【アストンマーティン DBX 新型試乗】初のSUVは、カイエンとウルスの“イイとこ取り”だった…大谷達也

DBX専用プラットフォームの恩恵

ステアリングの「正確さ」と「快適性」を両立させた

快適性でカイエンターボ、ハンドリングでウルスをベンチマークに

アストンマーティン DBX
アストンマーティン DBX全 33 枚

アストンマーティン初のSUV『DBX』の姿をご覧になったことがあるだろうか?

【画像全33枚】

私は正式発表前に特別な顧客を対象に実施されたスネーク・プレビューに潜入し、DBXのスタイリングを目の当たりにしていたが、その美しさには息を飲む思いがした。アストンマーティンだから全身に優雅な曲線をまとっているのは当然のこと。まずはそのエレガントな佇まいに圧倒されたのだが、これまでは低くうずくまったかのような全高でなければ実現できないと思っていたそのデザインが、典型的なSUVのプロポーションでも完全に再現されていることに度肝を抜かれた。

「この美しいスタイリングとアストンマーティンのブランド力があればDBXの成功は間違いない」

DBXと対面した時点で、私は早くもそう確信していた。

ところがDBXの真髄はそのスタイリングではなく、走りの実力とSUVとしての実用性の高さにこそある。私はこの事実を、中東オマーンで行なわれたDBXプロトタイプ試乗会で確認してきたので、ここで紹介しよう。

DBX専用プラットフォームの恩恵

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アストンマーティンはまず、DBXのために専用プラットフォームを新開発した。これまでトランスアクスル方式のグランドツアラーもしくはスポーツカーを作ってきたアストンマーティンだから新開発は当然というか避けられない事態だったともいえるが、これが意味するところは小さくない。

チーフエンジニアのマット・ベッカーによれば、SUVに求められる性能はこれまで彼らが手がけてきたグランドツアラーやスポーツカーとは比べものにならないくらい幅広く、オンロードやオフロードでの走行性能はもちろんのこと、快適性、静粛性、居住性、さらには荷室スペースにも留意しなければいけなかったという。

そこで様々なライバル車を評価・分析した開発チームは、メルセデスAMG製V8 4.0リッター・ツインターボ・エンジンを通常のSUVに比べてより低く、そしてよりキャビン寄りの位置に搭載。こうすることで基本的な走行性能を確保するいっぽうで、低いエンジン・ポジションの恩恵によりドライブ・トレインのキャビンへの侵食を最小限に留め、広々とした室内空間の確保に努めたという。いずれもSUV専用プラットフォームの採用抜きでは実現できなかったことである。

さらにベッカーらは電子可変制御デバイスを積極的に採り入れた。電子制御式4WD、3チャンバー式エアサスペンション、アクティブ・アンチロールバーなどがその代表で、これらを装備することで幅広い領域で優れた性能を実現させようとしたのだ。

ステアリングの「正確さ」と「快適性」を両立させた

大谷達也氏大谷達也氏
では、実際にDBXプロトタイプのステアリングを握ってみると、どうだったのか?

まず驚かされたのはボディ剛性の高さであり、クルマとの強い一体感だった。ボディ全体が強固で揺るぎなく、これがドライバーに強い自信を与えてくれる。ステアリング系は取り付け部を含めて剛性感が高く、途中にゴムのような弾性材が一切含まれていないような感触を伝える。

このためハンドリングは正確そのもの。ドライバーのわずかな操作も見逃さすことなく、それらはクルマの挙動へと確実に変換されていく。そしてフロントタイヤが路面をしっかりと捉えている様子もはっきりと伝わってくる。

アストンマーティン DBXアストンマーティン DBX
こう聞くとボディや足回りがすべてガチガチで一切の遊びが存在しないクルマと想像されるだろう。そうした見方はある意味で間違っていないのだが、DBXで真に驚くべきは、そうした「高剛性」かつ「遊びのない」場合にドライバーを悩ませる振動や騒音が見事にシャットアウトされている点にある。

通常、こうした振動や騒音を遮断するために使われる素材はゴムなどの弾性体だ。しかし、弾性体を使えば荷重がかかったときに変形し、ステアリングや足回りの位置決めが不正確になる恐れがある。つまり、「正確さ」と「快適性」は相反する関係にあるのだが、アストンマーティンはどうやってこの難題を克服したのだろうか?

快適性でカイエンターボ、ハンドリングでウルスをベンチマークに

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アストンマーティンの技術陣はライバル車を解析する過程で、サスペンション取り付け部の局部剛性とブッシュの硬度をある一定の関係に設定すると前述した「正確さ」と「快適性」を高い次元で両立できることを突き止める。そしてこの理論をDBXにも応用した結果、優れたハンドリングと快適な乗り心地や静粛性を実現できたとベッカーは教えてくれた。

「快適性ではポルシェ・カイエンターボを、ハンドリングではランボルギーニ・ウルスをベンチマークにした」と彼は語っていたが、まさに2台の「イイとこ取り」をしたようなシャシー性能と評価できる。

アストンマーティン DBXアストンマーティン DBX
オマーンではオンロードのほか固く引き締まったジャリ道でも試乗できたが、そこでも十分なトラクションを発揮しつつ、安定感の高い走りを披露してくれた。ジャリがゴロゴロと転がった路面でもロードノイズが思いのほか小さかったことも特筆すべきだろう。

居住性の高さもベッカーたちが自慢したとおりだった。身長172cmの私がドライビングポジションをとったその後ろで、ひざ周りに25cmほどの空間が残されていたのだから、SUVの後席ニールームとしてはかなり優秀。同じく後席のヘッドルームも10cmほどと広かった。ラゲッジルームの容量も632リットルと十分だ。

ベッカーらは今春までテスト走行などの開発を続け、DBXの最終スペックを確定させる計画だという。

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大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

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