくのはそんな流れから。これは「今までと違う」をユーザーに感じてもらうためのデザイン的な変化だったとキム氏は語っている。

そして、近未来のデジタルディスプレイは窓ガラスへ情報を映し出すHUDの進化がキーワードになると語った。超大型化するディスプレイをフロントガラスに担わせるというアイデア。エンタメ機能も含めたウインドウのディスプレイ化を進めている。既存のディスプレイを無くしてしまうことも視野に入れているという。

また後席ユーザーのためのUXについても開発を進めている。その一つが既存のタブレットを使って車両設定(明かりの色や明るさ、エアコン、シート調整など)やエンタメ、情報などを得られる機能を備えること。それにはタブレットに加えて専用のアプリを開発がキーワードになる。これらのプロジェクトもキム氏が現在手がけるプロジェクトの一つだと語った。

CASE時代の不安を払拭するUI/UXの新たな可能性を探る

エスディーテック 取締役副社長CTO 鈴木 啓高 氏エスディーテック 取締役副社長CTO 鈴木 啓高 氏次に登壇したのはエスディーテック株式会社 取締役副社長CTOの鈴木啓高氏。UI/UXを手がけるデザイン会社である同社はクルマやカラオケなどのカテゴリーのUI/UX開発を行っている。また組み込みソフトウェアも手がけ、実装も行っているのも特徴の会社だ。

鈴木氏は「CASE時代:これからのUI/UXデザイン」をテーマに講演した。最初にUI/UXの利用時品質を豊かにするとはなにかをコンビニのコーヒーマシンを例にしてわかりやすく説明した。

コンビニに来店してコーヒーマシンを使うケースを想定、はじめてセルフでコーヒーマシンを使ったユーザーが、どのような点で戸惑うかを実際に検証している。ボタン表示や操作法などで戸惑うことが映像で示され問題点が浮き彫りになる。作り手側がいくら良い機能を提供しても、利用者が“使いにくい”と感じる、または使い方を間違ってしまうものは利用時品質が低いという点を指摘する。その後のコーヒーマシンで、利用時品質を高める改善が施されていく過程も説明された。あくまでもUI/UXを開発する際には、利用時品質を豊かにすることを忘れてはいけないことを語った。

鈴木氏はクルマのUI/UXはインターフェイスからコミュニケーションデザインへと進化する時期に差し掛かっていると言う。その説明の中で、自動運転車両に乗り込んで自動走行をしている老婆のビデオを紹介した。映像では老婆は驚き続けている、決して自動運転に満足していないことがわかる。これはコミュニケーションが無いことが原因であり “よくわからないものを使いたくない”という心理が働いているのだと指摘。これを“使いたい”と思えるようにするのがこれからのUI/UXの仕事だと説明した。安心=安全では無いということ、そんな安心感を与えるのもUI/UXの役目だと語った。

また予測誤差の問題も指摘。自動運転の時代には自分のクルマがどのような動きをしているのかを把握できないと不安になってしまう。思っていた動きと違うと違和感や恐怖感を感じる予測誤差が常に生まれてしまうのだ。CASE時代のクルマのUIには従来のようなクルマの状態を示す計器だけではなく、クルマの周囲を広くドライバーに知らせるなんらかの手法が求められると言う。CASE時代のクルマでは“使いたく無い”をUI/Xが解決していくことになる。

なぜ移動するのかをベースにクルマによる移動とUI/UXを考える

ドッツ スマートモビリティ事業推進室 室長 坂本 貴史 氏ドッツ スマートモビリティ事業推進室 室長 坂本 貴史 氏最後に登壇したのは株式会社ドッツ スマートモビリティ事業推進室室長の坂本貴史氏。元 日産自動車のUX/UIデザイン部で働き、数々のUI/UXを開発してきた実績を持つ講師だ。

坂本氏は「MaaS時代におけるUI/UXデザイン」をテーマに講演した。最初に、日産のUI/UXを開発してきた経験から、クルマのUI/UX開発の難しさを紹介した。クルマにはディスプレイによるソフトスイッチとエアコンパネルなどのハードスイッチが混在する環境。それらをいかにソフト中心のUI/UXへと進化させるかがテーマの一つ。コンソール中央のモニターに映し出すスピードメーターの例や、両サイドに2機のモニターを配置してサイドミラーを映像として映し出す例を紹介。また、操作系をドライバージェスチャーで行うUIの例なども映像を交えて見せ、UI/UXの新しい可能性について実例で紹介した。

またMaaS時代にはクルマの目的を電車や自転車など、他の手段が得られる。移動の手段の自由化が起きている。例えばスマホアプリで経路検索すると、さまざまなプランの中にウーバーを使った経路も出てきてそのまま予約もできてしまうのがその一例だ。

また“何のためにクルマに乗るのか”“なぜ移動するのか”もテーマとして問うた。

そのひとつの考え方として体験に移動を加えるという考え方があるという。つまりどういう体験をしたいかのビジョンが先で、その他意見を実現するためにクルマだけではなく、数ある移動手段の中から選ぶというのがMaaS時代の考え方だ。そのとき車内体験はドライバーでは無くパッセンジャー本位になる。何のためにクルマに乗る(WHY)から考えるのがこれからのモビリティサービスには必要になる。そのためMaaS時代の車内におけるUI/UXデザインにはHVAC(空調機能)やエンタメなどが重視されることになっていく。すでに体験の切り口から目的地検索をしてナビとの連携や施設の予約などが可能なアプリも登場している。

そして自動運転の車内で最も重要になるのはリラックスできることであると語った。ゆったりしたシートなどを含む環境でリラックスできると、車内がより豊かになる。それができるのも自動運転の目指すべき方向性だと指摘した。

《土田康弘》

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