ハイオクガソリン問題、バーター取引はなにがいけないのか?…消費者庁も動いた

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6月末、ハイオクガソリンの表記の変更に関連して、長らく業界内で行われてきた「バーター取引」が消費者の目に触れることとなった。7月17日には、石油連盟会長が、定例報告でこの問題に言及。20日は毎日新聞が、消費者庁がコスモ石油の調査に入ったことを報じている。

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●ハイオクは混合販売されていた

この問題、あらためて整理してみたい。バーター取引(混合販売)は、2000年代に入ってから業界に広まったとされる。

バブル崩壊以後の景気後退やリーマンショックなどによって進む業界再編の影響もあり、元売り銘柄の異なるガソリンスタンド(SS)で、流通過程のタンクの共有が行われていた。たとえば、元売りAのSSで売られていたスーパーAという銘柄のハイオクガソリンがあったとして、その中身は、B社のプレミアムBやC社のウルトラCハイオクなどが混ざっていたということになる。

仮にスーパーAが、「出力を5%アップさせます」「燃費を10%向上させます」と謳っていた場合、それはウルトラCハイオクが混ざっていても正しい表記なのかという問題がある。

消費者庁がコスモ石油に対して調査に入ったという報道は、「景品表示法の優良誤認にあたる疑い」が根拠となっている。消費者庁は、「個別の案件には答えられない」として事実関係含めてノーコメントとのことだが、効果や機能の検証がなされてない状態での性能表示は虚偽であり、優良誤認の対象として十分成立する。

取材の中で、混合販売の例外もあった。出光昭和シェルSSのV-Power(ハイオク)は、離島など一部を除いてタンクの共有やバーター販売はないという(出光興産広報部)。シェル石油は1980年代から、エンジン内洗浄効果(カーボン除去)や燃焼効率アップを実現する高付加価値ハイオクを手掛けている。シェルは昭和シェルを経て出光興産グループに再編されているが、当時からの品質管理・商品コンセプトを維持していることになる。

●車のタンク内で結局混合される

純粋に技術的な視点で見た場合、バーター取引そのものは本質的な問題ではない。

給油のときに元売りの銘柄を指定する人はそれほど多くない。車を運転する人ならわかると思うが、普通の車のガソリンタンクはそもそも銘柄混合が普通である。行きつけのガソリンスタンドを決めている人や銘柄にこだわるユーザーは、ガソリンタンク内で混ざることは少ないが、緊急時にも銘柄にこだわる人は、エンジンによほどデリケートなチューニングを施している人くらいではないか(それが正しいチューニングかどうかは不明)。

普通のエンジンなら、ハイオク仕様でもレギュラーガソリンを利用することに問題はない。所定の性能は出せないかもしれないが、ガソリンによる性能差よりも、タイヤやオイル、積載物、天候、運転の仕方による差のほうがよほど大きい。

ハイオクガソリンは、JIS規格で決められた要件がある。JISでは、ハイオクガソリンは「プレミアム」と規定され、オクタン価が96.0以上のものをいう。レギュラーは89.0以上だ。オクタン価はノッキング(異常燃焼)のしにくさを示す値。原油から精製されるときのイソオクタンの混合比率が基本的な考え方だが、実際にはノッキング防止のための添加物を加えるので、JISや各国の規格では、燃焼試験の結果からガソリンのオクタン価を決定している。

ガソリンについては、オクタン価以外にも、密度、蒸留温度、引火点・着火点、含有成分の有無・比率、腐食力、不純物(ガム)の割合などが規定されているが、レギュラーとハイオクを分けるのはオクタン価だけだ。石油連盟によれば、「バーター取引の際も、各社が個別の契約を交わしている。その中にはガソリンの品質や保管について取り決めをしているはず」という。出光興産は、スーパーゼアスのバーター取引はあるとするが「スーパーゼアスとしての商品規格を満たしていることを確認している」と明言した。

野放図にタンクを共有しているわけではないので、混合されたからといってハイオクがハイオク(オクタン価96以上)でなくなるということはない。

●求められる正しい説明と周知

バーター取引は業界再編や社会情勢からやむを得ない面もある。重要な生活物資であるガソリン・石油製品の安定供給は重要であり、全国でSSの統廃合が進む中、各社の相互融通(バーター取引)は、供給網の空白化を防ぎ安定したエネルギー供給につながるもので、適切な品質管理の下なら消費者にとってメリットがある。このような元売りやSSの主張は、もっともだ。

ただし、景表法の問題や道義的な問題とは切り離して考える必要がある。消費者にそれを周知してこなかった、あるいは周知が不十分だったのも事実だ。問題がないので説明しない、ではなく、問題がないからこそ正しく説明すれば消費者の理解が得られるものだ。

とくに、ハイオクの銘柄ごとの効能を信用して指定給油を行っていたユーザーの中には「裏切られた」と思う人はいるだろう。この点については、ホームページや店頭での宣伝表示を替えるだけで済ますのではなく、消費者への十分な説明を期待したい。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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