「未来は電気にある」メルセデスベンツがめざす電池の完成形とは…第11回[国際]二次電池展 2月26日開幕

ダイムラーAG Andreas Hintennach氏
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2020年2月26日(水)から3日間にわたり、東京ビッグサイトで第11回[国際]二次電池展が開催される。電動化社会の実現に向けたキーテクノロジーである二次電池の部材から、製造・検査装置や完成品まで、まさに次世代電池の開発に向けた技術商談展だ。初出展110社を含む340社が出展、電池技術の最先端を垣間見ることができる。

展示と並んで注目されているのが豊富なセミナーだ。全200本ものセッションが開催され、メーカーや業界のキーマンたちがEVや次世代電池、海外市場動向などについて語る。今回、基調講演に登壇するのはダイムラーAGのAndreas Hintennach氏だ。

スイス人の化学者兼医師であるHintennach氏は、電気化学の博士号、医学博士号、そして経済学および経営学博士号を取得したのちに博士研究者としてリチウム空気および触媒分野でMITに在籍、現在はダイムラーAGにてシニアマネージャーとして電池研究および技術分野の責任者を務めている。モビリティの電動化の最先端を走るダイムラー、つまりメルセデスベンツのEモビリティ戦略における最重要人物のひとりと言って良いだろう。

そのHintennach氏が「未来は電気にある」と題してダイムラーが描く「電気自動車が創り出す未来社会」について語る。本稿では、講演に先駆けおこなったHintennach氏の独占先行インタビューを紹介。今、電池に求められているものとは。

2039年までにCO2ニュートラルな新車ラインアップを

メルセデスベンツのEQパワートレイン搭載車メルセデスベンツのEQパワートレイン搭載車
「電動化は、自動車産業が130年の歴史の中で経験してきた最大の変革。全く新しい市場が生まれつつある。サステナビリティは現代社会の中核テーマの一つであり、メルセデスベンツの発展に向けた包括的な原則となっている。今後数年間で、スマートからSUV、高級セダンまで、10モデル以上の純粋な電気モデルを持つことになる。当社の一貫したロールアウトにより、より多くのお客様が電動メルセデスベンツを選ぶと仮定している」(Hintennach氏)

ダイムラーは2019年5月、メルセデスベンツを含めたグループ全体の中期経営計画「アンビション2039」の中で、2030年までに新車販売の50%以上を、プラグインハイブリッド車(PHEV)やEVにすることを目指すと発表した。メルセデスベンツのEVブランド「EQ」シリーズを皮切りに、商用車、トラック、バスの電動化、さらに燃料電池車など全方位で電動化を進めていくとしている。そして「私たちの野望は、2039年までに完全にC02ニュートラルな新車ラインアップを構築すること」とHintennach氏は語る。

電動化車両の拡大において、課題となるのは電池の生産、そして高効率化だ。「自動車の製造には当然大量の材料が必要。天然資源の必要性を最小限に抑えることに開発の重点のひとつを置いている。あらゆる機会を利用して、迅速かつ持続可能な排出量を削減する」としながら、「(電動SUVの)『EQC』はすでに市場に参入しているが、次世代の強力なバッテリー電気自動車への道を準備している」と話す。

現在の車載用電池の主流はリチウムイオン電池だが、この効率化はさらに進むのか、あるいはこれに替わるソリューションを用意しているのか。これに対しHintennach氏は、今後数年間はリチウムイオン電池が主流であるとしながらも、「エネルギー密度や充電時間だけでなく、持続可能性についても、リチウムオン電池を超えたイノベーションと代替案に一貫して取り組んでいる」とした。

ポスト・リチウムイオン電池の可能性と研究の進化

ダイムラーAG Andreas Hintennach氏ダイムラーAG Andreas Hintennach氏
“ポスト・リチウムイオン電池”と呼ぶべきものは実現するのか。Hintennach氏は、時期を明確にはしなかったものの、

「ポストリチウムイオン技術は1つではない。固体電解質、リチウム金属アノード、リチウム硫黄システムを有する細胞であろうと、すべての技術は、その特定の材料要件、その用途や成熟度のレベルが異なっていて、各技術には、特定の長所と短所がある。ただ、良いニュースは、開発の“行き止まり”のリスクを下げるいくつかのパス(脇道)があることがわかっている。まだその角を曲がっていないが、それはアノードの黒鉛コーティングを、リチウム金属箔やシリコンパウダーなどの新規材料に置き換えることができる電池となる。どちらもエネルギー密度を大幅に増加させることができる」

とその可能性を語る。さらに同氏は研究開発の方法についても変化が求められていると話す。特に注力しているのが「コンピュテーション研究」つまり量子コンピュータによる効率化・高速化だという。

「将来のモビリティを形成するには、現在の世代のコンピュータやサーバー、システムを機能の限界まで拡大する複雑な問題に対処する必要がある。量子コンピュータは、このような課題を解決し、この分野での作業スピードアップを可能にすることが期待されている。今後、持続可能で効率的なモビリティソリューションの開発や、社内の多様なアプリケーションにおいて重要な役割を果たす可能性がある」

「量子コンピューティングは、ITセクター全体に革命をもたらす可能性を秘めており、その結果、産業の他のすべての分野に革命をもたらす可能性がある。量子コンピュータの多くの潜在的なアプリケーションには、量子化学に基づく新しい材料の選択、例えば、電池セルの開発や個人のモビリティの効率的で便利な提供などが含まれる。都市環境や巨大都市やディープラーニングの自律走行車は、人工知能の開発を進めている。この技術はまだ研究開発の初期段階だが、私たちの目標は、この新しい技術の経験を早い段階で身に付けることだ。そのために、自動車・モビリティ分野の具体的なユースケースを研究パートナーシップに貢献している」

『VISION AVTR』で見せた電動化のビジョン

ダイムラーの燃料電池車ダイムラーの燃料電池車
急速な電動化が進む一方で、電力供給・発電手段の課題が顕在化している。電池側でこれをクリアするものは生まれ得るのか。

「電力要件の増大は、環境基準を満たし、それを超える持続可能なエネルギー供給の提供とバランスを取る必要がありる。再生可能エネルギーの拡大に伴い、エネルギー貯蔵の問題に焦点が当たっている。蓄電池システムに加えて、燃料電池はこの分野で非常に有望な技術だ。この技術は電池のような電気化学反応に依存しているが、電池とは異なり、燃料電池は無限の能力を持っている。業界パートナーと協力して、現在、自動車用水素燃料電池システムを用いたデータセンターやその他の定常アプリケーション向けのバックアップおよび連続電力ソリューションのシステムを評価している。これは、電池と燃料電池技術の共生の代表的な例であり、CO2ニュートラルへの道のりの重要なステップだ」

水素による発電をおこなう燃料電池と、高効率化された電池を組み合わせる=共生させることで、再生可能エネルギーの拡大で生まれた電力の貯蔵を可能にするという。

メルセデスベンツ VISION AVTRメルセデスベンツ VISION AVTR
メルセデスベンツはこの1月、映画『アバター』とのコラボレーションによって生まれた自動運転EVコンセプトカー『VISION AVTR』を公開した。大型でラグジュアリーな自動車に有機電池技術を採用した大容量、コンパクトな電池を搭載し航続700kmを実現するというものだ。持続可能なエミッションフリーに向けたメルセデスベンツの、最新のメッセージがこのコンセプトカーに詰め込まれている。そこには、Hintennach氏がめざす「電池の完成形」が見え隠れする。

「その革新的な電池技術の概念は、グラフェン(炭素原子が六角形の格子状に結びついているシート状の物質)をベースとした有機細胞化学に基づくもので、金属や土壌を必要としない。つまり、これにより、Eモビリティは化石資源から解放される。絶対的な革命は、100%のリサイクル性であり、原材料セクターにおける将来の循環経済の主要な例である。有機電池は現在、当社の基礎研究の一環。メルセデスベンツ車に設置されるまではまだ数年かかるだろうが、可能性はそこにある」

求められる“聖杯”探索のパートナー

Hintennach氏にとって「発明」そして「研究」とは。そう問うと「技術の限界を押し広げるということ。これは非常にエキサイティングだ。私たちは毎日何か新しいことを学ぶ。イノベーションは、当社の持続可能な成功の主な原動力の一つであり続けている」と語った。

「勇気を出して箱の外を見てください。“聖杯”の探索は、世界的かつ業界横断的なチームワークを必要としています。私たちは常に世界中の強力な業界パートナーや科学的なインスティテュートとの協力やパートナーシップを探しています」

二次電池展の基調講演「電気自動車が創り出す未来社会」の「未来は電気にある」セッションでは、電動化社会の実現に向けた電池の課題、その解決への道筋が語られる。

>>>ダイムラーAG Andreas Hintennach氏が登壇する基調講演の詳細はこちら!(無料)

■第11回[国際]二次電池展
会期:2020年2月26日(水)~2月28日(金)10:00~17:00
会場:東京ビッグサイト 青海展示棟
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
公式サイト:https://www.batteryjapan.jp/

《宮崎壮人》

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