【一関 平泉バルーンフェスティバル】競技気球を空中から観察!!…無観客試合?

一関・平泉バルーンフェスティバル(10月16日)
一関・平泉バルーンフェスティバル(10月16日)全 15 枚

10月16日早朝、岩手・一関の空に向け、色とりどりの20機以上の熱気球が一斉に離陸した。ホンダが冠スポンサーとなっている熱気球競技のシリーズ戦「熱気球ホンダグランプリ2020」の第3戦、一関・平泉バルーンフェスティバルの開幕である。

熱気球は推進力を持たず、自発的に行える操縦は上昇と下降だけであとは風に流されるだけという、もっとも原初的な航空機である。一方的に風上から風下に流されていくだけではないの!? と思われるかもしれないが、さにあらず。風向は高度によって案外まちまちで、それが刻々と変わっていく。そんな風をうまく捉まえることによって、気球の針路をコントロールするのである。

16日午前の競技で課されたタスクは4種目。パイロットデクレアドゴール(離陸前にパイロットが複数のゴールから1つを選択。接近してマーカーを投下し、その近さを競う)、ヘジテーションワルツ(複数ゴールの中から1つを選び、マーカーを投下する。パイロットデクレアドゴールと違い、飛行中にどれを選んでもよい)、2回目のパイロットデクレアドゴール、そしてジャッジデクレアドゴール(大会本部が指定したゴールにマーカーを投下する)で構成される複合競技である。これを1度のフライトでこなす。

一関の空に散開した競技気球群を空中から観察した。このときは良い風が吹いており、世界選手権優勝経験者を含む上位選手だけでなく、多くの気球がうまく風を利用して第1のタスクであるパイロットデクレアドゴールに肉薄していた。久々の競技飛行ということもあって、生き生きとしているように見える。

この一関・平泉バルーンフェスティバル、ナンバリングは第3戦だが、今季初開催だ。第1戦の渡良瀬(栃木)が12月に延期、第2戦の佐久(長野)、第4戦の佐賀、第5戦の鈴鹿(三重)と、中止も相次いだ。言うまでもなく、新型コロナウィルス感染症の世界的流行が原因で、日本に限らず世界的にみても航空イベントは中止、延期が相次いでいる。

そんな状況のなかで一関が開催にこぎつけられたのは、「市長さんはじめ一関の皆さんが開催したいという熱意を示してくださっていたこと。空を飛びたいという選手たち、飛ばしたいという大会関係者の思い。そして、このコロナ禍の中で変わらず大会運営やチームを支援していただいている企業、団体の方々の理解があったから」と、熱気球運営機構の町田耕造会長は言う。

一関市はいまだ、コロナ感染症がゼロという自治体。政治家や行政関係者は当然、感染症の発生や蔓延の防止を第一に考える。その彼らがコロナの恐怖が世間を覆っていた4月の段階で、できることなら一関・平泉バルーンレースをやりたいという意思を示していたのだという。

「もちろんコロナ禍中での開催は簡単なことではありません。それをやるために、自分たちがウィルスを持ち込まないために現実的に打てる対策はすべて打ったという自負はあります。2週間体温や体調をチェックするシートを作って大会に関わる人全員が提出するようにしたり、チームのクルーに一人でも感染者が出た場合は安全のためにチーム全体が出場を取りやめる等々、規定も変更した。そんな工夫へのチャレンジができたのも、やりたいという気持ちをステークホルダーが示してくれていたから。気持ちあるからその実現に必要なことを何でも受け入れることができた」(町田氏)

今年の一関・平泉バルーンフェスティバルは例年と異なり、ステージプログラムも出店もない。フェスティバルの会場は基本的にクローズドで、一般の観客は入ることができない。いわば、無観客試合のようなものである。だが、風景は誰の独占物でもない。カラフルな熱気球が空に舞い上がる様子は朝夕の競技時間中、一関の至るところで見ることができる。ヒューマノイド「ASIMO」をあしらったオフィシャルバルーンで飛行してるさなかにも、通学する小学生と思しき子供が下から声をかけ、パイロットがあいさつで応じるといったことが再三あった。大会は18日の午前まで行われる。ドライブがてら訪れてみれば、熱気球の静かな空中バトルを見ることができるかも!?

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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