脳年齢と運転適正を計測…セガと損保ジャパンがドライビングアナライザーを共同開発

セガと損保ジャパンがドライビングアナライザーを共同開発
セガと損保ジャパンがドライビングアナライザーを共同開発全 12 枚

セガと損保ジャパン日本興亜が、シミュレーターで運転適性や運転能力を測定できるドライビングアナライザーを開発中だ。このほど体験できる機会を得た。ドライビングシミュレーターそのものは、いまや珍しくないが、やってみるとなかなか手強い存在だった。

【画像全12枚】

アナライザーによる分析は、大きく2つのパートに分かれる。ひとつは運転脳年齢や認知機能を測定するパート。もうひとつは運転適性を測定するパートだ。

最初のパートは、音声と画面のルートガイドに従って街なかを走行する。信号や飛び出し、右折バイクなど「罠」がしかけてあるシナリオをこなしていく。事故を起こさず運転できるか、危険を認知して対処しているかなどがチェックされるが、コースの途中にランダムで「ピンクの豚」が現れる。走行終了後、どの場面に豚がいたのかを選ぶという問題が出され、広範な観察と注意力に記憶力も試される。

次のパートは、運転適性として、反射神経やとっさの認知・判断を測定する。車は30km/hで自動運転されているような状態で、画面に現れる標識によって、アクセルやブレーキを決められた操作をするというもの。ブルーの表示はアクセルオンを維持。黄色はアクセルを離してすぐに踏み込む。赤はアクセルを放してブレーキを踏む。というそれぞれの操作が決まっている。もちろん表示はいつでてくるかわからない。

文章にすると、それほど難しいものに思えないが、実際やってみるとこれがなかなか難しい。まず、モニター画面だと、FPS(Firts Person Shooting)ゲームなどに慣れていないと、全体を見渡すのを意識しなければならない。また、CGはよく出来ているとはいえ、彩度が高く全体が同じピントで見えるためか、構造物などの遠近感がつかみにくい。それに信号や道路標識の区別もつきにくい。横を見るボタン(パドルシフトを使う)はあるが、画像の視点はほぼ固定なので、横からの飛び出しなどは直前まで見落としがちだ。

そのうえ、途中どこかに現れるピンクの豚を認識して記憶しなければならない。運転に集中していると、対向車線側の歩道など見落としがちだ。また、豚がいたことは覚えていても、どの風景のところだったかまで思い出すのは簡単ではない。

運転適性の測定でも、表示が出たことを認識するのは簡単だが、その色(と形)によって、次の動作を的確に行う必要がある。なれないうちは考えながらとなるが、黄色のアクセルを離して、すぐに踏み込むという動作は通常の運転ではあまりないシチュエーションで、頭で考えていても、手足はすぐに動かない。頭で理解できたことと、実際の動作として手足を動かすことは別である。

もちろん、繰り返し練習すれば、難しい操作ではない。何度もやれば誰でも上達しそうな内容だが、基本的な反射神経や運動能力が問われるのは確かだ。ピンクの豚を見つけたからといって、そこに集中してしまうと、右折車両、交差点で停止しているトラック、右車線からの割り込みなどの落とし穴にはまる。舐めてかかると、事故は必至だ。

ちなみに、自分はバイクを跳ね飛ばしてしまった。若手の担当編集者は、運転はスムースで運転適性(反射神経など)は好成績だったものの、歩行者と車線変更してきた車にぶつかっている。信号、豚などに集中してしまうと「罠」にはまる。

損保ジャパンとセガは、このドライビングアナライザーを、どのような目的で開発したのだろうか。

もともと、損保ジャパン側が、交通事故、高齢者の暴走事故についての支援を考えていたとき、シミュレーターを使った認知機能の検査、運転技能の維持・改善ができないかと思ったことがきっかけだという。高齢者の運転となると、免許返納の話になりがちだが、自分の認知機能や運転技能についてチェックできれば、運転の現役期間を伸ばせるかもしれない。

開発にあたっては、ゲームやシミュレーターで実績のあるセガを協力相手として選んだ。

ドライビングアナライザーは、まだ開発中とのことだが、12月にはソフトウェアがほぼ完成するといい、現在、自動車ディーラー、教習所などを中心に営業を展開している。早いところは、年明けにも納入され始めるだろう。ただし、今回編集部で試したものは、出荷バージョンではない。説明画面、シナリオ、細かいルールや測定方法は、調整が加えられる予定だそうだ。

開発のきっかけは高齢者ドライバーの支援だが、アナライザーそのものはとくに対象年齢を決めているわけではない。若い人でも、自分の運転適性など振り返る、定期的に診断することで、安全運転につながるだろう。

現在のところ、測定データや分析データはアナライザーのPCに保存されるだけだ。しかし、分析結果だけでなく、測定中の操作データも収集し、詳しく分析すれば、事故と認知機能についての関係、特定の操作と運転パターンの関係、あおり運転をしやすい人、されやすい人といった新しい知見につながる可能性もある。これらのデータの検証が進み、医学的、統計学的エビデンスが得られれば、高齢者の免許更新や保険料の料率に反映できるかもしれない。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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