「誰もが羨望するクルマ」めざした『マツダ3』別府主査の逆境と挑戦…オートモーティブワールド2020

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マツダ3 主査 別府耕太氏
マツダ3 主査 別府耕太氏全 12 枚

自動車業界は大変革期にある。これはクルマの根底を揺るがす、アーキテクチャーやパワーソースが大きく切り替わる技術的な変革とともに、カーシェアリングなどクルマを保有する手段など、市場やお客様がクルマに対する期待値の変革も挙げられる。マツダのグローバルモデルである『マツダ3』は「かなり難しい環境の中での開発だった」と開発主査を務めた別府耕太氏は語る。

誰もが羨望するクルマを

マツダ3マツダ3
「マツダ3は自動運転でもフルEVのクルマでもなく、そういったトレンドにフォローなクルマではない。さらにお客様の所有からシェアへ移っていく中で、マツダが一番テーマにしている走る喜びや、クルマ自身を持つことへの喜びに今一度挑戦したいという強い思いのもと、クルマの性能や機能はもちろんのこと、出来るだけ持つ人の心や欲望をくすぐれるようなクルマにしたかった。そこであえて大きな目標として、『誰もが羨望すること』をテーマに開発を進めた」(別府氏)

このクルマの歴史は『ファミリア』から始まり、『アクセラ』、そしてマツダ3へとつながっている。そこに共通して流れるものはエモーショナルだと別府氏は語る。「クルマに対して道具以上の気持ちを抱いてくれる方に、ずっと支えてきてもらったクルマ。例えば5代目の通称“赤いファミリア”は、ライフスタイルや青春時代をいかにこのクルマで彩っていくか。そういう大きなムーブメントを作ったクルマだった」。

また初代アクセラはCカテゴリーでありながら2.3リットルの大きなエンジンを搭載することで走ることを際立たせ、「単なるCカーの枠を超えてお客様を魅了した」。そしてマツダ3では「エモーショナルな部分や、自分が感情移入出来るような要素を作ることが変えなかった、変えてはいけない部分だった」と述べる。

4人乗りのロードスター

マツダ3 主査 別府耕太氏マツダ3 主査 別府耕太氏
この方向性を取ることが出来たのには『CX-30』の存在もあった。初代アクセラ以降、マツダの中でもラインナップが変わりクロスオーバーSUV系の車種が充実してきた。マツダ3とCX-30はほぼ同時並行で企画開発が進められたことから、「マツダ3はよりエモーショナルな部分、ハンドルを握るという部分に特化出来る環境にあった」。

「もともとアクセラが担っていたファミリーの方に乗ってもらう部分はCX-30に“少し”譲り、マツダ3はエモーショナルな部分に特化させ、デザイン的にもよりエモーショナルなものとした。万人受けよりは、ある特定の方に刺さるような尖り方をしている。4人乗りのロードスターを作る、という位の気持ちで、今回は振り切って開発した」と思いを明かす。

またその根底には「大きな2つの価値観」があると話す別府氏。腕時計の世界を例に、「過去を振り返ると(今の自動車業界と)同じようなショックが起こっていた。クォーツが出た瞬間に市場は一気に流れ、スイスの機械式時計みたいなところは大きく衰退した時期があった。しかし、時を経ると逆に時を刻むという機能もさることながら、男の腕を飾るという新しい価値が生まれ、マーケットが伸びている。多分クルマは今その転換期にあると思う。上手くお客様の期待に応えられないかと考えている」とした。

新たなヒエラルキーを作り出すエンジン

SKYACTIV-XSKYACTIV-X
マツダ3の目玉でもある新開発エンジン「SKYACTIV-X」について別府さんは、「当初から搭載を計画しており、世界各国で厳しさを増している環境対応を考えると、近い将来このエンジンが主力になっていくという想定で開発した。技術的な難しさはさることながら、これまでのエンジンやパワーソースの常識を変えたい」と語る。

いわゆる上級エンジンと呼ばれるものは、基本的にヒエラルキーが上になるにつれパワーとトルクが増していく。「これはメーカーにとってもお客様にとってもある種の常識だった。しかしSKYACTIV-Xはコントロール性、どう扱えるのかを重視した。絶対的なパワーやトルクではなく、乗った時のコントロール性が従来のSKYACTIV-GやSKYACTIV-Dよりも上質になっているので、トップエンドとして設定した」。

別府氏は、「量よりも質の面でヒエラルキーとして、お客様に選んでもらえる軸を作りたい」と想いを語る。

ロードスターに憧れ入社して20年、あえて「夢を語る」

新卒で1998年にマツダに入社し、国内販売本部で販売会社の採算や計画を管理する部署や、国内全体のラインナップやモデルの投入タイミングを検討する部署、そしてグローバル全体でも同様な仕事に携わってきたという別府氏は、自らを「マツダの中でも変わり種の主査だ」と話す。いわゆる技術畑ではなく、販売・企画サイドからの大抜擢だった。

「自動車業界が100年に一度といわれるくらいの大変革期を迎えており、エンジニアリングよりはお客様サイドから(の視点で)新しい挑戦をして、将来を描けるクルマ作りの方向性を示すことが使命だと理解している。そこで今回の人選に繋がったのだろう」と語る。

マツダ3 主査 別府耕太氏マツダ3 主査 別府耕太氏
当然というべきか、大きな苦労もあったようだ。開発現場を経験したことがなかったので、実験や設計のエンジニア達となかなか話が噛み合わなかった。これまでの経験を活かすのも難しい。だがそれを逆手にとって、従来のようなトップダウン的な開発体制から考えを切り替え、「各領域にはプロフェッショナルがいるので、開発の目標だけ僕の方から伝えて、あとは思い切り任せてプロとしての仕事をお願いすることにした」。

ロードスターに憧れ入社して20年、「主査は憧れだった」と話す別府氏。だからこそ、あえて「夢を語ろう」と決めた。「逆に僕がエンジニアやデザイナーに口を出しても良いことがあるはずはない。だから僕は夢を語って、僕の夢を会社のリソースを使って実現してやれというある種の開き直りだった」。

枯れた技術で「新たな価値」を作る

別府耕太氏とマツダ3別府耕太氏とマツダ3
別府氏はこれからのクルマづくりについてこう語る。

「技術には大きく2つあり、ひとつは先進技術。これまでなかった技術で大きく機能・性能を向上させていくという方向で、今後も歩みを止めてはいけない。もうひとつは、用途開発。今ある技術=枯れた技術で、知恵と工夫によって様々なお客様の価値を生み出すことが出来る」

「大きなパラダイムシフトが起こった時に、高級腕時計のように違う価値、違うマーケットとして膨らむことが出来るひとつの要素になり得る。技術だけではなくお客様がどう使うか、どう楽しむかという開発にこれからもっと目を向けなければいけない。この両輪をしっかり回せるようにしていきたいし、マツダとしてもこれから頑張っていきたい」(別府氏)

別府氏は、2020年1月15日に開幕する自動車技術展「第12回 オートモーティブワールド」の基調講演に登壇、「技術者応援企画『MAZDA3』の開発秘話 誰もが羨望するクルマになることを愚直に取り組んだMAZDA3」をテーマに講演する。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Conference/202001/tokyo/top/?id=AUTO&lang=jp

■第12回 オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展。今年は新たに「MaaSフォーラム」を開催し、MaaS実用化に向けた注目テーマでの講演もおこなわれる。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://regist.reedexpo.co.jp/expo/NWJ/?lg=jp&tp=inv&ec=AUTO

会期:2020年1月15日(水)~17日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第12回 オートモーティブワールド 詳細はコチラ!

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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