廃止も選択肢に? 赤字にあえぐ滋賀県の近江鉄道…再生へ向けた法律に基づく協議会がスタート

明治時代中期に設立された近江鉄道には歴史を感じさせる駅も多い。写真は2017年8月に再生された大正建築の日野駅。
明治時代中期に設立された近江鉄道には歴史を感じさせる駅も多い。写真は2017年8月に再生された大正建築の日野駅。全 4 枚

滋賀県は12月4日、近江鉄道の今後のあり方を検討する法定協議会を11月5日に設置したことを明らかにした。

近江鉄道は、米原~貴生川間47.7kmの本線、八日市~近江八幡間9.3kmの八日市線、高宮~多賀大社前間2.5kmの多賀線からなる、計59.5kmの路線網を持つ地方私鉄。

明治時代の1896年に設立された歴史のある鉄道だが、近年は鉄道部門の業績不振に苦しんでおり、1994年度以降、赤字経営が続いた結果、営業損失は44億円を超えているという。

2018年度の年間輸送人員は、ピーク時の1967年度に比べて半分以下の483万人に留まっており、旧国鉄再建法で廃止対象としていた基準である、1日1kmあたりの平均輸送量を示す輸送密度が4000人未満を上回っている区間は、2017年度の実績値で八日市~近江八幡間の9.3kmに過ぎない。

収入減に輪をかけるように施設の維持更新費用も増加しており、1998年度からは国、滋賀県、沿線自治体などによる「近江鉄道の施設整備事業に係る支援」を開始。さらに2012年度からは「近江鉄道活性化協議会」による近江鉄道活性化計画がスタートし、2021年度まで支援が続くことになっている。

しかし、増え続ける赤字に危機感を感じている近江鉄道側は、西武鉄道の完全子会社となった後の2016年6月、滋賀県に対して「今後も利益を見込めない」「単独での維持が将来的に困難」などとした状況説明を行ない、これを受けた県や沿線自治体らは勉強会などを実施。2018年12月には「近江鉄道活性化再生協議会」が設立され、2019年7月にかけて現状分析や今後の見通しなどを協議してきた。今年8月には「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づいた法定協議会を設立することが合意され、支援が終了する2022年度以降の対応について協議されることになった。

「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」は、地方公共団体が事業者など関係者と連携し、地域交通をまちづくりと連携させて面的に再構築することを図る「地域公共交通網形成計画」を作成することを趣旨とした法律で、計画はこの法律に基づく協議会(法定協議会)で協議検討され自治体が作成。国土交通大臣に認定されると重点的な支援を受けることができるようになる。

その第1回目の会合が開かれた11月5日には、本線の一部が通る甲賀市の岩永裕貴市長から法定協議会の姿勢について疑問とする声が出され、「廃止の選択肢について可能性がゼロではない」点についての確認が求められた。

これに対して三日月大造滋賀県知事は「最初から存続ありきから議論をスタートすると利用者の皆様方や色んな御意見を十分汲み取ったといえないのではないかということから、先ほど甲賀市長がおっしゃったことについては含まれた内容であると考えています」と述べ、廃止を含めて議論する余地があることを示した。

鉄道部門の分社化も視野に入れている近江鉄道側は、上下分離方式への移行など、事業構造を転換する場合「現在約48億円の残存簿価を特別損失で計上し、新たな体制には引き継がない」としており、余力があるうちに転換したいという意向を示している。法定協議会では今後、沿線住民らに対するアンケート調査などを実施し、その結果を踏まえてさらに協議を進めていくとしている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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