[音に関する“豆知識”]新連載!…周波数について

ツイーターの取り付け例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。
ツイーターの取り付け例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。全 1 枚

音楽を楽しむ上では、音についての理屈を意識する必要はほぼない。しかし、オーディオシステムの実力を上げようとするときには、音についての科学的な知識もあると役立つ。当不定期連載ではそこのところにフォーカスする。まず今回は、「周波数」をテーマにお贈りする。

音は上下動を繰り返しながら空気中を進む。

さて、「周波数」とは何なのかというと以下のとおりだ。「電波・音波などの周期的変化をする現象が1秒間に何回繰り返されるかを示す数」である。単位はHz(ヘルツ)だ。別の言葉では「振動数」とも呼ばれていて、英語では「frequency(フリークエンシー)」という単語がこれに相当する。

ところで音は、水面を進む波紋のように上下動を繰り返しながら空気中を進んでいく。0度のところをスタートしてまずはせり上がり、上がり切ったところから今度は下がり0度のところを通過してさらに潜り込む。そしてまた上昇して0度のところに帰ってくる。ここまでの動きが1周期だ。なお、1周期分の音波の長さは1波長と呼ばれている。

で、音は音程の高低によってこの動きを何回繰り返すかが変わってくる。例えばギターのチューニングで使われる「Aの音(ラの音)」は周波数で言うと「約440Hz」だ。つまりこの「Aの音」は、1秒間に440回の上下動を繰り返す。

ところで音速は約340m/secなのだが、実は音速は温度で変化する。温度が高くなるにつれて音速は上がっていくのだ。例えば、1気圧のところで温度が0度なら音速は331.5m/sec。そして気温が15度のときに340.5m/secとなる。

音を長さでイメージすると「イコライザー」調整に役に立つ!?

さて、計算がしやすいようにとりあえず音速は340m/secだと仮定しよう。そしてこのとき音は、1秒間に340mも進むこととなる。

で、人間の可聴帯域の最低音となる20Hzの音は340m進む間に20回の上下動を繰り返すのだが、その1つ1つの上下動の長さ(1波長)は17mもある。対して100Hzの音は340m進む間に100回の上下動を繰り返し、1波長は3.4m。1kHzの音の1波長は34cm、10kHzの音の1波長は3.4cm。音程によって1波長は相当に差が開く。

なお、このように音波の長さをイメージすると、「イコライザー」調整をするときに役に立ったりもしてくる。周波数特性の乱れが生じているときに、それを解決する手がかりが見つけやすくなることがあるのだ。

というのも車内は狭いがゆえに、平行面があるとその間を音が行ったり来たりを繰り返す。で、その平行面の面と面の間に1波長がすっぽりとはまってしまったり、またはその距離と1波長が整数倍の関係になったり何分の1かで割り切れる関係になると、その音には何らかの問題が発生したりする。増幅されてピークとなったり、減衰してディップとなったりするのだ。車内の周波数特性の乱れは、主にはこうして起きてくる。

というわけなので、以下のようなやり方も可能となる。まず、車内に存在している平行面を探してみる。例えば左右のドアとドアの間や、片側のドアとセンターコンソールの間等々。そしてその距離を測ってみて、その距離にすっぽりとはまる周波数はいくつなのかを割り出してみる。そうしたら、その周波数が該当する「イコライザー」のバンドや、2倍、3倍の長さとなる周波数に該当するバンド、さらには1/2、1/3の周波数に該当するバンドを上げたり下げたりしてみよう。上げてみて「うるさい」という感じがすればその周波数帯がピークになっていたと推測できるのでそのバンドは下げる。逆に上げたことで聴こえやすくなったらディップになっていたのかもしれないと推察できる。

このように、音を長さで考えることで音響特性の乱れの解消に繋げられる場合もあるのだ。

音程が1オクターブ上がると、「周波数」は倍に増える!

ところで、人間の可聴帯域は20Hzから20kHzまでなのだが、これは音程でいうと10オクターブ分に相当している。ちなみに、音程が1オクターブ上がると周波数は倍になる。つまり20Hzの1オクターブ上の音は周波数で言うと40Hz、そしてその1オクターブ上の音は周波数で言うと80Hz。この計算を10回繰り返すと20kHzに到達する。

なお、「イコライザー」の各バンドの数字を見ると数字が等間隔では並んでおらず、そのことをなんとなく気持ち悪く思っていた人はいないだろうか。そのように上のバンドに行くにしたがって数字がグングン大きくなっていくのは、音程が上がるにつれて周波数の数値がかけ算で増えていくからだ。

さて最後に、代表的な楽器のそれぞれの音域は周波数で言うとどのくらいなのかを紹介しておこう。

まずピアノから。これはご存知のとおり、たった1台でオーケストラのすべての楽器の音域をカバーするくらいの音域の広さを誇っている(基本的には7オクターブと1/4)。で、周波数で言うと「27.5Hzから約4kHzまで」だ。

続いて4弦エレキベースでは「41.2Hzから約400Hzまで」で、エレキギターは「82.4Hzから約1.3kHzまで」だ。

なおドラムスは、キックとかベードラとか呼ばれるバスドラムが大体「60Hzくらいから100Hzあたりまで」で、シンバルが大体「4kHzくらいから12kHzあたりまで」だ。

そしてボーカルは個人差があるのであくまでも目安だが、男性ボーカルで「120Hzくらいから800Hzあたりまで」、女性ボーカルで「300Hzくらいから1kHzあたりまで」といったところだ。

このように各楽器の音を周波数でイメージできるようになると「イコライザー」調整がやりやすくなる。参考にしていただきたい。

次回も音についての「豆知識」をいろいろと解説していく予定だ。お楽しみに。

音に関する“豆知識”講座、開講! 第1回「周波数」について

《太田祥三》

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