プロの塗装とは? キズ、サビ止め、レストア…職人たちの声[カーケアプラス]

プロの塗装とは? キズ、サビ止め、レストアまで … 職人たちの声  
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クルマいじりが趣味のカーオーナーであれば、DIYで愛車の塗装にチャレンジしたことがあるかもしれない。

深さが浅い小キズであれば、愛車と同じカラーの「タッチペン(タッチアップペン)」をカー用品店などで入手し、応急処置レベルの作業は行えると思う。だが、時間が経過したら白っぽくなったり、周辺の色味と微妙に違う仕上がりで、後悔した経験がある人もいるのではないだろうか。

雪国や海沿いに暮らすカーオーナーであれば、サビ予防のために「防錆(ぼうせい)塗装」を検討するケースもあるだろう。サビ止め専用の安価なスプレー缶を数本購入し、色むらを気にせず車体の下回り全体に吹きかけるだけの簡単な作業だと思い、DIYで行う人もいるかもしれないが…。作業を開始してすぐに挫折したり、長時間作業の疲れや汚れなど、想定外の苦労が多くありサビ止め効果も不明という状況に陥る場合もありえる。

愛車の塗装をDIYする前に、プラモデルの塗装に挑戦してみたらより実感しやすいと思うが、素人による塗装はとても難易度が高い。車の塗装を行うプロフェッショナルたちは、実際にどういった作業を行っているのか。本記事では、車のキズの塗装、防錆塗装、レストアの塗装という3つの視点で、現役のプロたちに話を聞いた。

「新車肌」に仕上げるのがプロの仕事

相互車体有限会社(飯田市中村75)の内山嘉彦社長は、最近のハイスペックな車の修理だけでなく、旧車の整備や鈑金塗装も得意とするベテラン。入手が難しい旧車部品は自作もいとわない本格派で、都内から通っている顧客もいるほどだ。その腕をかわれ、地元の長野県飯田技術専門校の塗装講習で講師を依頼されるなど、信頼性の高さは明確。塗装職人といえる内山社長に、鈑金塗装の基本を尋ねたら、こう教えてくれた。

「塗装したことがわからない、新車と同じような状態に仕上げるのがプロの仕事です。新車肌の美しさまでもっていくには、鈑金作業でキズやヘコミをしっかり直し、パテを使って埋めた箇所を何度も何度も手で触って、指の感覚を研ぎ澄まして滑らかさを確認します。そのあと、スプレーガンで微妙な加減を瞬時に調整しながら手作業で塗装の層を重ね、時間と勝負しながら完成度を高めていきます。

例えば、新車の塗装は、4層(1.サビ止め防錆/電着塗装、2.下地、3.ベース、4.艶出しクリア)が一般的ですが、車種によってはベースカラーが2層だったり、一部の高級車はトータル7層というケースもあるんですよ。そうやって重なっているボディ塗装の一部だけを鈑金塗装で新車肌に仕上げるには、熟練の腕が必要です。

塗装に最適な環境で作業するのもプロの責任。ゴミやホコリが付着しにくく、塗装工の健康や自然環境に配慮するのは当然です。専用のマスクを着用し、乾燥、換気に適した塗装ブースで作業を行います。最近は、車両のボディカラーをデジタルで把握(測色)して色を作る調色システムを導入しているプロショップも増えていますね。

とはいえ、最新設備が整っていても、すぐに新車肌を実現できるわけではありません。筋が良くても最低5年の経験は必要でしょう。塗装の品質は、職人の腕次第。塗装は奥が深いですよ」


◆プロだからできる最高レベルの「防錆塗装」

サビ止めの防錆塗装については、どうだろうか。積雪が多い長野エリアで、高精度かつ長期的なサビ止め効果が期待できる『防錆処理システム』を導入し地元カーオーナーから好評を得ている、株式会社郷田鈑金(岡谷市郷田2-1-37)の駒場豊社長に話を聞いた。

「車両の下回りは見えづらいから油断しがちですが、長野県をはじめ積雪が多い地域で、より長くお車に乗り続けたい方は、新車購入時に防錆塗装を行われていますね。中には、安いからという理由で、スプレー缶のサビ止め剤を買って自分でやったり、安くやってくれる業者に頼む方もいらっしゃると思いますが、安いということは、それ相応です。

当社では、世界の自動車メーカーで採用されている防錆剤(デニトロール)を使用しています。特徴は、表面が硬くて、内部は柔軟性があり剥がれにくいところで、しっかりとした塗膜が下回りを保護してくれるので部品が傷みにくいんです。防音にも効果的で、走行時の騒音も軽減されます。

水が溜まってサビやすい部分には、透明のサラッとした防錆剤を流し込んでフレームの内部やリアフェンダー内側に浸透させる。これがとても大事です。車の下にたれてくる事もあるので、定着させるために密封剤を使っています。当社は徹底的にやりますので、お車を大切にされている方に好評ですね。お車を手放されるときも、本格的な防錆塗装をしているのと、していないのとでは、車両の価値が大きく変わってきます。

当社はレストアも行っており、特にマツダの初代ロードスターが得意分野です。全塗装の経験も豊富ですし、イベント(東京オートサロン2020)で車両展示もしています。国産自動車メーカーのマツダや、輸入車の販売や修理に強いヤナセオートシステムズと同じ『TUV クラシックカーガレージ認証』も取得しています。

サビ止めもレストアの全塗装も、長年の経験があるので品質に自信はありますが、どうしても時間はかかりますね。例えば、自動車メーカーが新車製造時に使用している、ドブ漬けの電着塗装設備をレストア車の下地防錆で利用できれば、作業時間を大幅に短縮できると思いますが、民間の修理工場ではまず導入できない。数社で共用利用できるなど、何か方法があるとありがたいですけどね」


老舗の車体架装メーカーが、レストアで「電着塗装」設備を活用

相互車体の内山社長、郷田鈑金の駒場社長の発言にあった「電着塗装」について、編集部はある情報を偶然入手した。2020年10月に創業70周年を迎える車体架装メーカーの株式会社トノックス(本社・平塚市長瀞2-6)が、電着塗装設備を活用して旧車レストアを行っていることがわかったのだ。早速取材を依頼したところ、レストア事業を担当している、株式会社トップス・ジャパン(横浜市保土ケ谷区上星川3-22-5) 業務営業グループマネージャーの渡辺隆氏からお話を聞くことができた。

「親会社のトノックスは、警察車両や消防車両、レッカー車などの特装車全般の架装を行っているのですが、以前は自動車メーカー・日産の協力工場として、ダットサントラック、フェアレディ、シルビアの初代CSP311型を製造していました。

長年の車両製造技術と設備を強みとして、2017年からレストア事業を行っています。最大の特徴は、電着塗装設備、いわゆるドブ漬け塗装を行えることです。組み上げたボディを、防錆効果がある塗料で満たしたプールに浸し、電流を流して塗料を定着させるもので、カチオン電着塗装とも呼ばれます。

自動車メーカーによるレストアサービスが話題になっていますが、電着塗装設備を活用できるのは、当社だけなのではないでしょうか。本来、新車製造時に使用する設備で、製造ラインを止めて、旧車のドブ漬けはできませんからね。

ドブ漬けするには、レストア車両のサビをしっかり取り除く必要があるので、その作業は時間がかかりますが、ボディ下地の防錆性能は確かです。自社で手掛けた初代シルビアを旧車イベント(ノスタルジック2デイズ2020)で展示した際、興味をもってくださった方は多かったように思います。イベントには「日本旧車協会」として出展したのですが、同協会の代表理事をトノックスの殿内荘太郎社長が務めており、レストア技術の伝承や旧車の保存、維持、適正な基準による評価のほか、旧車への重課税改正に向けた活動も行っています。

当社では、レストアだけでなく、買取事業も注力しています。オーナー様から旧車を買い取り、自社でレストアして販売するプランもあります。車種によりますが、1970年から2000年の間に販売された車両で、動かない事故車や部品のない車(ドア・バンパーなど)、サビがある車も含めてご相談を受け付けています。

車の架装を行うメーカーの経験、技術、設備を活用して、旧車を愛する方々のサポートをしっかり行っていきたい。それが当社の思いです」


車の塗装は、新車製造時からはじまり、ボディのキズやサビ止め、レストアと幅広い。だがその品質は、塗装に携わる職人たちの思いと技術、設備によって差があるといえるだろう。塗装に限らず、大切な愛車を預けられるプロショップの見極めは重要だと言わざるをえない。

<取材協力>
相互車体有限会社 www.sougo-bp.jp
株式会社郷田鈑金 www.godabp.com
株式会社トノックス tonox.jp
株式会社トップス・ジャパン tonox.jp/topsjapan
一般社団法人 日本旧車協会 www.jkyusya.or.jp

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《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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