【ルマン24時間】3連覇しても、そこに“強敵”あり…トヨタの村田久武代表「ルマンには毎年タフな状況を与えてもらっています」

ルマンで3年連続総合優勝を飾ったトヨタ陣営(写真はレース前)。
ルマンで3年連続総合優勝を飾ったトヨタ陣営(写真はレース前)。全 8 枚

ルマン24時間レースで3年連続となる総合優勝を飾ったトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)。2日にオンラインでの“凱旋会見”があり、村田久武チーム代表は、依然として難関であり続けるルマンというレースの本質、奥深さについて語った。

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3年連続のルマン総合優勝達成。間違いなく誇るべき結果である。しかしながら、村田久武チーム代表は真摯にその中身を振り返った。

今年は過去2年と違い1-2フィニッシュにはならず。今回、トヨタ「TS050 HYBRID」の2台は1-3という結果だった。今年も優勝は8号車で、中嶋一貴とS. ブエミも3連覇、B. ハートレーはトヨタでの初優勝(自身2勝目)。一方で7号車の小林可夢偉、M. コンウェイ、J-M. ロペスは3位で、彼らにとっての初優勝を達成できなかった。

1-3フィニッシュ、だが他のチームに割って入られたというレース内容ではない。2台ともトラブルに遭遇し、特に可夢偉らの7号車はピットガレージ内での約30分の作業があり、これが彼らの勝機を奪い、1-2を逃す要因となった。

村田チーム代表:「今年はレースが始まってからコース上のデブリの散乱が多く、まず8号車(優勝する中嶋一貴らの組)がブレーキダクトにカーボンのデブリが詰まってブレーキの温度が上がるトラブルに見舞われました。スローパンクチャーもありました」

レース序盤、トヨタ同門対決で先にトラブル対処で1周の遅れをとることになったのは8号車の方だった。ところがレース折り返しの約12時間経過というところで、7号車が約30分の“ガレージイン”をすることになり、形勢は逆転、ほぼ決したといってもいい戦況になる(7号車は4番手まで転落、最終的に3位)。

村田チーム代表:「エキゾーストマニホールドの集合部に補強パッチの板が溶接してあるのですが、7号車はその溶接部の脱落で排ガスが抜けてしまい、過給が上がらなくなったんです」

可夢偉は実際に「直線が遅い」という症状にドライブ中に見舞われ、対策準備ができるまで「毎周10秒遅いし、大丈夫かな、寂しいな」と思いながら走り続けた。そして用意が整ったところでピットに呼ばれて修復作業へ、という流れであった。

村田チーム代表:「確かに3連覇はしましたが、毎年、たとえばレースがスタートしてから10分後、1時間後、3時間後にそれぞれ起きてくる事象がまったく違うんです」

ルマン24時間レースの難しさを端的に示す言葉だろう。今年はコロナ禍で異例の9月開催(通常は6月)だったが、それを踏まえて想定していた温度条件にはならなかった、という要素もあったという。

村田チーム代表:「ルマンには毎年、タフなシチュエーションを与えてもらっているな、と。終わって、ヘトヘトになりました」

ルマンという“強敵”、素晴らしい“ライバル”の存在が嬉しそうにも聞こえてくる、そんな総括コメントではないだろうか。

ともあれ、ルマン3連覇である。同じ土俵に大メーカーが他にいないなどの状況もあるが、冒頭述べたように間違いなく誇るべき結果だ。7号車の修復作業も、可夢偉が「1時間くらいかかるかもしれない」と思ったところを約30分で終え、「想像に比べて、びっくりしたくらい早かった」。そもそもルマンで24時間を終始マシンが完調のまま、トラブルやペナルティが一切なく走って1-2するなど、ある意味では絶対に不可能なことだろう。それでも、真摯に自己研鑽の姿勢を貫くのがトヨタ流、村田流のレース哲学というところか。その克己心の強さには敬服する。

もちろん、村田チーム代表には自陣の強さが増してきている実感もある。それについてはこういう表現で語った。「チーム全体で辛さも、苦しさも、嬉しさも(本当の意味で)シェアできるようになってきたと思います」。

マシン規定が変わる来年以降、トヨタが連覇をどこまで伸ばしていけるのか、期待したい。

LMP1-H規定マシンのTS050でルマンを戦うのは今年が最後。このマシンがどういうマシンなのか、常人には想像もつかないレベルの話ではあるが、一貴と可夢偉は長く付き合った愛車についてこう語った。

中嶋一貴:「言葉で説明するのは難しくもありますが、いちばんの特徴は加速力だと思います。前後のモーターとエンジンで1000馬力、ただ、そういうパワーがあってもジャジャ馬ではない。それがこのクルマのすごいところですね。制御が素晴らしいので、パワーをスムーズに路面に伝えられるし、運転していてもスムーズなんです」

小林可夢偉:「ハイブリッドで、四駆で、いろいろな機能があるわけですが、たとえばコーナーごとにデフのセッティングとかも設定できる。要するに(1周が長く)たくさんのコーナーがあるルマンでも、そのひとつひとつに対し、常に限りなくベストに近い状態にもできるということです。だから自信をもってあの速度で走れるんです」

可夢偉はTS050のドライビングの奥深さも強調していた。また、会見に同席したトヨタの“WEC育成ドライバー”、テストでTS050に乗った経験がある山下健太はこう語る(山下はルマン/WECのLMP2クラスに参戦中)。「TS050は加速力がすごいですし、(自分が乗ってきた)他のレーシングカーと違って電子制御、クルマがやってくれるところがあるので、それを信用して(うまく活かして)走っていかないと速く走れないな、と思いました。ボタン類も多くて、まだつかみきれなかったですね」。

今年のルマンではLMP2クラスでレース序盤に高評価の走りを演じた山下。彼には次期“ハイパーカー期”のルマン/WEC最上位クラス(現在のLMP1クラス)挑戦が期待されている。今の時代、過剰に国を意識すべきではないとも思うが、そのうち一貴、可夢偉、山下のトリオでルマン制覇という可能性も?

TS050のルマン挑戦は終了した。でも、WEC(世界耐久選手権)の2019/2020シーズン最終第8戦が残っている。その舞台は、このシーズン2度目となるバーレーン8時間レース(19年12月にも第4戦としてバーレーン8時間があった)。最終戦ひとつ前のルマンを終えて、LMPドライバーズチャンピオン争いは実質的に一貴組vs可夢偉組の“最終戦を勝った方が王者”状態だ。注目の一戦は現地11月14日決勝の日程で実施される予定になっている。

《遠藤俊幸》

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