名門フェラーリが活用するシミュレーション技術…原理がわかれば実験は不要

フェラーリのシミュレーション技術による車両開発
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10日に開催されたバーチャルイベント「Simulation World」(アンシス主催)において、フェラーリ CTOでありGTレーシングカーの設計開発責任者であるフェルディナンド・カニーゾ氏が、同社の車両設計とシミュレーション技術とのかかわりについて講演を行った。

フェラーリが車両開発にシミュレーション技術を導入したのは1990年代。およそ20年前からとなる。そして、年を経るごとにその役割は確実に変化し、適用範囲を広げ設計に多様性をもたらしているという。その経緯は4つのステップにわけることができる。

まず、シミュレーション技術を導入した当初。単一コンポーネントの破断解析、損傷解析、故障解析、あるいは可動部分の解析への適用だ。次のステップは設計要件の解析とその検証にシミュレーションを行うことだ。個々の部品やコンポーネントの性能や機能をシミュレーションにより計算・判断できるようになったが、それらを組み合わせたシステムとしての性能や安全性、耐久性などの検証もシミュレーション技術を利用するようになった。

次の第3ステップ、ここ数年でシミュレーション技術は設計段階の重要な開発資産のひとつになったという。設計要件の検証から、コンセプト設計や採用するモデルの決定にシミュレーションを活用し、設計の最適化を行う。コンピュータの処理性能が飛躍的に向上し、物理モデルや電子回路、化学変化や熱力学のシミュレーション精度も上がったため可能になった。設計者のセンスやひらめきに頼っていた部分を、シミュレーション技術が後押しする。

そして、現在は第4ステップとなり、システムエンジニアリング全体に適用されている。シミュレーションプラットフォームが、個々の設計ツールや開発支援システムのデータを統合し、単体テストから運用テストまでも一元的にバーチャルに再現・検証することができる。温度変化、応力や摩擦といった構造への影響、電気特性、空力などリアルワールドと同じ状況をシミュレーター群が再現する。これにより、複雑な処理系、車両全体の特性をダイナミックに再現し、機能や動作を検証できる。

カニーゾ氏は、レオナルド・ダ・ビンチの言葉「自然界の現象には必ず理由がある。したがってその原理がわかれば経験(実験)は必要ない(Nessun effetto e in natura senza ragione, intendi la ragione e non ti bisogna sperienza.)」を引用し、シミュレーション技術は、単に答えを提示するものではなく「理解」を与えるものだと断言する。

フェラーリにとってシミュレーション技術は、製品の開発ツールではなくイノベーションを生み出す戦略ツールということだ。そして、シミュレーションの重要な役回りとして、同社にとって、トレーニングツールであり設計の検証ツールであり、エンジニアリングのマネジメントツールの3つを挙げた。

設計や開発の段階でシミュレーション技術を使うことで、クリティカルなテストや検証が可能なり、結果の見えない部分を可視化する。プロトタイプの作成やリアルな検証を最小限に抑えるだけでなく、設計の最適パラメータの発見が車両のイノベーションを加速するという。

カニーゾ氏の言葉通り、フェラーリでは衝突安全性やクラッシュテスト、排気音や風切り音、キャビンの温度管理、エンジンの燃調や燃焼の最適化、ターボチャージャーの特性、ブレーキ性能や冷却状況、空力やシャーシダイナミクスからビークルダイナミックスとあらゆる設計要素にシミュレーション技術を投入している。

スクーデリアの名門企業は、この20年間でシミュレーションによるモデル開発を着実に浸透させている。高級スポーツカーブランドとして、一般的な量産メーカーとは一線を画すフェラーリも、極限まで性能を追求した車両の設計は、最新のコンピューティング技術の支援なしにはなしえないということだろう。

《中尾真二》

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