【第104回インディ500】佐藤琢磨が語る2勝目の“真実”…「完璧に順序立てて、組み立てができた。ほぼ理想のレース」

インディ500で3年ぶり2度目の優勝を達成した佐藤琢磨。
インディ500で3年ぶり2度目の優勝を達成した佐藤琢磨。全 8 枚

第104回インディ500(23日決勝)で3年ぶり2度目の優勝を果たした佐藤琢磨が日本時間25日夜、日本のメディア向けとなるオンライン会見に臨んだ。そこで語られたのは、通算2勝目が見た目以上に充実した内容によって達成されたことであった。

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決勝レース当日~翌日にもコメントしていたように、琢磨はまず、「現在の新型コロナウイルスのパンデミックという状況のなかでもレースができていることに感謝したいと思います」との旨を強調。すべての関係者や支援者、ファンに向けた感謝の思いを述べ、勝利や成功以前にスポーツを戦えている幸福、その実感をあらためて語ることから会見をスタートさせた。

琢磨のインディ500参戦は今年で11回目。今年の戦前は「期待と自信、不安が入り混じった気持ちでした」という。そうした気持ちの醸成には、前年の戦いの結果と内容が大きく影響していたようだ。

Andretti Autosport所属時の2017年にインディ500初制覇を果たした琢磨は、翌年からRahal Letterman Lanigan Racing(RLLR)でインディカー・シリーズを戦っている。2012年にもRLLRで走っており、今季(2020年)が通算4季目、連続3季目の同陣営での戦いということになるが、復帰初年度、2018年のインディ500では「スピードが乗らなくて、レース結果も散々。どうしようかな、という感じでした」と述懐する。

しかし昨年、2019年のインディ500では3位に入った。「去年の3位は(今年に向けての)大きな自信につながっていました。チームとして大きな飛躍を遂げたと思います」。

ただ、3位とはいえ「トップ争いに加わったのが遅すぎましたし、見かけ以上に大きな差が(当時の)トップ2とはありました」というのも事実。しかしながら一方で、今年は「エアロスクリーン(コクピット防護デバイス=今年から全車装備)によってドラッグやダウンフォースが変化する。それはエンジニアリングサイドにとって大きなチャレンジであり、勢力図が変わるチャンス」とも見ていた。

このあたりを総じたときに、「期待と自信、不安が入り混じった気持ち」という“プラス方向やや強め”な心境になったのは理解できるところだ。「今年(のインディ500)が楽しみでした」とも。

そして迎えた、通常より3カ月遅い8月のインディ500。「ホンダが(例年以上に)大きく背を押してくれました」という要素もあり、琢磨は予選3位という自己最高位を獲得する。「ホンダ勢の上位グリッド独占という、願ってもないチャンス」で決勝レースに挑むこととなった(シボレー勢は予選トップ9に1台のみ)。

その決勝(200周レース)、琢磨は序盤~中盤は「マシンやタイヤの変化の仕方を見たかった」という点を重視したレース運びをしていた。前に行きたいドライバーがいれば、そこは「先行してもらって」、30数周が基本となる各スティント(ピットイン~ピットイン)でのマシン、タイヤの状態変化を正確につかみとることを優先して走っていたのである。

「落ち着いて、プログラムを立てて戦っていました」

その序盤~中盤の成果は、レース終盤にはマシンのセッティングを「変えずに走れました」という好況につながる。それこそが「もともとの僕の方針であり、それができた時点で『今回いけるぞ』と思えましたね」。スコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing/ホンダ)の快勝ムードにも見えた展開のなかで、琢磨は終盤にそれをひっくり返せる着実なプランを遂行していたのだ。

「最後のマシンバランスはパーフェクトに近い状態でした。タイヤをあまり性能劣化させずに走り切る自信がありました」。燃費面でも「ラスト3周はフルパワーで走れる」用意を整えられており、ディクソン陣営が期待していたとされる燃費トラブルの心配もなかった(実際のレースは最終盤に後方のアクシデントでフルコースコーションとなり、隊列スロー走行でのゴールに)。

「最後のスティントのために完璧に順序立てて、組み立てができたレースでした。チームの力が大きかったですね。準備、戦略、そしてミスなくすべてのピット作業をこなしてくれたこと。今回のレースはほぼ理想に近いものでした。いつもこうやって走りたいです」。最高の内容での2勝目達成だった。

前回のRLLR所属時、2012年にはインディ500の最終周でトップを狙ってクラッシュ、ということもあった。それだけに、「自分自身の夢は2017年に実現していましたが、RLLRでインディ500に勝てたことの意味は大きいです。今回の優勝はすべてチームに捧げたいです」とも語る。完璧なかたちでの“ミッション・コンプリート”となった。

現在の琢磨は“母校”であるSRS-F/K(鈴鹿サーキットレーシングスクール-フォーミュラ/カート)の校長でもある。現役ドライバーの校長として、「挑戦し続けることの大切さをレースで見せることができたかな、と思います」。

また、優勝後にマシンの上で“グリコ”のポーズをとったことについては、自身がグリコのサポートを受けていることもあり、これまでのファンとの交流のなかで「やろうと思っていたこと」だそうで、「今回、あれをやりたいがために勝ちました(笑)」。ちなみにエアロスクリーン装着車になったことで、やりやすく(立ちやすく)なった面もあったそうだ。

史上20人目とされるインディ500での2勝目。「伝説的なドライバーの名が刻まれているなかに自分が入るなんて夢にも思っていなかったですし、まだ実感がないです。その凄さが消化し切れていないですね。人から言われたりして、『そうか』と凄さを消化し始めている感じです」。

いつものように朝、スタッフたちと握手することもできないなかで戦った、8月のインディ500。佐藤琢磨は2勝目という記録面はもちろん、それ以上に高い評価を確立する見事な内容で勝利したのである。

《遠藤俊幸》

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