全日本ロードレース ST1000クラス初代チャンピオン高橋裕紀「新型『CBR1000RR-R Fireblade SP』の一番の魅力はトップスピード」

《撮影 先川知香》
《撮影 先川知香》全 10 枚

2020全日本ロードレース選手権シリーズ(JRR)ST1000クラスで、初代シリーズチャンピオンに輝いた高橋裕紀(日本郵便HondaDream TP)の取材会が2020年11月7日、Honda青山本社で開催された。

取材会には、実際にレースで使用された新型「CBR1000RR-R Fireblade SP」ベースのST1000仕様のマシンと共に、高橋裕紀、手島雄介チーム監督が登場。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や台風の影響により、全4戦で争われた今シーズンの振り返りをおこなった。

まず、今年から新設されたST1000クラスで、投入初年度となる新型「CBR1000RR-R Fireblade SP」を駆り、優勝2回、2位1回の速さを見せ、シリーズチャンピオンを獲得した高橋は、開幕戦を次のように振り返る。

「ホンダが本気で作り替えたCBR1000RR-R Fireblade SPのデビューイヤーで、しかもコロナ禍でテストができるタイミングがかなり少ないなか、開幕に向けてみんながイコールコンディションではあったのですが、他のメーカーは今まで蓄積してきたデータがあるなかで、ホンダはマシンのポテンシャルはあるけどデータが無いという状況の、すごく不安な中でのスタートでした。

さらに僕個人としては、去年まで長らくお世話になっていたチームから新しいチームに移籍して、本当にすべてが新しい状況での開幕戦でしたが、雨のなか無事にポールポジションを取ることができました。

決勝レースはかなり気温が高く、あの気温でレースの周回数をワンメイクのダンロップタイヤで走るのは初めてだったのですが、上手く走り切ることができました。レースが終わってみると、多くの選手が転倒していた中、開幕から完走できて、優勝できたというのは大きかったです。」

2戦目についても、「第2戦のオートポリスも、走行が1日霧でキャンセルになってしまったのですが、チームとして1週間前に事前テストを行っていて、その時のデータや開幕戦のデータ、チーム力や経験などのアドバンテージが開幕2連証勝と言う結果に繋がりました。

と言っても、他のチームも走れば走るほどデータが増えて、ホンダ勢はどのチームも新型CBRのポテンシャルをどんどん引き上げてきていて、いよいよ混戦になっていくのかな?という雰囲気はありました。

結果的には独走優勝という形にはなりましたが、序盤、中盤の2番手争いが熾烈になったおかげで引き離せたという形なので、そういう意味では自分たちのチームを含め、この新型CBRのポテンシャルをもっともっと引き上げていく必要があるなと思った開幕2連戦でした。」と話した。

続いて第3戦目については「条件によってはチャンピオンを決められる状況でしたが、正直、第3戦の茂木ではチャンピオンについてはまったく考えていませんでした。

ただ、優勝を目指してしっかり戦った結果の2位で、レース内容的にも2位の名越哲平選手のペースがとても良く、付いていくのが本当にいっぱいいっぱいの中、最後は意地で仕掛けましたが、クロスラインで戻されてしまって…。

あの時点では、その日やれることを全てやり切った結果だったので、それをキチンと受け入れるしかありませんでした。」と振り返る。

そして最終戦となる第4戦については、「最終戦は直前に、自分のミスで怪我をしてしまって…。

予選はタイヤが1セットしか使えないので、普通は最初にまず出て行ってアタックし、中盤に良かれと思ったセットに変更して、さらにタイムが縮まれば御の字なのですが、だいたいはタイヤの美味しいところを使い切った後なので、タイムが上げきれないのが一般的だと思います。

しかし、怪我のせいなのか最初にタイムを出すことができなかった事と、変えたセットが上手くいったので、怪我をしたとはいえ、目の前に8秒台とポールポジションが見える状況だったので、最後の最後まで走った結果、最終ラップにタイムを出せました。

今年、全戦でポールポジションを獲得できなかった事は悔しかったです。
決勝では、ホントにお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。
スタートで、いつもの自分のクラッチ操作にレバー位置を合わせていたのがそもそもの間違いだったのですが、怪我をしていたのでグローブもいつもより大きいサイズを左手だけはめていた事に加え、ギリギリを攻めていたので、握った状態でもクラッチが若干半クラというか繋がったような状態で、レッドフラッグがいなくなり、レッドシグナルをずっと待たなくてはいけない状況でした。
クラッチは熱を持ってしまうと、だんだんくっついてきてしまうので、ちょっとずつ動き始めてしまったバイクをリアブレーキで必死に抑えていたのですが、それでもレッドシグナルが付いたぐらいの時点でバイクがじりじりと動き始めてしまって、もうその時点でこれはジャンプスタートを取られるかな?というのは頭にありました。

フライングをしたら、すぐにライドスルーペナルティを消化した方が、後半で追い上げる時間があるというのが頭にあったので、1周目から、恐らくバックストレートエンドとコントロールラインのところで、23番のペナルティボードが掲示されるだろうと予想をしていました。
しかし、1周目に戻ってきたところでボードを探したのですが、掲示されておらず、バレていないのかな?と思ったのですが、2周目のバックストレートで23番の掲示が見え、この周にペナルティを消化しないともう1周損をすると思い、安全を確保した上で無理矢理ピットレーンに入りました。
そこから追い上げるのですが、チャンピオンを獲得する条件が、恐らく20位以内のチェッカーだったのですが、少し記憶が曖昧だったので、誰まで追い上げればいいんだろうと、どん底に落ちた気分でした。

チームのサインボードで3周目に29位に居ることを知ったのですが、その時点でホームストレートには誰ひとり前に見えない状況で、ホントにどこまで追い上げればいいんだろうという一心でした。
しかし、必死で追い上げているうちにポジションがどんどん上がり、20位になったのですが、それでもチームのサインボードエリアの雰囲気が全く変わっていないように見えたので、20位でもチャンピオンは取れないのかと勘違いして、攻め続けました。

ジャンプスタートはライダー人生で初めての出来事だったので、自分自身もチームもかなりテンパっていて、意思疎通が困難でしたが、そのなかでも無事にチャンピオンを取れたことは良かったです。

今年新設されたST1000カテゴリで、CBR1000RR-R Fireblade SPのデビューイヤー。メインスポンサーの日本郵便さんが毎戦色々な地域から応援に駆けつけてくれているなかでのまさかのミスだったので、本当にチャンピオンが獲れてホッとしているとしか、言いようがない気持ちです。」と話した。

また、今年導入されたCBR1000RR-R Fireblade SPについても、「一番変わったのはトップスピードで、とにかく速いホンダが戻ってきたという印象です。
特に、このST車両で戦うカテゴリというのは、それぞれのバイクが持っている素のポテンシャルが引き出されるカテゴリなので、そこでストレートが速いと言うのは、ものすごく強い武器になります。

ほかにも、ウィングが装着されていることにより、フロントの接地感が向上していたり、旋回性、バイクの軽さなどを感じることができました。
まだまだポテンシャルを全て引き出せているとは思っていませんが、このストレートでの速さや、今までのCBRを遥かに上回るエンジンパワーなど、全体的な総合力が上がっています。」と、そのポテンシャルを絶賛した。

現時点では、来年のST1000クラスへの参戦は未定との事だが、2連覇に向け体制を整えていると手島監督は明言。来季はF.C.C. TSR Honda Franceから、世界耐久選手権へのフル参戦も発表されている高橋は、世界・国内両方でのWウィンを目指す意気込みだ。

《先川知香》

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