EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]

EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]
EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]全 1 枚

レスポンスセミナー「欧州自動車産業の次の一手、欧州の現場で何が起きているのか~EV減速局面・SDV/AIへの移行・中国勢の浸透~」では、イノベーションアナリスト Andy Kondo(近藤敦)氏が、欧州自動車業界の現状について講演を行う。

メディアでは、電動化戦略で迷走する欧州を見て、慎重な日本のやり方が正しかったとする記事が見られるが、欧州勢とてただ手をこまねいているわけではない。いっぽうで、欧州域内では中国勢が攻勢を強めてきている。

セミナーでは、直前に開催される欧州最大級の商用車ショー「IAA Transportation 2026(ハノーバー)」の動向に加え、最新の欧州調査情報を交えて、欧州自動車産業の次の一手と日本がとるべき方向性を探る。

中国勢の欧州戦略

欧州市場において中国車は、現在どのような位置づけにあるのだろうか。

「日経他、各社の報道によれば2026年5月の欧州主要31か国の新車販売シェアで、中国メーカーが日本メーカーを超えたといいます。関税・エネルギー問題・中国国内事情など、要因はさまざま考えられますが、ひとつ言えるのは、中国勢がいきなり参入して売り上げを伸ばしたわけではなく、用意周到な計画に基づいて欧州市場に進出してきているということです」(Kondo氏:以下同)

中国車の欧州進出は、べつに今に始まったことではない。EUの電動化戦略にあわせて、2020年ごろからGWM、MG、SERESなどいくつもの中国メーカーがEV、HEVを投入していた。BYDは、2012年から電気バスを走らせている。Kondo氏がいうには、そのころは中国であることはあまり前面に出さず、地道に車両のデザインや品質をアピールすることを優先させていた。彼らも、中国、中国車が世界でどのようなイメージを持たれているのかの認識はあったし、分析もされていた。

この傾向は2023年のIAA MOBILITY2023(ミュンヘンモーターショー)までは顕著だったが、2025年(IAA MOBILITYとIAA Transportationは交互に隔年開催)は、XPENGにしろAVATRにしろ中国ブランドであることを隠さなくなった。

完成車だけではない中国技術の浸透

Kondo氏は、現地取材でも、安全性や先端技術など、しっかり市場に見せていくことで、現地での中国車の評価やブランドイメージも変わってきたことを感じるという。

「ここ数年で、ドイツやフランスで見かける中国車が確実に増えています。中国車ではないですが、イタリアではタクシーがハイブリッドのプリウスからEVのKIAに置き換わってきています。

もちろんEUでも中国車への関税強化やデカップリング政策があります。これに対して、各社はEU域内での現地工場、現地生産で対応しています。BYDはハンガリーに工場をつくり、XPENGはオーストリアのマグナ・シュタイアの工場で生産を開始します。それに伴い、現地雇用も進めています」

動きは乗用車のOEMブランドだけではない。

「たとえばイタリアでは、シェアサイクル、バイク置き場に中国製のマイクロカーを見るようになりました。バイクなど二輪の都市内モビリティの延長として1−2人乗りの超小型EVが入り込んでいます。さらに注目すべきはサプライヤーの動きです。中国サプライヤーが、EV・SDV関連の最新技術を活発に売り込んできています。欧州のTier1サプライヤー各社、ヴァレオやオモビオは、中国のR&D拠点が開発した技術、部品を欧州に積極的に展開しています。それをさらに欧州の完成車メーカーにも提案しているのです」

確かに、欧州のモーターショーや産業・ロボット展などに行くと、日本とは違った中国系企業の風景を見ることができる。

「中国系OEMは、トラック・バスといった商用車市場にも進出しています。今回、商用車のモーターショーであるIAA Transportation(ハノーバー)では、中国のトラックメーカーの動向も調べてくる予定です。ここでもEV、SDVといった新しい技術と市場を足掛かりに、攻勢を強めているところだからです」

エンジン回帰はゴールではない

欧州は、中国車の進出に対してハイブリッド回帰、エンジン回帰で回復を図っているという見立てがある。Kondo氏はこれにも懐疑的だ。

「EU委員会は2025年12月に、2035年までのガソリン車の原則販売禁止からは条件付きで内燃機関車の販売を認める緩和案を発表しましたが、それには合成燃料や低炭素鋼の利用などの条件をつけており、カーボンニュートラルのゴールを変えたわけではありません。実際、欧州でもEV市場全体は伸びています。その中での下降局面や特定企業の動きだけで全体のトレンドを判断することはできません。

市場のトレンドについては、セミナーでは統計データとともに詳しく説明する予定です」

欧州メーカーが模索する3つの戦術

では、欧州自動車メーカーは変動する市場状況の中でどのような戦略をとっているのか?

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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