マツダ、強力なアイデンティティの商品群で新世紀へ…1月30日に創立100周年

マツダ最初の乗用車『R360クーペ』(1960年)
マツダ最初の乗用車『R360クーペ』(1960年)全 4 枚

マツダは1月30日に、1920年(大正9年)の創立から100周年を迎える。ロータリーエンジンや近年の「SKYACTIV」エンジンの開発で象徴されるよう、技術力を誇る自動車メーカーだが、刻まれた1世紀は苦闘の歴史でもある。

マツダは30日に本社で記念式典を開き、丸本明社長が社員にメッセージを発して新たな世紀に歩を進める。日本の自動車メーカーで100周年を迎えるのはダイハツ工業(2007年)、SUBARU(スバル、2017年)に次いで3社目となる。

ダイハツは内燃機関、スバルは飛行機の会社として創業し、やがて自動車産業で成長した。東洋コルク工業として出発したマツダも、建築用などのコルク製造から始まり、工作機械や三輪トラックを経て自動車へと事業を拡大していった。

1967年には、既存のレシプロエンジンと機構が全く異なるロータリ―エンジンの実用化に世界の自動車メーカーで唯一成功し、『コスモスポーツ』を発売した。しかし、環境性能にも優れたこの高出力エンジンは燃料消費も多く、1973年の第1次石油ショックを契機に、逆風にさらされることとなった。

■マツダのミニ100年史■

・1920年1月東洋コルク工業として広島市で創立
・1927年9月東洋工業に社名変更
・1931年10月3輪トラックを生産開始
・1960年5月軽乗用車「R360クーペ」発売
・1967年5月ロータリーエンジンを開発し「コスモスポーツ」発売
・1979年11月米フォードモーターと資本提携
・1982年9月山口県の防府工場が本格操業
・1984年10月マツダに社名変更
・1989年4月国内販売網を5チャンネル化
・1987年9月米国工場(MMUC)が生産開始
・1989年9月「ユーノスロードスター」発売
・1996年5月フォードの出資比率が33.4%となり、社長も受け入れ
・2001年3月早期退職制度を実施
・2002年4月新ブランドメッセージ「Zoom-Zoom」展開開始
・2008年11月フォードと出資比率下げで合意(15年に資本提携解消)
・2011年6月「SKYACTIV」エンジンの市販開始
・2013年11月「魂動デザイン」の展開開始
・2014年1月メキシコ工場が本格操業
・2017年8月トヨタ自動車と業務資本提携で合意
・2018年3月トヨタと米国生産会社を設立
・2019年5月新世代商品第1弾の「マツダ3」を国内発売
・2019年12月新エンジン「SKYACTIV-X」を国内投入

1970年代後半の経営悪化を機に1979年には米国フォードモーターと資本提携し、同社との関係は2015年まで続くことになる。1980年には「赤いファミリア」と呼ばれた5代目『ファミリア』が大ヒットし、息を吹き返した。だが、1980年代終わりにはメーンバンクだった住友銀行(現三井住友フィナンシャルグループ)が経営への参画を強めたこともあって、国内販売網の5チャンネル化といった拡大路線に走ってしまう。

1990年代初頭のバブル経済崩壊によって業績は下降をたどり、1996年にはフォードが33.4%まで出資を拡大して、同社からの社長派遣も始まった。フォードによる経営支配はプラスの面も少なくなかったものの、2008年のリーマンショック直後まで続いた。

数年前、マツダのある幹部から同社の歴史は「小さな成功と大きな失敗の繰り返しであり、それを肝に銘じている」と聞き、「言い得て妙」だと思ったことがある。例えば、ロータリーエンジンの開発は決して小さくなく、「大きな成功」と思うが、その後に同エンジンへの期待による投資拡大といった舵取りの誤りがあったのは否めない。

現下のマツダは、「ブランド価値」を高めるという忍耐を伴う戦いに挑んでおり、国内外での販売は苦戦し、収益力も振るわない。しかし、2011年から始まった「SKYACTIV」技術やその後の「魂動デザイン」の展開によって、強力なアイデンティティと競争力をもった商品群が揃いつつある。それらの製品群とともに、マツダで働く人々から伝わって来るちょっとした誇りのような雰囲気は、過去1世紀でもっとも充実しているのではないか。

《池原照雄》

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