リニア静岡工区をめぐり、静岡県知事とJR東海社長が初面談…ヤード準備工事の再開判断は持越しに

静岡県庁の知事室で面談する川勝知事(左)と金子JR東海社長(右)。
静岡県庁の知事室で面談する川勝知事(左)と金子JR東海社長(右)。全 1 枚

リニア中央新幹線(リニア)静岡工区における大井川水系の水資源問題をめぐって、静岡県とリニアの建設主体であるJR東海との間で意見の対立が続いているなか、6月26日には川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長との1対1の面談が行なわれた。

静岡工区の水資源問題については、自然環境に与える影響などを科学的見地から検討する専門家会議が、国土交通省主導で4~6月に3回開催されているが、一方で、JR東海は5月20日、南アルプストンネル工事における西俣、千石、椹島(さわらじま)各ヤードの準備工事再開を6月中にできなければ、2027年のリニア開業が厳しくなるとして、静岡県に対して再開へ向けての理解を文書で求めた。

これに対し静岡県は、準備工事に乗じて本工事に入るのではないかという疑念を持ちつつも、川勝知事は金子社長との面談を「やぶさかではない」と返信。これを受けて5月27日には、JR東海から面談の申し入れが入り、今回、実現の運びとなった。

今回の面談は、川勝知事がかねてから情報の透明性を求めていたことから、1時間あまりにわたって公開で行なわれ、静岡県が運営する「ふじのくにネットテレビ」でも動画生配信された。

冒頭、金子社長が4月27日に開かれた第1回の有識者会議で「あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する扱いなのではないかと考えているものです」と述べたことを陳謝。続いて、リニア中央新幹線が東海道新幹線のバックアップであること、日本経済にとって有益な国策であり、社としての利益を追求するだけのものではないことなどに理解を求めるとともに、準備工事については、工事の総責任者である自身が了承しない限り、本工事へ移ることはないと明言した。

これに対し川勝知事は、金子社長が述べたリニアの意義に理解を示したものの、あくまで水資源や自然環境との両立が前提であることを改めて強調。本工事については、専門家会議の結論だけではなく、地元の水利者からのコンセンサスも得た上で判断する必要があるという考えを示した。

また、6月11日に2度目となる静岡工区の視察を行なった知事は、2019年10月の台風19号により被害を受けた作業道など、現場の状況を生々しく語り、静岡県民が作業員の大半を占めるとして、作業道の舗装などを含む安全対策を強く求めた。金子社長もJR東海社員が多数従事することから、その点をしっかり行なうことで認識が一致した。

会談の終盤、準備工事再開を迫る金子社長に対して、川勝知事は「もし専門家会議で大井川の水を全量戻すことが不可能だと判断された時にどうするのか」という問いを投げかけたが、金子社長は「現場の技術者を信じたい」と述べるに留まった。東京~名古屋・大阪間の開業に拘らず、リニアの品川~甲府間と身延線、東海道新幹線を絡めた観光振興も視野に入れるべきという川勝知事の主張にも、金子社長は東京~名古屋・大阪の主要都市圏を一気に結ぶという立場を崩さなかった。

結局、今回の会談で川勝知事は再開を了承することはなかったが、再開には条例に基づく協定締結が必要だとして、今後は県の検討結果を待って再開の是非を判断する方向で面談は終了した。

面談中は川勝知事が大井川の地下水を基にした牧之原市の献上茶などを金子社長に進呈。大井川の湧水がいかに地元にとって大切な「命の水」であるのかを訴えるとともに、有識者会議を主導する国土交通省の、静岡県やJR東海に対する態度を強く非難する場面もあった。ただ、全体的には、両者の立場の違いや、現状認識を確認する場に終始したような印象だった。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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