冷蔵庫を開けると拍手…三菱 アウトランダーPHEV で電源支援 台風15号

災害対策本部に情報が集まるのには時間がかかる

有事に機能する協定の締結が急務

北海道胆振東部地震や熊本地震でも活用例

三菱アウトランダーPHEV給電デモ
三菱アウトランダーPHEV給電デモ全 14 枚

三菱自動車は12月10日、同社のプラグインハイブリッド車『アウトランダーPHEV』の給電機能を利用して車外へ電気を供給し、家電を動かすデモンストレーションを東京都内で行なった。また9月の台風15号の被災地で、三菱自動車社員がアウトランダーPHEVを使って支援した実績を紹介した。

災害対策本部に情報が集まるのには時間がかかる

アウトランダーPHEVには「1500W AC電源」と「V2H機器接続」の2種類の給電機能があり、災害時にインフラが停電した際には発電機・蓄電池として活用できる。1500W AC電源は家庭のコンセント/ソケットと同様に、電化製品に直接、給電する。緊急時に限らずアウドトアレジャーでも活用できる。V2H(車から家)機器接続は、V2H機器を介してクルマから家に給電を可能とする。

国内営業本部国内ネットワーク開発部金子律子さんは、台風15号被災地支援について、次のように語る。「東京都心では天気が回復した頃、千葉県の停電が伝わってきた。支援先について千葉県の災害対策本部に問い合わせたところ、県庁には情報が集まってくるまでに時間がかかる。そのため、支援が必要な自治体を探すのに、三菱自動車が手当たり次第に直接連絡した」。最初に要請があったのが、鋸南町の老人ホームだった。三菱自動車による支援は以下の通り。

12~15日:特別養護老人ホーム鋸南苑(きょなんえん、千葉県鋸南町)……鋸南町役場より要請、アウトランダーPHEV・2台、社員が1日2名交代で泊まり込み対応。<主な用途>冷蔵庫3台、洗濯機1台、電子レンジ、痰の吸引機、照明、携帯充電など。

最初に冷蔵庫の電源を確保したという。「冷蔵庫のとびらを開けて、中の照明が灯ると、人々が拍手をした」と金子さん。発電に使うガソリンの減り方が思っていたより少なかったので、徐々につなげる家電の数を増やしていった。三菱自動車はとりあえず支援に出発したものの、何ができるか、どれぐらいできるか、実際のところはわかっていなかった。

12~13日:君津市特別養護老人ホーム上総園(千葉県君津市)……千葉県災害対策本部経由、君津市役所より要請、12日にアウトランダーPHEV・4台、13日は2台で対応。<主な用途>洗濯機4台(車2台で洗濯機2台ずつ)、洗濯乾燥機2台(車2台で1台ずつ)で入居者200名分の洗濯を実施。

13日:君津市特別養護老人ホームあんしん君津(千葉県君津市)……君津市役所より要請がありアウトランダーPHEV・2台で対応。<主な用途>ベッドの昇降、ミキサーなどキッチン道具。

この頃になるとインフラ電力線が通電を始め、また自治体によって電源車も配備されるようになり、三菱自動車の支援スタッフは停電の続く南部へ移動して行った。

16~30日:南房総市……アウトランダーPHEV・6台を貸出し。<主な用途>停電している一軒家エリアを訪問。

17~19日:東京電力(館山市)……17~18日にアウトランダーPHEV・1台、19日に2台を提供。<主な用途>東京電力の依頼により、自衛隊が設営した風呂の前で携帯充電エリアを設置。

有事に機能する協定の締結が急務

今回の支援で明らかになった課題は、初動態勢だ。とくに行き先が決まらなかった。そこで三菱自動車では、自治体との間で災害時協力協定「DENDOコミュニティサポートプログラム」を展開中だ。災害時に、自治体からの協力要請に応じて、三菱自動車事業所・販売会社ネットワークから電動車などを貸し出す。2019年12月10日時点で、三菱自動車と災害時協力協定を締結している自治体は10か所、さらに約40自治体と締結に関して相談中だ。2022年までに全国の自治体との締結をめざす。

三菱自動車によるとアウトランダーPHEVの給電能力は、1500W AC電源だと、冷蔵庫:5~15台、電子レンジ:1台、洗濯機:3~7台、ドライヤー:1~2台、エアコン:1~2基、こたつ:2台、液晶テレビ:3~5台、携帯電話:50~150個にそれぞれ給電できる。なおすべての家電で動作が確認できているわけではないので、使用の際は家電の取り扱い説明書を事前に確認し、それに従うこと。V2H機器接続では、一般家庭での1日当たりの使用電力量を約10kWhとして、最大約10日分となる。

北海道胆振東部地震や熊本地震でも活用例

三菱自動車しらべで、2018年の北海道胆振東部地震時、個人宅で3日間の停電中にアウトランダーPHEVから給電(1500W AC電源)した実績がある。停電直後のバッテリーは80%、ガソリンは80%、後席のコンセントにコードをつなぎ、窓から屋内へ引き込んだ。使用した家電はトイレ(水洗)1300W、炊飯器1200W、洗濯機380W、IHヒーター1400Wなど。3日後にバッテリーは0%となったが、ガソリンは60%だった。

2016年の熊本地震では、個人所有のアウトランダーPHEVが災害対策本部の設営時、不調のガソリン発電機の代替として投光器を点灯させた。その後復興支援として三菱自動車から30台のアウトランダーPHEVを熊本県に貸与しした。

一般企業では、例えば鉄道会社のJR東海が、災害対策用車両としてアウトランダーPHEVを選定した。大規模災害時に、現地対策本部の照明、衛星携帯電話の電源として活用する。

《高木啓》

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