佐賀と長崎の鬩ぎ合いが続く九州新幹線西九州ルート…今度は並行在来線の負担割合で対立

九州新幹線西九州ルートの終点となる長崎駅。同駅は新幹線乗入れに備えて、2019年度末に高架化される予定となっている。新幹線開業後、並行在来線となる長崎本線のうち、長崎~諫早間は引続きJR九州が第一種鉄道事業者として運行する。
九州新幹線西九州ルートの終点となる長崎駅。同駅は新幹線乗入れに備えて、2019年度末に高架化される予定となっている。新幹線開業後、並行在来線となる長崎本線のうち、長崎~諫早間は引続きJR九州が第一種鉄道事業者として運行する。全 1 枚

長崎県の中村法道(なかむらほうどう)知事は11月22日に開かれた定例会見で、九州新幹線西九州ルートの開業に伴ない発生する並行在来線の地元負担について言及した。

九州新幹線西九州ルートは、2022年度の開業を目指して武雄温泉~長崎間でフル規格による整備が進められているが、開業の際は、並行在来線の長崎本線肥前山口~諫早間が佐賀県と長崎県が施設を保有する第三種鉄道事業者、JR九州が経営を維持する第二種鉄道事業者となることが2007年に取り決められている。

この上下分離に関連した地元負担は、2008年に長崎県と佐賀県の負担割合を基本的に2対1とすることで合意されているが、長崎県は先般、これを見直す要望を示しており、「1対1」にしたいとする内容が報道されている。

このことについて中村知事は「上下分離方式で、上をJRによって運行をしていただく。そうすると、下のほうもJRの基準によって維持管理をしなければいけない。即ち、維持管理のレベルが相当高くなってくる」と述べ、当初は想定していなかった、線路や信号機の24時間監視態勢を含む「設備指令業務」を行なうためのコストが見直しの要因であることを示した。

対して佐賀県側が与党整備新幹線プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会の山本幸三委員長と目される第三者を通した仲介を依頼するという報道が流れたが、中村知事はこれに「違和感を覚えている」と述べた。

その上で「この問題についてはJRを含めて増嵩経費の確認でありますとか、何とか低減できるような方策がないのかといった点を含めて、十分協議、検討を進めていく必要があるのではないかと、こう考えている」として、あくまでJR九州を含めた当事者間で協議を進めていくべきであるという考えを示した。

また、長崎県では、国の予算折衝へ向けて、九州新幹線西九州ルート新鳥栖~武雄温泉間フル規格整備へ向けた環境アセスメント調査費の計上を期待しているが、これについて中村知事は「(国土交通省が)ぎりぎりまで最大限の努力を重ねていただけるもの」という認識を示し、今後の推移を見極めていかなければならないとした。

しかし、フル規格での整備に同意していない佐賀県側は、山口祥義(やまぐちよしのり)知事が11月19日の会見で「おおよそ佐賀県内のアセスを佐賀県の合意もなく勝手にやるというのは信じられないことだと思っています」として、環境アセスメントの実施に同意する状況にないことを明言している。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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