【アウディ e-tron スポーツバック 新型試乗】EVを見直すきっかけを作ってくれた…中村孝仁

アウディ e-tron スポーツバック 55クワトロ
アウディ e-tron スポーツバック 55クワトロ全 22 枚

車両重量2560kgである。だいたい重たい電池を腹の下に抱えるのだから、電気自動車はある程度車重があるのは致し方ない。

【画像全22枚】

このバッテリーパックを含んだ腹下の重量は700kgもあるというから、日本の軽自動車より少し軽い重量が腹の下にあると考えると、その重心の低さは容易に想像できる。だから、全高は1615mmもあるのに、まるでスポーツカーのようなコーナリング性能を見せてくれる。そうした点では性格的にはジャガー『I-PACE』に似ている。

クルマ作りはメーカーの哲学が如実に表れるが、ジャガーの場合I-PACEに込めた思いはもしかするとスポーツSUVだったかもしれない。もっともその出で立ちはSUVとはややかけ離れて、どちらかというとホイールベースの長い腰高なスポーティーカーのイメージだ。

そこへ行くと今回のアウディ『e-tron スポーツバック』は、見事なほど既存アウディのクーペ風SUVと軌を一にするデザインである。

回生能力の高さと温度マネージメントの優秀さ

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EVだからと言ってひねくったところがまるでない。勿論、シャッターが付いてグリルを閉じたり開いたりする機構や、カメラを使ったバーチャルエクステリアミラーが付いていたりと、既存のICE搭載モデルと比べて若干の先進性を持たせてはいるが、普通の人が見てもすれ違った程度ではそこまでの先進性は感じられないと思う。要は街に溶け込む電気自動車である。

それにしてもこのアウディのスポーツバックSUVは美しいフォルムをしている…と個人的には思う。近年は自動車を購入する際の大きな要素となっているのがそのデザインにあると言って過言ではなく、このスタイリングに心ときめく人は多いのではないかと思う。

性能的には95kwhのバッテリーと前後に搭載した電気モーター(合計300kw)の組み合わせによって、WLTCによる航続距離405kmの航続距離を稼いでいる。最大トルクは664Nmである。と、この性能自体は前述させたジャガーI-PACEとほとんど変わらない。

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ではアウディが胸を張れるポイントは一体どこにあるのか?ということになるが、直球で質問をぶつけてみたところ、回生能力の高さと温度のマネージメントの優れたところなのだそうだ。

何だ、性能と関係ないじゃん…などと言うことなかれ。実はこれらの能力はすべて性能に直結する。回生能力は最大0.3Gまで電気モーターのみで回生が可能だそうで、これは日常的なブレーキ使用の9割をカバーするという。そして温度マネージメントはユニット全体を液冷してモーターやバッテリーを常に適正な温度に保つことで、高速走行などの直後でも急速充電が可能になるというのだ。

自動車メーカーがちゃんと作ったEVということを実感

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空力性能にも力が入れられて、ボディ下面は当然ながら全面覆われていてさらにそこには空気抵抗を低減するディンプルが付けられている。まるでゴルフボールだ。さらに冷却が不必要な時はグリルシャッターを閉めるとCD値は0.25になるという。

等々、細かく見てくると形はともかくメカニズムは先進性に覆われていて、ちゃんと自動車メーカーが動力だけではない性能を考慮したうえで作っている印象を強く抱かせてくれる。

優れた回生能力はパドルシフトによってコントロール可能で、左のパドルを1段引くと回生モード。さらにもう一段引くとより強力な回生が働くようになる。箱根乙女峠から御殿場に向かう下り道ではほとんどこのパドル操作だけで下ってくることが可能で、その間におよそ5km分程度の回生が可能だった。

因みに同じく箱根大観山からの下りでこれを使ったアウディの広報マンは、何と52kmの回生に成功したという。このパドル操作は日産e-POWERのワンペダルに似たところがあって、ブレーキのペダル操作を減じることが可能。もっともそれでどうなの?という話もあるが。

バーチャルエクステリアミラーは慣れれば効果的

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個人的には初めて使ってみたバーチャルエクステリアミラーだが、まあ、違和感がないと言えば嘘になる。高速のPAから本線への流入時など、通常の物理的ミラーの場合は違和感なくそのミラーの映し出す後方だけを信じて本線へ入って行けるのだが、このバーチャルの場合は何とも信用できなくて、つい首を後ろに向けてしまう。また、駐車の場合なども全面的に信用することが出来ず、やはりつい後ろを振り向いてしまったりもした。

まあ、慣れの問題だとは思う。ただ、普段の癖でつい、サイドミラーのある位置を見てしまうとそこにはただの棒が付き出ているといった印象で、すぐその下にある画面に目を移すことがしばしばであった。映し出される映像はすこぶる綺麗で鮮明だから、慣れれば効果的とは思えた。

すこぶるダイナミックなEV

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驚かされたのはその走りである。静かなことは言うまでもないのだが、その遮音性にはさらに気遣いがあるようで、ロードノイズなどをほぼ完ぺきというレベルで遮断してくれている。だからアクセルペダルに力を込めるとまさにロールスロイスの車名にあるごとく、お化けの加速をしてくれる。

運動性能も極めて高い。ドライブモードは一番スポーティーなダイナミックから、コンフォート、エフィシェンシー、インディビデュアルなど選べるが、ダイナミックに入れておくと、豪快な加速とどしっと構えてピクリともしない見事なコーナリング性能を見せてくれた。腹に抱えた700kgは伊達じゃない。

1時間の試乗時間で試せたのはそんな程度。そして残った印象は、すこぶるダイナミックなEVで、かなりEVを見直すきっかけを作ってくれたような気がした。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習や、シニア向けドライビングフィットネスを行う会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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