【池原照雄の単眼複眼】コロナ禍はリーマンを上回るか…あの時の減産と業績悪化を振り返ると

緊急事態宣言直前の東京都内(4月7日)
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国内工場全社ストップは2011年の東日本大震災以来

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、グローバルで事業展開する自動車産業に強烈なダメージを与え始めている。

各国の感染防止策によって、メーカーの生命線である生産活動は制限を余儀なくされ、乗用車メーカー8社の国内工場は3月から5月初めにかけて全社が生産を一時停止させる。こうした事態は、2011年3月の東日本大震災時以来である。「コロナ禍」は、現時点では終息が見通せず、自動車産業への影響も測り難い。そこで、近年発生したふたつの激震が日本の自動車産業にどうダメージを与えたか、振り返ってみた。

ふたつの激震とは、2008年9月の世界的な金融危機であるリーマン・ショックと、2011年の東日本大震災である。それぞれ発生直後の日本メーカーのグローバル生産と連結営業利益は以下のようになった。

■リーマン・ショックと東日本大震災当時のグローバル生産および業績

リーマン・ショック
・2009年グローバル生産=1805万台(▲22%)
・2009年3月期の乗用車8社連結営業利益=3246億円の赤字(4社が赤字、4社が減益)

東日本大震災
・2011年グローバル生産=2178万台(▲5%)
・2012年3月期の乗用車8社連結営業利益=1兆4363億円(▲26%、1社が赤字、3社が減益、4社が増益)
*生産はトラック専業メーカー含む12社分、▲は前年比または前期比マイナス

需要が蒸発し、日本車は22%の減産に追い込まれたリーマン後

10年ほど前に相次いで襲ってきたこのふたつのショックは、われわれの記憶に新しいところだが、東日本大震災は国内で発生した災難であったため、自動車産業への経済的側面での影響はリーマン・ショックよりは相当小さい。震災発生年である2011年のグローバル生産は5%の落ち込みに留めることができ、業績悪化も限定的だった。

一方、リーマン・ショックでは欧米や日本といった先進諸国を中心に自動車需要が蒸発するように縮小し、瞬時に業績にも波及していった。

2009年の新車需要は、当時世界最大であり、この金融危機の発生源でもあった米国が前年を21%下回る1043万台で2位に後退した。代わって前年から46%の急成長となった中国が1365万台でトップとなり、以来、今日まで最大市場を維持している。世界3番手の日本は9%減の461万台だった。米国はリーマン前の2007年(1614万台)と2009年の比較では571万台もの需要減に見舞われ、同年にゼネラルモーターズ(GM)とクライスラー(現FCA社)は経営破たんした。

こうした状況下にあった2009年の日本メーカーのグローバル生産は1805万台で、前年から518万台(22%)に及ぶ減産になった。最近の日本の新車市場に匹敵する規模である。このうち国内生産は32%減の793万台、海外生産は13%減の1012万台だった。国内は北米向け輸出車の依存度が高く、減産幅は海外生産を上回るペースとなった。

かつての中国のような救世主は不在だが、回復は速め?

生産の縮小は直ちに業績に反映され、リーマン・ショックから半年後に集計された2009年3月期の連結決算は、戦後の混乱期を除けば最悪の内容となった。乗用車8社の営業損益は、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、富士重工業(現SUBARU)の4社が赤字に転落、ホンダなど残る4社も大幅な減益決算となった。

この期の8社の営業損益を合計すると3246億円の赤字。2008年3月期の同様の集計では過去最高となる4兆5452億円の営業利益をあげていたのに1年で暗転した。リーマン後に為替が急速かつ大幅な円高に振れていったことも日本各社への打撃を膨らませた。

日本自動車工業会の豊田章男会長は先月の定例記者会見で、リーマン・ショックと今回の相異について「リーマン時は金融機関の財務体質が非常に脆弱だったが、今回の肺炎ショックでは金融システムは比較的健全だ。一方で、リーマン時には中国の新車販売の伸びが大きく、グローバルの市場を下支えした」と指摘した。かつての中国のような救世主は見当たらないが、金融システムは大きく揺らいでいないので、回復期のスピードはあがるという見立てだ。

今回のコロナ禍の世界経済への影響は、まだ底をうかがい知ることはできない。ただ、日米など主要国の経済対策への投下資金はいずれもリーマン・ショック時を上回る規模であり、深刻さのひとつの尺度になっている。

《池原照雄》

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