新型コロナウイルスはモビリティ業界の全体最適を加速する…ローランド・ベルガー パートナー 高橋啓介氏[インタビュー]

新型コロナウイルスはモビリティ業界の全体最適を加速する…ローランド・ベルガー パートナー 高橋啓介氏[インタビュー]
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新型コロナウイルスによるパンデミックは、社会のあらゆる側面にダメージを与えている。医療、社会システム、市場や企業の働き方とビジネスモデル、ソーシャルディスタンスなど文化的側面に加え、短期的、長期的な変化と対応に迫られている。

ポストコロナを見据えた今後は、どの業界、誰でも気になるところである。このうちモビリティ産業について、大局的な俯瞰から企業活動への影響、モビリティ事業への影響、特にサプライチェーンでのリスクマネジメントの新しい考え方を議論するオンラインセミナー「モビリティ産業におけるポストコロナの世界観を見据えた事業のあり方・つくり方」が5月26日に開催される。

セミナーの開催に先立ち登壇者の2名に話を聞いた。最初は、「長期的なポストコロナのビジネス機会、技術変化?商品変化?」と題するセッションを担当するローランド・ベルガー パートナーの高橋啓介氏。自動車産業や交通事業者を含む移動ビジネスでの市場変化について講演予定だ。

―ポストコロナの話の前に、まず足元の影響についてお伺いします。モビリティ業界における新型コロナウイルスの影響についてどう分析されていますか?

高橋氏(以下同):旅客事業で考えるとわかりやすいですが、今回もっとも経済的打撃を受けている業界のひとつが、交通事業者やモビリティにかかわる業界だと思います。世界中の航空会社がキャッシュアウトを現実の経営問題として向き合っている状態です。リーマンショックのときは、ある意味金融不況でしたが、今回のパンデミックは、移動の需要も供給が(規制によって)止まっています。

分析は非常に難しいのですが、中長期では「New Normal」の時代が来るといわれているように、大きな変革期として捉えています。これまで、人類の歴史は移動の発展の歴史に置き換えることができます。どれだけ短時間に遠くに行けるかが、社会経済の発展の尺度でもありました。しかし、今後は移動量の増加が止まる可能性があります。新興国などで人口が増えているところもありますが、経済成長の指標となる一人当たりの人の移動需要の伸びが減る時代になるかもしれません。

自動車産業でいえば、その発生以来、市場が減衰したことはありませんでしたが、元々のモビリティ革命に加え、移動総量の変化が業界の脅威として立ちはだかります。

―MaaSが注目され始めたころに、似たような意見はありましたが、いまその脅威が現実のものとなったわけですね。

モビリティ革命と新型コロナウイルスに直接の関係はありませんが、パンデミックがモビリティ革命を加速させていると言っていいでしょう。パンデミックが業界に打撃を与える一方、追い風になるという考え方もあります。

エピデミックの脅威が落ち着きを取り戻しつつある中国では、自動車産業が回復してきています。反動の需要もあるでしょうが、マイカーは「密」を避けるパーソナルスペースとして評価されているのです。国内でも「都内に住んでクルマは不要だったけど購入を検討している」という人がいます。

リモートワークは、教育、医療の現場だけでなく、製造業、工場のメンテナンスなど、これまで現場での作業が必須でリモートは考えられないと思われていた領域にも広がっていくでしょう。「通勤・移動しなくても済む」といったことが起きています。そう考えると、都内でも駅から10分くらい歩く距離や郊外の土地の価値が見直されても不思議ではありません。ドイツのような郊外型のまちづくりが見直されると、地方・郊外の時代がくるかもしれません。

―これまでの変化や影響を踏まえて、自動車業界が考えなければならない今後の方策、戦略についてはどうでしょうか。

パンデミックの影響だけではないですが、移動総量が減っていくと、クルマを開発・製造するためのアセット、販売や流通のためのアセットへの投資が減っていく可能性の考慮は必要だと思います。

新車を数年ごとに発表してチャネルで販売していくというモデルは徐々に変わって行かざるを得ないと思います。たとえばテスラは、今回のパンデミックでも打撃を受けていない部分があります。そもそもオンラインでの販売が多く、むしろバックオーダーを抱えている状態なので、市場の需要の落ち込みの影響よりも工場で生産できるかどうかの方が問題です。流通や販売、PRにかかるコストも限定的です。そして、テスラは、生み出した新車をアップデートしつづける戦略をとっています。流通面でのデジタル・オンラインの活用や、生み出した車両で長く儲けるといったモデルにより変わっていくかなと思います。

ただでさえ、メーカー過多が指摘されている業界です。新型コロナウイルスによって大手の従来型プレーヤーが打撃を受けているところに、相対的にアセットライトであったテスラのようなメーカーや、MaaS、CASEといった分野の新しいプレーヤーが参入してくると、業界の再編がさらに進むのではないでしょうか。

―業界再編やビジネスモデルのサービスシフトは、モビリティ革命でも指摘されていた問題ですね。自動車業界から視点を広げて交通事業や旅客運輸といったモビリティ産業で見た場合、ポストコロナはどう変わると見ていますか。

移動総量の減少は脅威です。すでに、コロナ禍を踏まえ、元々厳しかった地方の定期バス路線は維持がよりしんどくなり、オンデマンドにできないかという話が話題にのぼっています。ただ、移動ピークの平準化、全体最適がしやすくなるという良い面もあります。リモートワークや分散通勤が進むと、朝夕の通勤のための過密ダイヤを分散できるかもしれません。元々言われていたMaaSの動きが加速するでしょう。

今後、人々は移動することに対する意味・価値をより考えるようになると思っています。リモートワーク、通販だけでなく買い物代行などのサービスが進展すると、移動しなくていい、移動するより持ってきてもらった方が安いといった世界がやってきます。(移動自体が割高ともとらかれない状況もやってくるかもしれません) そうなると、ある意味、Beyond MaaS の世界かもしれませんが、目的地と連携しながら意味を持たせて移動してもらう、移動そのものに価値をもたらせるということがより重要になってくるでしょう。

短期的には、業務や出張に支えられていた鉄度・航空業界は回復が難しいかもしれません。
航空会社どうしの合併や、移動手段が異なる交通事業者によるサービス連携など、ここでも業界再編の圧力が高まってくると思います。

―一時的にせよ経営が厳しくなった事業者が、合併や提携、事業シフトなどを余儀なくされるということはありそうですね。

5月26日開催「モビリティ産業におけるポストコロナの世界観を見据えた事業のあり方・つくり方」オンラインセミナーはこちら。

《中尾真二》

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