マセラティ、イノベーション・ラボを公開…バーチャル新車開発の最前線

2種類のシミュレーター

世界中のあらゆる路面をバーチャル再現

新車の市場投入までの時間を50%削減

次世代電動モデルの開発も進行中

ヒューマン・マシンインターフェースの設計部門も

マセラティ・イノベーション・ラボ
マセラティ・イノベーション・ラボ全 7 枚

マセラティ(Maserati)は11月12日、イタリアの開発拠点、「マセラティ・イノベーション・ラボ」を初公開した。

マセラティ・イノベーション・ラボは、イタリア・モデナにあり、ブランドの研究技術、開発、計画を手がけている。通常は関係者以外の立ち入りを認めていないが、今回、初公開されている。

マセラティ・イノベーション・ラボは、現行車種を含む新車開発のための施設だ。ここでは、デジタルプロセスが商品開発を支えている。また、ハードウェアとソフトウェアを独自に組み合わせることで、顧客ニーズへの関心を、バーチャルシミュレーションプロセスに緻密に織り込んでいる。

商品開発を支えるこのデジタルプロセスは、3つの主要分野に分かれる。ひとつ目が「DiM(ドライバー・イン・モーション)」技術を搭載する最新世代のダイナミック・シミュレーター、2つ目がスタティック・シミュレーター、3つ目がユーザー・エクスペリエンスだ。

マセラティ・イノベーション・ラボマセラティ・イノベーション・ラボ

2種類のシミュレーター

スタティック・シミュレーターは、マセラティのシミュレーション分野の出発点だ。このシステムは、コックピット、3つのプロジェクター、高い計算能力で構成されている。これは、開発プロセスのかなり初期の段階から、エンジニアがドライバーからのフィードバックを即座に得て、新型の検証に大きく貢献できるよう支援するシンプルなシステムだ。

マセラティ・イノベーション・ラボマセラティ・イノベーション・ラボ

とくにマセラティのエンジニアリングは、「HiL(ハードウェア・イン・ザ・ループ)」手法とシミュレーターとを連携させることにより、バーチャル開発の段階でもドライバーを中心とした戦略を徹底している。このアプローチを採用することで、ステアリングやブレーキ、ABS、ESCといったサブシステムを加えることができ、実物とシミュレーション上のコンポーネントをつなぐテストを作成して、新しい車のあらゆる特長を開発するためのたたき台を提供できるという。また、世界のあらゆる場所で起こりうる複雑なシナリオを再現することにより、先進運転支援システム(ADAS)を安全な環境で開発、テスト、検証することができる。

世界中のあらゆる路面をバーチャル再現

マセラティ・イノベーション・ラボマセラティ・イノベーション・ラボ

最新世代のDiM技術を搭載し、欧州で最も現代的で進んだダイナミック・シミュレーターは、あらゆる新型車の開発に携わるマセラティのエンジニアを支援している。最新のテクノロジーを採用したダイナミック・シミュレーターは、開発にかかる時間とコストを削減する。また、プロトタイプの数を減らし、最終製品に近づけるうえでも役立つという。

このツールは、さまざまな方向に動かせることで、効果的なドライビング体験を生み出し、世界最高峰の国際レースサーキットを含め、さまざまな路面や状況における実車のドライビングダイナミクスを、バーチャル環境で再現できる。

マセラティ・イノベーション・ラボマセラティ・イノベーション・ラボ

このシミュレーターにより、さまざまな走路で同日にテストすることが可能になる。数回のクリックで車両に変更を加えることもでき、集積データの分析を大幅に簡素化する。

新車の市場投入までの時間を50%削減

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シミュレーターの多くは、6つのアクチュエータを使う。す。マセラティでは、9つのアクチュエータを最大限活用し、それによって車の運転特性を正確に再現する。これらによって、エンジニアは運転性能や快適性に加え、車のダイナミクスを正確に分析できる。車道上で、プラットフォーム全体を浮かせる非常に薄い空気のクッションを導入。電動アクチュエータによって、ダイナミックで静粛、そして継続した動きを実現しているという。

最新世代のDiMテクノロジーを搭載したダイナミック・シミュレーターは、新車の市場投入までの時間を50%削減し、全開発の90%をシミュレーター上で実施し、実際のプロトタイプの使用を40%削減することを可能にしている。

マセラティ・イノベーション・ラボマセラティ・イノベーション・ラボ

次世代電動モデルの開発も進行中

シミュレーターを使用することで、実車でのテストが可能になる前でも、たとえばマセラティの今後の電動モデルを開発できるようになる。数百ものさまざまなコンフィギュレーションをテストできるため、重量配分や重心の位置が最適化される。

車両のアクティブな機能と電気トラクションを管理する集中型ロジックが開発され、ドライバーからのインプットすべてに車全体が一元的に反応するようになり、動的性能を最大化できる。これは、パワーと俊敏な反応という面で、電気モーターが持つポテンシャルを活用することを目的としている。

ヒューマン・マシンインターフェースの設計部門も

ユーザー・エクスペリエンス開発研究所は、ヒューマン・マシンインターフェースの設計が主要な業務だ。最新の自動車は、コネクティビティの急速な進化とADASの利用に、電動化も加わったことで、開発は複雑さを増している。

マセラティの運転シミュレーター拠点には、自動車人間工学専門の研究所が含まれ、運転姿勢、視認性、車載制御装置やディスプレイとの対話を正確に再現することができる。そこでは開発中の車両を、あらゆるシナリオの中で最大の現実感をもって運転することが可能だ。

ユーザー体験の統合設計は、最も頻繁な操作によって引き起こされる注意力低下の度合いから、アクセスしやすい制御装置レイアウトや、さまざまな運転モードにおけるすべての情報に至るまで、高度自動運転モードにおける視覚、音響、触覚による効果的で明確な警報に支えられている。

この人間工学研究所は、ユーザー体験に影響を与えるさまざまな問題を分析するための、高性能で特殊な計器装備を導入している。心理音響学研究所では、将来のマセラティ車のサウンドトラック、音声による警報など、多くの音響効果を開発している。

《森脇稔》

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