車載向けDクラスアンプの新境地を切り開く次世代パワー半導体GaNが登場。インフォニオンテクノロジーズジャパンがその優位性を試聴デモとともに披露した。
◆GaNパワー半導体がD級アンプにもたらす可能性
GaNで車載オーディオが変わる? 次世代D級アンプが示した高音質化の可能性
ドイツの半導体メーカーであるインフォニオンテクノロジーズは、シーメンスをルーツに持つ世界的な半導体メーカーだ。そんなインフォニオンテクノロジーズが生み出した新しいパワー半導体が、オーディオ向けD級アンプで優位性を示すことから、日本法人であるインフォニオンテクノロジーズジャパンによる記者発表会が開催され取材に訪れた。車載機器への半導体供給も盛んな同社は、カーオーディオで用いるD級アンプへの利用も視野に入れており、クルマファンにも見逃せない新技術として注目を集めそうだ。
キー技術となったのは、パワー半導体にGaN(窒化ガリウム)を採用した点だ。GaNはスマートフォン用の充電器などにも用いられ、小型で大電力をまかなえる半導体として近年利用が急速に広がっている。従来のパワー半導体にはシリコンが用いられてきたが、GaNを用いた場合はハイパワー化や省電力化、高音質化など数々のメリットがある。まさに次世代パワー半導体と呼ばれる所以だ。D級アンプの中でパワー半導体は増幅を担う根幹のパーツ。パワー半導体の性能次第でアンプのスペックが大きく左右されることから、GaNを使ったパワー半導体の開発が進んでいる。
発表会では、車載向けオーディオアンプにGaNパワー半導体を用いた場合のメリットとして、D級アンプの省電力性能アップ、ハイパワー化、デジタル信号処理(DSP)の効率化、アンプ筐体のコンパクト化、低発熱化などが紹介された。カーオーディオの世界を大きく進化させることが予想されるGaNパワー半導体。記者発表会の時点では、実際のカー用機器の製品化や自動車メーカーでの採用は公開されていなかったが、今後の製品開発に期待したいジャンルであるのは確かだ。
◆シリコン半導体に対するGaNの優位性
GaNで車載オーディオが変わる? 次世代D級アンプが示した高音質化の可能性ここまではGaNを用いたパワー半導体の概要について紹介したが、従来のシリコン半導体に対してどのような優位性を持っているのかをあらためて見ていこう。そもそも電界効果トランジスタ(FET)にはゲート、ドレイン、ソースの3つの電極がある。通常は導通していないドレインとソースが、ゲートに電圧をかけることで導通するのが、シリコンを用いたMOSFETの基本的な仕組みだ。対してGaNを用いた半導体は通常は導通しており、ゲートによって導通を止めることができる仕組みとなっている。
GaNによる半導体のメリットは、オンとオフを切り替えるスイッチングの高速化にある。さらにスイッチング時のオン/オフの立ち上がり/立ち下がりにロスが少なく、時間の遅れやノイズの発生も抑えられる。つまり、きれいなスイッチングが可能なのだ。また導通した際には抵抗(ON抵抗)が発生するが、シリコンを用いた半導体に比べてGaNはON抵抗が少なく、効率に優れているのも特徴となっている。
◆600W×2の試聴デモで感じたD級アンプの進化
GaNで車載オーディオが変わる? 次世代D級アンプが示した高音質化の可能性記者発表の会場では、従来のシリコンを用いたD級アンプと、GaNパワー半導体を用いたD級アンプの比較試聴を実施した。GaNを用いたD級アンプは小型の基板でありながら、600W×2というハイパワーを備える。しかも発熱が低いという特徴を持つため、パワー半導体にはありがちなヒートシンクがないのも大きなポイントだ。
実際にシリコンとGaNを用いたD級アンプを切り替えて比較試聴すると、音の違いも明確になる。シリコン半導体に比べて、GaN半導体を用いたD級アンプは音のメリハリやアタック感、力強さ、豊かな余韻を感じさせる。さらにS/Nの良さも感じられ、クリアさも際立つ。繊細なサウンドの表現力にも優れていることがわかった。
GaNで車載オーディオが変わる? 次世代D級アンプが示した高音質化の可能性試聴デモの後には、高音質化に影響を与えているGaNの特性があらためて紹介された。特に従来のD級アンプで弱点と言われていた歪み感は、シリコン半導体に起因する部分があったという。GaNパワー半導体に置き換えることで、歪みの少ないクリアなサウンドが可能になったようだ。
あらためてGaNによる次世代D級アンプのメリットを整理すると、高速スイッチングによるオーディオ性能の改善、クリーンなスイッチングによる低歪み化、ON抵抗の低さによるハイパワー化と低発熱化が挙げられる。その結果、ヒートシンクレスやアンプ筐体の小型化も実現できるのが大きな特徴だ。
◆カーオーディオの小型化と高音質化に期待
GaNで車載オーディオが変わる? 次世代D級アンプが示した高音質化の可能性記者発表会ではホームオーディオ環境での比較試聴となったが、これらのメリットはカーオーディオでも大きな魅力となる。GaNを用いた次世代D級アンプによって、カーオーディオの環境はさらに高音質化し、コンパクト化や省電力化も進むことが予想される。次世代オーディオシステムのキー技術となるGaNパワー半導体。小型、ハイパワー、高音質化が期待できるこの技術が、今後カーオーディオの分野で採用されることに期待したい。




