日産の戦略と戦術、日本発の技術を世界市場へ展開…電動化

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日産自動車に続き、この秋にホンダがEVの『ホンダe』国内販売をスタートさせる。輸入車を中心にCセグメント、Dセグメント、SUVのEVが国内にも投入が増えている。『モデル3』発売以降のテスラの成功をみると、EVに対する市場の見方も変わってきている。

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とはいえ「それはグローバル、とくに中国やEUでの話だろう」という声も聞こえる。国内主要メーカーも電動化や自動化、CASE車両へのコミットメントを発表しているが、日産以外のメーカーの電動化の本気度は微妙だ。

ホンダが欧州展開したホンダeを国内市場にも投入するが、マツダは東京モーターショーで発表した『MX-30』の国内試乗投入は、マイルドハイブリッドからとした。業界ジャーナリストや評論家の記事、SNSなどをみても「中国は、トヨタやVWに勝てない内燃機関より、EVにシフトさせたい思惑がある」「EUではCAFE規制でペナルティを払いたくないからいやいやEVを作っている」といった主張を目にする。

この意見の是非・正否について議論しても意味はない。どれも一部は事実であり、一部は間違いだからだ。企業や市場の動きは、政府の思惑や誰かの趣味嗜好のみで決まるものではない。大抵は多くのステークホルダーの思惑と無数の市場パラメータの総体であり、いわばそれらの妥協・接点によって決まる。「VWはディーゼルゲートで懲りたからEVにシフトするしかなかった」という分析は物事の一面しか見ていない。

日産の「NISSAN NEXT」(構造改革プラン)とその中で謳われるBEVとe-POWER戦略(電動化戦略)について、「本音は中国市場を見た戦略だろう」「儲からないEVで復活は無理だ」という見方をする人もいる。

しかし、NISSAN NEXTでは重要市場のひとつとして日本を挙げている。日産の電動化戦略は日本市場を中心に見ているものだ。日産自動車は8月20日、木村拓哉を起用した新CMを発表した。この発表は、「ALL NISSANミーティング」という社内向けのオンラインイベントで行われたものだ。

このイベントでは開発、生産、デザイン、販売のトップらによるプレゼンテーションもあったが、その中で安徳光郎開発担当常務の言葉を借りれば、そもそも「日産の電動車や自動運転技術は、日本市場で最初に投入しグローバルに展開していった技術」だ。

これまで、グローバルの流れを受けて日本に投入された車種やモデルは少なくない。それでも国内市場で成功するには、サイズを小さくしたり日本向けのカスタマイズが不可欠だった。しかし、逆に、日本市場に受け入れられた技術が世界市場で評価された例は多くはない。各国の事情が異なるので当然といえば当然だが、ストロングHV、CVT、ミニバン、軽自動車、海外市場では見ない技術や車種の特徴が日本にはある。

『リーフ』、プロパイロットはどちらも日本で最初に導入されたものだ。すでに海外でもテスラと比較されるほど話題になっている『アリア』も日本市場から販売が始まる予定だ。リーフはすでにグローバル展開され、e-POWERも『キックス』から海外展開される。グローバルでプレゼンスが薄れる日本企業が増える中、日産は、海外での成功ではなく日本市場から攻める戦略だ。その戦術は、EVや自動運転など新しい技術とおそらくエネルギーエコシステムも一部含まれるだろう。

日産の復活は、過去に戻るのではなく、新しい技術と市場での成功だ。それを日本発で成し遂げようとしている。ぜひ成功させてほしい。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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