【日産 デイズ ハイウェイスター 3400km試乗】普通車ライクを目指した軽の長所と短所[前編]

日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション
日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション全 20 枚

日産自動車の軽トールワゴン『デイズ ハイウェイスター』で3400kmほどツーリングを行ったので、インプレッションをお届けする。

【画像全20枚】

『デイズ』は三菱自動車とのコラボレーションで生まれたモデル。2013年に登場した第1世代は三菱自が開発を手がけたが、昨年登場した第2世代は日産開発。日産にとっては吸収合併したプリンス自動車を含め、創業以来初の自前の軽自動車である。シャシー、ボディは新造。エンジンもルノー・日産連合ベースのものに換装するなど、名称とボディ形態以外、第1世代とは別モノ。ごく小規模なマイルドハイブリッドシステムや渋滞追尾機能付きの運転支援システム「プロパイロット」を一部グレードに展開するなど、仕様の点でもかなりの意欲作と言える。

ツーリングを行った車両は自然吸気、FWD(前輪駆動)の「ハイウェイスターX プロパイロットエディション」。カーナビが装着されていたほか、タイヤがノーマルの155/65R14からオプションの165/55R15に換装されていた。試乗ルートは東京~鹿児島周遊で総走行距離は3432.5km。乗車人員は長距離移動時は1名、九州内では1~4名。エアコンAUTO。

では本論に入る前にデイズハイウェイスターXの長所と短所を5つずつ列記してみよう。

■長所
1. レーンキープの精度が高く、長距離移動時に威力を発揮したプロパイロット。
2. 横方向の圧迫感が小さく、トリムの質感も軽随一の前席。
3. 正確なライントレース感が生む良好な高速巡航フィール。
4. これでもかというくらいに設けられた室内収納スペース。
5. パラレルハイブリッドを意識すると伸びる市街地燃費。

■短所
1. 若干振動が多く、低速トルク不足のエンジン。
2. 山岳路ではロールが足りずアンダーステアが強め。
3. 前席に比べて開放感が落ちる後席。
4. 乗り心地が固い。14インチタイヤのほうが良い可能性あり。
5. 長距離では思ったほど燃費が伸びず、タンク容量27リットルだと若干足が短い。

普通車ライクを目指した軽自動車

日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション
自身が初めて直接手がける軽自動車ということで、日産のエンジニア陣が張り切って開発したデイズ。ロングランを通じて得られた印象を一言で表現すると、さしずめ“普通車ライクを目指した軽自動車”だ。

軽自動車はボディサイズや排気量、コストの制約がきつい。もちろん普通車と同じような室内幅は確保できないし、左右輪のスパンを大きく取れないので操縦安定性も確保しづらく、排気量の制約から車体もあまり重く作ることはできない。限られたリソースをどう配分するかによって、バランス型から一点豪華主義までさまざまなキャラクターが生まれてくるのだが、デイズの場合は普通車っぽさの一点豪華主義に感じられた。

高速巡航やコーナリング時のぐらつきの少なさと走行ラインのトレース感の高さ、ステアリングの手ごたえ、運転席からの眺望、ダッシュボードやシート表皮などインテリア素材のクオリティ感、ロードノイズの小ささ、そして運転支援システムの機能性の高さ……これらはデイズが持つ非常に優れた部分だ。特にぐらつき感の少なさは普通車から乗り換えたユーザーが違和感を覚えずに済みそうという点で、競合車との差別化を図れるファクターであるように思われた。

フロントシート。ロングレンジドライブにもそこそこ耐えるクオリティを有していた。シート表皮がもう少し滑りにくい素材であればなおよし。フロントシート。ロングレンジドライブにもそこそこ耐えるクオリティを有していた。シート表皮がもう少し滑りにくい素材であればなおよし。
一方で、その味付けのために犠牲になった部分も、主に操縦性と快適性の部分で見受けられた。高重心のボディのロールを小さく抑えるためにサスペンションはかなり固く、ハーシュネスは常に強めでフラット感も低い。また、前サスペンションが固いためにウェット路面の山道などではアンダーステアが出やすく、ブレーキングである程度前輪に荷重をかけてやらないと不安定になる傾向があった。

これらのネガが出ることは開発陣もある程度承知していたであろう。それを押してでも普通車から乗り換えたユーザーや初心運転者が不安感を抱かないような普段のクルマの動きを優先させたものと思われた。

このところすっかり安物メーカーイメージが定着してしまった日産だが、元々はトヨタに対抗可能な高級車を作れるフルラインメーカー。今日でも経営陣はともかくエンジニアは総じてその部分にプライドを強く抱いている。デイズのエンジニア諸氏の言葉の端々からも普通車メーカー意識がうかがえた。軽自動車自前開発の最後発である日産として、普通車らしさというのは独自性を出すための切り札であったろうし、それがあるから今のところ激烈な競争の中で埋没せずに済んでいるとも言える。

こだわった「軽特有の不安感を抱かせないセッティング」

日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション日産デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション
では、要素別に特性を見ていこう。まずはロングランを支える最重要ファクターであるボディ、シャシーの特性から。

ボディは基本的に良く作り込まれている。軽自動車界ではスズキ、ダイハツは軽量設計にこだわり、ホンダはある程度重量増を来してでも強固さを追求する傾向があるが、日産はホンダ寄りで車両重量は大きい。重い分、大きなギャップや段差を踏んだ時の堅牢性は高く、ガタつき、ミシつきは非常に少ない。フロントウインドシールド脇のAピラーはホンダの『N-WGN』と同じく1本タイプで、三角窓を持つスズキ『ワゴンR』、ダイハツ『ムーヴ』と比較すると横方向の圧迫感の弱さで優位に立つ。

サスペンションは前ストラット、後トーションビームという一般的なレイアウト。前後ともロール角を抑えるスタビライザーバーは持たず、代わりにフロントにコーナー時の内輪側の浮き上がりを抑えるリバウンドスプリングを装備する。

ちょっと爽快に走るレベルではぐらつきが少なく、不安感のないドライビングができるのがセッティングの特徴。ちょっと爽快に走るレベルではぐらつきが少なく、不安感のないドライビングができるのがセッティングの特徴。
その足だが、高速道路やバイパスなどのクルーズでは素晴らしい走行ラインのトレース感を示した。緩やかなカーブを少しステアリングを切りながら通過するときなど、少しもカクカクすることなく、すーっと糸を引くように滑らかな走行ラインで走ることができた。ちょっとした深さであればアンジュレーションの通過した時のゆらつきも非常に少ない。このへんはリバウンドスプリング装備のメリットが十分に出ていた。

山岳路や曲がりくねった地方国道でも、スローペースで走る分にはロールが小さく、ぐらつきをほとんど感じさせない。開発陣は普通車から乗り換えたときに軽特有の不安感を抱かせないセッティングにこだわっていたと語っていたが、まさにその狙いどおりという感じで、オンザレール感は軽としては非常に高いように思われた。普段使いの足グルマで少々無理めの遠出をするといった使い方には非常に適していると言える。

良路での安定性を求めた足まわりの味付け

165/55R15サイズのダンロップ「エナセーブ EC300+」。メーカー指定の240kPa内圧ではハーシュネスが結構きついが、220kPaに落とすとかなり改善する。そのさいの燃費差はほとんどなかった。165/55R15サイズのダンロップ「エナセーブ EC300+」。メーカー指定の240kPa内圧ではハーシュネスが結構きついが、220kPaに落とすとかなり改善する。そのさいの燃費差はほとんどなかった。
ただし、その特性が発揮されるのは良路限定だ。ロール抑制のためにサスペンションが締めあげられている弊害で、荒れ気味の道でタイヤの上下動が大きくなるととたんにフラット感が落ち、足まわりのドタバタが目立つようになる。そういう道では乗り心地も良くなく、揺すられ感が突き上げがかなり強かった。ウェット路面の山岳路などタフなコンディションではフロントサスペンションの沈み込みが少ないため、アンダーステア傾向が急に強まるのもネガティブに感じられた。ドライでもタイトコーナーだと少々きつい。

こうなるくらいならいっそスタビライザーを設け、サスペンション自体はもっと柔らかくしたほうが、コーナリング時にジオメトリー変化を感じながらスイスイと走れるように仕立てられるだろうし、フラット感ももっと上げることができるのではないかと思われた。

もっともこのへんは考え方ひとつ。軽自動車で遠乗りをするユーザーは少数派なのだから、とにかく良路を普通車っぽいドライブフィールで走らせることができれば、ほとんどのニーズはカバーできるとみることもできる。道の悪いところでも乗っていられないほど乗り心地が悪いというわけではないし、ハンドリングについてもゆっくり走れば破綻することもない。ビギナーやサンデードライバーが時々プチ遠出を楽しむという使い方であれば、良路での安定性を求めたデイズの足まわりの味付けはありだ。

ちなみにツーリングを行った個体の乗り心地が悪かったのは、オプションで165/55R15のタイヤがついていたことも一因と思われた。旅の途中で内圧を指定の240kPa(2.4kg/cm2)から220kPaに1割弱落としてみたところ、改善幅は結構大きかったので、標準タイヤならもっと滑らかかもしれない。

レーンキープの精度は日産車でも随一

フロントエンド。ヘッドランプはハイ/ロービーム自動切換え機構付き。フロントエンド。ヘッドランプはハイ/ロービーム自動切換え機構付き。
片道1500kmのロングドライブ中、高速道路や自動車専用道路で重宝したのは、運転支援システムのプロパイロット。乗ったのは今年8月にミリ波レーダーと単眼カメラ併用の新世代品にアップデートされる前の単眼カメラモデルで、現在はさらに進化を遂げていることだろうが、旧世代も機能的には結構良かった。というか、レーンキープのステアリングアシストの精度は電気自動車『リーフ』やミニバン『セレナ』より良かったくらいだ。

発売直後の短時間試乗時に同じ印象を持ち、エンジニアにきいてみたところ、車幅が狭い軽自動車のほうが精度を上げやすいとのことだった。前車追従型クルーズコントロールも速度調節がわりと自然。プロパイロットは自動運転ではないが、両機能を併用した高速巡航はストレスフリーに近いものがあった。バイパスでも同じように使えるが、道路中央にプラスチックポールやフェンスが建設された道路の路肩認識は苦手科目で、片側2車線以上の路線に比べると快適度はやや落ちた。新システムでそのあたりがどのくらい改善されたか興味のわくところだ。

ヘッドランプはハイ/ロービーム自動切換え機構付き。ハイビーム走行中の対向車の認識はほぼ完璧。先行車についてはブレーキランプの照度が落ちた古いトラックなど一部苦手もあったが、こちらも全般的にはわりとよく認識した。アクティブハイビームや自動切り替えビームはカメラの画角が狭いとカーブで先行車を追いきれなくなるケースもあるが、プロパイロットのカメラのカバレッジはわりと余裕があるようで、少なくともパカパカと煩雑にハイ/ローが切り替わるような感じではなかった。

ヘッドランプは照度的には平凡だが、配光性はそんなに悪くない。今回は真っ暗闇の山岳路などを走る機会がなかったので、タフな環境での性能を体感することはなかったが、軽自動車でそういう道を走るユーザーは少数派であろうから、かりに照度が少々低くてもそれがストレスに感じられるケースは多くはないだろう。(後編に続く)

鹿児島・阿久根にて。海は東シナ海。鹿児島・阿久根にて。海は東シナ海。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【スズキ ジムニーノマド 新型試乗】「よくできた万能SUV」だととらえると、評価を誤ることになる
  2. ここまで変わる? ホンダ『アコード』次期型の新デザインを予想
  3. 「胸アツです」「出たら欲しい!」マツダスピリットレーシング第二弾はどうなる? “最強のマツダ3”登場に期待の声!
  4. アウディ6車種858台リコール、燃料漏れ
  5. 【アウディ A5 新型試乗】「ちょうどよい」サイズと、4気筒ディーゼルとして満点の静粛性…中村孝仁
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 居眠り・脇見を監視、「DMS」を義務化…乗用車は2031年から、バス・トラックではすでに普及
  2. 【全文PDFプレカン】日産自動車 長期ビジョン発表会
  3. ホンダの交換式電池、建設現場で実証…高さ385mの「トーチタワー」
  4. EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]
  5. ポルシェはなぜブガッティを手放した? 10億ユーロで売却、選択と集中へ
ランキングをもっと見る