9月30日、ショーワ技術体感試乗会「Showa Technology Experience」が、栃木県の塩谷プルービンググラウンドで開催された。
ショーワはシャシーサプライヤーとして有名で、ホンダ系のシャシーパーツを担当するのはもちろんほかの四輪メーカーにもサスペンションパーツを供給している。
Showa Technology Experience
Showa Technology Experienceではサスペンション関係だけでなく、次世代の電動ステアリングなどが装着された数々の車両に試乗したが、もっとも興味深かったのがステアリングとサスペンションの協調制御だった。
市販車でも同様の制御を行うクルマが多いが、ショーワの「インテリジェント エレクトロニック コントロール アダプティブ サスペンション(IECAS)」とステアリングとの協調制御は、すばらしいハンドリングを実現していた。
ステアリングとサスペンションの協調制御に驚く
ショーワの「インテリジェント エレクトロニック コントロール アダプティブ サスペンション(IECAS)」を体感
装着車両は2018年モデルのホンダ『シビック』5ドア。まずは制御を入れない状態で直線路でのスラロームをしてワインディングロードを走るが、ご存じのとおりシビックはノーマルでも高いハンドリング性能を備えている。現行モデルは少々古くなってしまったが、それでもトップクラスのハンドリング。このままでもスポーティさに大きな不満はないが、次にステアリングとサスペンションの協調制御を入れると驚いた。
まるでサスペンションを別物に交換して別のタイヤを装着したかのようなハンドリングに激変したのだ。まずスラロームではステアリング操作に対してノーズの動きがさらによくなり、姿勢変化が穏やかになったせいかロールがかなり少なくなったように感じた。
もっと驚いたのがタイヤのグリップ感だ。ノーマル制御では通常のスポーツタイヤのハンドリングという感じだったが、制御が入るとまるでハイグリップのSタイヤを装着したようなガッシリとした雰囲気になる。実際グリップ性能が上がっている感じで、路面からのインフォメーションがステアリングに伝わってくるため、ワインディングロードでも思い切り攻め込んだ走りができる。
タイヤ変更なしでもアジリティ性能とグリップ感は格段にアップ
ショーワの四輪車用電子制御式ダンパー「IECAS」
現在の市販車でもアダプティブダンパーやアクティブサスペンションは、制御方法や路面状況を検知するには様々な方法が取られている。センサーで前方路面の状況を検知してサスペンションやステアリング制御をするモデルもあるが、ショーワのこのシステムは、そうしたほかの検知ディバイスを使っていない。
車輪速センサーなどの既存のセンサーのCAN情報から車両の挙動をいち早く推定して、減衰力特性や可変特性を変えてドライバーの操作に気持ちよく反応するサスペンションセッティングを作り出しているのが特徴だ。
ショーワの四輪車用電子制御式ダンパー「IECAS」
例えば車輪速センサーは、タイヤにかかる荷重や外乱によってタイヤ半径が変化することを利用してクルマがどのような状態化を判断し、次の挙動を推定するというわけだ。もちろん車輪速センサーのデータだけでなく、車両ECUから前後Gや横G、ヨーレイト、操舵角、エンジントルクなどのデータも利用してドライバーが求めているハンドリングと挙動を作り出している。
このハンドリングのよさは絶妙で4輪それぞれのグリップを感じ取れるほどリニアで、タイヤを変更しなくてもアジリティ性能とグリップ感は2段階くらいアップするように感じられた。
ショーワの「インテリジェント エレクトロニック コントロール アダプティブ サスペンション(IECAS)」を体感
ぜひエンドユーザー向けキットも販売してほしい
ショーワは、こうしたステアリングとサスペンションの協調制御技術を自動車メーカーに販売するだけではなく、エンドユーザー向けにサスペンションキットを販売してほしい。前述のようにこのシステムは新たなセンサーを必要とせず、既存のセンサーからのデータによって制御ができるためサスペンションキットとして十分に魅力的だ。
今回、同システムを装着したのはシビックだったが、ぜひほかの車両にも装着してみたい。トヨタ『86』あたりに装着するとFRらしい軽快なハンドリングと乗り心地の両立が可能になると思う。