ロードスター 初代を限りなく「新車」に近づける…“人馬一体”を取り戻すマツダのレストア

世界中で愛され続ける魅力多き、マツダ「初代ロードスター」。しかし車両の経年劣化は止まらず、状態が良い車両は海外へ流れ続けている…。

編集部が同社広島本社に訪れて知り得た「初代ロードスター」に関する、事実をお伝えしたい。

マツダ 初代ロードスター 限りなく「新車」に近づけるレストア術で “人馬一体” の走りを取り戻す…CLASSIC MAZDA
マツダ 初代ロードスター 限りなく「新車」に近づけるレストア術で “人馬一体” の走りを取り戻す…CLASSIC MAZDA全 43 枚
マツダの創立100周年記念日(2020年1月30日)の翌日。同社広島本社に訪れ、『CLASSIC MAZDA』プロジェクトを支える「NAロードスターレストアサービス」の全貌を知る機会を得て、衝撃を受けた。

老舗のプロショップや専門店が行うレストアとはまったく次元が違う、初代ロードスターを作り出したマツダ自らが行うレストアの「オリジナル感」はただものではなかった。

本記事では、マツダの初代ロードスターとNAロードスターレストアサービスについて、知り得た事実をお伝えする。


▼2020年1月31日に訪問した、マツダ広島本社


▼マツダ広島本社工場内「マツダE&T」でレストア中の車両



◆止まらない「経年劣化」


初代ロードスターは、日本がバブル景気で絶頂だった1989年9月1日に発売され、その年の国内販売数は9307台。翌1990年には、世界で9万2626台という驚異的な販売記録を打ち立て大ヒットに。登場から約9年間(1989年~1997年)に渡って生産されたその数は43万1544台にのぼる。


令和2年の今日においても、初代ロードスターは世界中で愛され続ける魅力多きクルマだが、無視できない大きな問題を抱えている。それは車両の経年劣化だ。


1997年の生産終了時に作られた車両でさえ、2020年2月現在で、約23年前のクルマとなる。特に、エンジンや足回りの劣化は大問題で、走行に悪影響を与える。ボディ塗装の剥がれや色あせ、数多くのキズ・ヘコミとサビ、日に焼けて白くボロボロになった幌(オープントップ)のほか、シートやエクステリアのくたびれ感も、見るに堪えない状態になっているケースがほとんどだろう。


初代ロードスターを大切に乗り続けているオーナーは、DIYでメンテナンスをしたり、専門店に預けて快適な状態を維持しているケースももちろんあると思う。しかしそれは、あくまでごく一部で、新車で購入して3回目の車検を迎える7年目や、もしくは10年目などのタイミングで手放すか、廃車となるケースが一般的なのではないだろうか。

ファンが多い初代ロードスターであっても、国内に残っている台数はさほど多くないのかもしれない…。


そう思いきや、マツダが2017年に調査した結果によれば、2万2770台が登録車両として国内に存在していると、今回の取材で知り、驚いた。至るところがくたびれても、廃車にせず、定期的に整備しながら長く維持しているオーナーや、ガレージで大切に保管されている車両が多くある、ということだろう。初代ロードスターを愛するオーナーたちが「車両を守り続けている」といえるかもしれない。


ちなみに、11万台もの初代ロードスターがアメリカに渡っているという。クルマ好きであれば、アメリカの「25年ルール」をご存知だと思うが、改めて説明しておこう。

アメリカ国内で販売されていない車両は、同国の安全基準や排ガス試験をクリアしていないため、たとえ個人で輸入しても一般道で走行できないのだ。ところが、製造から25年が経過した車両は “ クラシックカー ” とみなされ、アメリカの輸入規定をクリアする必要がなく、自由に輸入できるようになる。これが「25年ルール」だ。

初代ロードスターは1989年に製造された車種のため、2015年からアメリカへの輸入が解禁となって以降、良い状態の車両がアメリカへ渡ったことで、2017年時点で11万もの車両があるということなのかもしれない。そうなると、国内に残っている良い状態の初代ロードスターは、今後ますます減り続ける可能性が濃厚だ…。


▼初代ロードスター(ユーノスロードスター)











▼初代ロードスター「Vスペシャル」









◆マツダによる「NAロードスターレストアサービス」


そういった背景の中で、2017年12月13日からマツダが開始した「NAロードスターレストアサービス」のWEB受付開始のニュースは、初代ロードスターに乗り続けたいオーナーにとって、一筋の光となった。

「NAロードスターレストアサービス」への期待はとても大きい。しかしながら、対象車がNA6CEのみで、NA8CやM2などの限定車やフレームの修理が必要な故障車、カスタマイズ車はNG。書類審査や車両確認を経て、ようやく本受付となり、レストア作業など約3か月の期間を経て納車となる。

このほか、ドイツで145年の歴史を持つ世界的な第三者検査機関テュフ・ラインランド(TUV)の日本法人テュフ・ラインランド・ジャパンが発行する「クラシックカーガレージ認証書」および「適合証明書」を発行してもらえる。納車時には、レストアの記録をまとめた貴重なスペシャル・フォトブックがもらえたり、もちろん保証(レストア施工内容および交換部品に対し1年1万km)もあるという。


▼「NAロードスターサービス」と「CLASSIC MAZDA」プロジェクトのサイト


▼WEB申込から納車までのステップ


▼レストア作業の流れ


▼TUV「クラシックカーガレージ認証書」と「適合証明書」


▼納車後にもらえる「スペシャル・フォトブック」にはレストア証明査証を添付


▼レストア1号車、2号車、3号車のスペシャル・フォトブック


なお、2018年5月から、レストア1号車の受付が開始され、同年8月に納車。2020年2月現在で計5台が納車されている。現在6号車がレストア中で、本年3月に納車予定となっている。


◆気になる「レストア作業」の現場に潜入


レストア作業についてだが、基本的にマツダ広島本社工場内の「マツダE&T」で実施。マツダE&Tは、量産車の企画・設計・解析から少量生産車の製造まで行っており、モータースポーツや実験/研究、ショーカーなど、マツダブランドを支える高い技術を有する。

今回の取材では、なんと、現在マツダE&Tでレストア中の6号車の様子を見せて頂けた。貴重な現場写真をぜひご覧頂きたい。

▼マツダ広島本社工場内「マツダE&T」には、TUV認証書があった


▼一次塗装を終え、シルバー塗装のあと細部に「クリア塗装」が行われていた















▼エンジン部分。旧い部品が取り外され、純正の新品部品に取り替えられていた





▼ロアアームの各所も新品部品に交換





▼元々車両に取り付けられていたバンパーなど、各部位を見ることもできた







この現場写真を見て、気づいた読者は多いだろう。初代ロードスターを生み出したマツダが行うレストアサービスの強みは、マツダデザイン本部の承認を得た色での塗装だったり、通常は行われることがない部分への「クリア塗装」には驚かされる。他では入手困難な純正部品や復刻パーツに交換することで、限りなく「新車」に近い状態に仕上げられている。


マツダが提供するレストア可能な条件やサービス価格の設定に、正直、戸惑いがあったが、今回の取材で深く納得できた。基本メニューが254.7万円(税込)からで、フルレストアだと494.2万円(税込)というサービス価格は、初代ロードスターの新車販売価格(170万円ほど)よりも確かに高額だが、2020年のいま、マツダのプロフェッショナルチームが本気で仕上げる、新車に近い初代ロードスターに乗れるのは、奇跡といえるのではないだろうか。


▼マツダのプロフェッショナルチームが仕上げる、レストアメニューと価格



このほか、『CLASSIC MAZDA』サイト内には「NAロードスターパーツ情報サービス」が開始されている。NAロードスターレストアサービスで交換している純正部品を基に、各部位における推奨交換部品の部品番号や価格などのパーツ情報を知ることができるのだ。このサービスを利用すれば、気になっている部分だけを手軽にリフレッシュできる。申込みから部品の受け取りまで、3ステップの流れがあるので、詳しくはサイトをチェックしてほしい。

▼「NAロードスターパーツ情報サービス」





◆「アニバーサリー」で盛り上がる愛好家たち


昨年(2019年)は、初代ロードスター発売から30年の節目となる記念年だった。ファンミーティングが全国各地で開催され、2000台以上のマツダ・ロードスターが連なって走るパレードランが実現。また同年11月には、初代ロードスターが、日本を代表する「歴史遺産車」の1台に選ばれたことも、大きなトピックといえる。そして本年2020年1月30日に、マツダが「創業100周年」記念日を迎えたことで、マツダ車を愛する人びとの熱量は高まるいっぽうだ。


▼2019年11月、初代ロードスターが「歴史遺産車」に選ばれた


▼マツダ創業100周年記念特設サイト



◆「ヤングタイマー」なクルマを所有する選択肢


クラシックカーやヴィンテージカーというほど旧くない、1980年~1990年代に登場したクルマを「ヤングタイマー」と呼び、初代ロードスターはまさにそのカテゴリに分類される。


近年、各地で昭和・平成時代に登場したクルマたちを展示したり、ヴィンテージカーでのラリーイベントなどが増え、確かな盛り上がりをみせている。マツダの初代ロードスターに限らず、1989年5月に発売された日産スカイラインGT-R(BNR32)や、1991年5月に登場したホンダBEATといった、ヤングタイマーな車種を愛するクルマ好きは、わりといるのではないだろうか。それらを日本で長く所有するには、確かに手間と費用がかかるが「クラシックカー保険(Chubb 損害保険)」などを利用しながら維持する方法もある。

自動ブレーキなどが搭載された新型車を、所有せず月額利用やシェアする流れがあるが、ヤングタイマーな名車を所有して、クルマ生活を楽しむ選択肢があってもよいのではないだろうか。


▼取材時に見せて頂いた「レストアトライアル2号車」








※取材にご協力頂いた『CLASSIC MAZDA』チームメンバーの皆さん※

山本 修弘氏(商品本部 ロードスターアンバサダー)
伏見 亮氏(カスタマーサービス本部 リージョン商品推進部 アシスタントマネージャー)
山根 文昭氏(株式会社マツダE&T 品質保証・製造技術 統括部長補佐 (兼)製造技術部 部長)
八木原 聖司氏(株式会社マツダE&T 車両技術Gr マネージャー)
今井 英貴氏(広報本部 グローバル広報企画部 グローバル商品 グループ アシスタントマネージャー)
猪谷 陽輔氏(広報本部 国内広報部 国内商品グループ)

マツダ 初代ロードスター 限りなく「新車」に近づけるレストア術で “人馬一体” の走りを取り戻す…CLASSIC MAZDA

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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