【カワサキ Z H2 vs ヤマハ MT-10 比較試乗】いま激アツな大型ネイキッド!その醍醐味とは…青木タカオ

Zは究極のロードスターであることを忘れていない

街乗り&ツーリング派の期待に応えたMT-10

アップライトな乗車姿勢でワイルドに操ることこそ醍醐味

カワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SP
カワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SP全 46 枚

量産市販バイクにおけるフルカウル初装備は1976年のBMW『R100RS』といわれていて、レーサーレプリカブームだった80年代では、カウル付きこそ高性能の証とされた。

【画像全46枚】

しかし、「やっぱりバイクはカウルがない方がカッコイイよね」という意見も多く、その後にはネイキッドブームが起きる。そもそも70年代のバイクはみんなノンカウルだったわけで、昨今のネオクラシックブームを見てもわかる通り、エンジンを剥き出しにしたネイキッドスタイルが根強く支持される。

もちろん、カウル付きかネイキッドか、それはライダーの好み・用途によってオーナー自身が選べばいいわけで、甲乙つける必要などどこにもない。

そんな当たり前のことを冒頭から書いてしまったが、いま大型ネイキッドが激アツでスゴイことになっている。その両雄、カワサキ『Z H2』とヤマハ『MT-10SP』を乗り比べてみた。どちらも排気量は1000cc、凄まじいパワーを持ったバイクであることは想像に容易いだろう。

心臓部は両車強靭だが、スーパーチャージャー付きのインパクトは絶大!

カワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SPカワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SP
まず『Z H2』。水冷DOHC4バルブ並列4気筒998ccエンジンは、なんとスーパーチャージャー付き。最大200psを発揮する心臓部を持ち、カワサキ伝統である「Z」の最新トップエンドモデルに相応しい高性能ぶりを実現している。

『MT-10SP』も負けていない。サーキット最速を目指し開発されたスーパースポーツの最高峰『YZF-R1』譲りの997ccクロスプレーン型クランクの4気筒エンジンを、公道で多用する常用回転域でより力強くなるようにリチューンし、ストリートやワインディングに照準を合わせた。2台のエンジンスペックは下記の通りだ。

■最高出力
Z H2=147kW(200ps)/11,000rpm
MT-10/SP=118kW(160ps)/11,500rpm

■最大トルク
Z H2=137Nm(14.0kg-m)/11,500rpm
MT-10/SP=111Nm(11.3kg-m)/9,000rpm

Zは究極のロードスターであることを忘れていない

カワサキ Z H2カワサキ Z H2
「凄み」をデザインコンセプトにした『Z H2』のスタイルは、顔つきを見てもさぞかしジャジャ馬だろうと腰が引けるが、走り出した途端に気おくれする必要がないことに気づく。低回転域からギクシャクすることなく、スムーズかつトルクフルにエンジンが回り、4000rpm以下では羊の皮を被った狼を演じきってしまう。

SHOWA製の前後サスが低速域からよく動き、しなやかさと強度を高次元でバランスさせたトレリスフレームが、優れたコントロール性を生み出している。ハイスピードに対応するため、ガッチガッチに車体や足まわりを硬めたという作り込みとは異なり、市街地を流す速度でも従順に言うことを聞いてくれ、意外なほど扱いやすい。

カワサキ Z H2カワサキ Z H2
しかし、スーパーチャージャーの過給音がヘルメット越しにも聞こえる5000rpm以上は、漲るトルクはもう手に負えないほどパワフルで、加速は強烈そのもの。スロットルレスポンスもシャープで、フロントが浮くほどに力強い。実際、前輪が上がっても、電子制御で抑えてくれるから安心してアクセルを大きく開けていける。ハイスピードレンジになっても、軽快なハンドリングのまま車体は落ち着いて安定感を失うことはない。

カワサキ Z H2カワサキ Z H2
超弩級モンスターであることは間違いないが、スーパーチャージャー付きだからといって、ビギナーは手も足も出ないなんてことはない。フル、ミドル、ローの3段階が設定できるパワーモードで穏やか出力特性にも切り替えられるし、クルーズコントロールも搭載され、高速道路では快適なクルージングも味わえる。過激な走りばかりがクローズアップされがちだが、普段乗りからツーリングまで幅広く対応する懐の広いモデルに『Z H2』は仕上がっている。

街乗り&ツーリング派の期待に応えたMT-10

ヤマハ MT-10SPヤマハ MT-10SP
『MT-10/SP』」が目指したのは、孫悟空の乗るキントウン。ときにはあぐらをかいてノンビリと飛び、ときには前のめりになって先を急ぐ。そもそもMTシリーズは日常の相棒として、オールマイティさを重視したモデルであり、そのフラッグシップとなるのだから多用途に応えなければならない。

まず、動力性能は「YZF-R1」と共通のプラットフォームで申し分なし。ただし、短いホイールベースの車体とハイパワーなエンジンの組み合わせた「YZF-R1」だと、サーキットでは俊敏で良いが、落ち着きや扱いやすさが遠のいてしまう。

ヤマハ MT-10SPヤマハ MT-10SP
そこで、このMT-10SPに乗ると、優れた素材をベースにMTらしい軽快感やコンフォート性が高められていることがすぐにわかる。SPならではのオーリンズ製前後サスは初期荷重からしなやかに動き、路面追従性に優れ、神経質な足まわりになっていない。

アルミ製デルタボックスフレームのシャシーも見直しを受けてストリートを想定しているが、速度レンジが上がってからが本領発揮と言わんばかりの剛性感がはっきりとあり、車体コントロールは積極的な荷重入力があった方が上手くいく。

ヤマハ MT-10SPヤマハ MT-10SP
エンジンは荒々しいほどにトルクが太く、アクセルを開けたときのシャープな反応が痛快。ただし、街乗りで多用する3000~4000rpm付近では、レスポンスが程よく穏やかでぎこちなさを消している。ノンビリ流したいときの操作フィールも徹底追及していることが、サーキット派ではない多数の街乗り&ツーリング派に受けいれられるMTシリーズならではと言っていいだろう。

アップライトな乗車姿勢でワイルドに操るのこそ醍醐味

両車とも、ハイパワーなマシンをリラックスのできるアップライトなライディングポジションで操るというのが醍醐味になっている。フットペグもバックステップ気味ではなく、窮屈さを感じない。シート高は『Z H2』が830mm、『MT-10SP』が825mmで、身長175cmの筆者の場合、足つき性に不安なし。サイドスタンドを払って、車体を起こすときも1000ccクラスとは思えぬほどスッと軽い。

カワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SPカワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SP

■シート高
Z H2=830mm
MT-10SP=825mm

■車両重量
Z H2=240kg
MT-10SP=212kg

■車体本体価格※税込み
Z H2=189万2000円
MT-10SP=203万5000円
MT-10=170万5000円

ネイキッドの軽快感は大排気量になっても活かされていて、操る喜びをたっぷりと感じられるのがいい。怪物級マシンを手懐けるのは、どちらも電子制御が担っていて、乗り手はアクセルを開けたときのビッグトルクにただただ酔いしれることができる。

どちらを選ぶかはデザインを含む好み次第だが、スーパーチャージャーというスパイスを持つ『Z H2』は、やはり多くの人を魅了しそうだ。

カワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SPカワサキ Z H2 と ヤマハ MT-10SP

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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