Uberで配車する公共交通「ささえ合い交通」はノウハウの宝庫…NPO法人気張る! ふるさと丹後町 専務理事 東恒好氏[インタビュー]

Uberで配車する公共交通「ささえ合い交通」はノウハウの宝庫…NPO法人気張る! ふるさと丹後町 専務理事 東恒好氏[インタビュー]
Uberで配車する公共交通「ささえ合い交通」はノウハウの宝庫…NPO法人気張る! ふるさと丹後町 専務理事 東恒好氏[インタビュー]全 1 枚

2016年5月に京都府京丹後市丹後町で始まった「ささえ合い交通」が高い注目を集めた。

ささえ合い交通は道路運送法に基づく公共交通空白地有償運送で、NPO法人気張る!ふるさと丹後町が運行主体となり、住民がドライバーとなって マイカーを使い、住民だけではなく観光客も運ぶライドシェア型の公共交通だからだ。さらに住民やドライバーの利用はUberアプリを使って配車依頼をすることも話題を呼んだ。また、住民ドライバーの運行管理や車両整備についても注目に値する点が多い。

NPO法人気張る!ふるさと丹後町専務理事の東恒好氏に「ささえ合い交通」の実践と今後について聞いた。

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Uberアプリを使っているが道路運送法に基づいた運行

--:「ささえ合い交通」について教えてください

東氏:京丹後市丹後町の面積は65平方km、人口は約5,000人。高齢者は2,157人で高齢化率は42.3%です。2004年に旧6町の合併で京丹後市が誕生しました。鉄道駅がなく市中心部から最も遠い北端部に位置しています。海に面しており急斜面地に家屋が密集していて集落が分散しています。

ささえ合い交通は「公共交通空白地有償運送」であり、ドライバーが”有償”で運送することができます。東京では「クルー」がサービスを提供していますが、クルーのドライバーは無償で運送しています。違いは道路運送法に基づいているかどうかです。

公共交通空白地有償運送は、公共交通が無いところでしかできないと思っている人が多いようですが、バス・タクシーで十分な公共交通が提供されない場合、公共交通空白地有償運送を適応できます。丹後町には市営バスや民間路線バスが通っています。

道路運送法に基づく公共交通空白地有償運送は、地域公共交通会議での承認を経て国へ登録します。運行検討開始から地域公共交通会議に諮るまでには一般的には1年程度かかりますが、丹後町では半年で承認に至りました。また、京丹後市の市長が認めたことで、丹後町では地域住民のみならず観光客も乗ることができます。

行政から補助金なし。独立採算で運行中

---:Uberアプリを活用した運行管理のメリットは?

東氏:ささえ合い交通の特徴は、利用者がクルマを呼ぶ場合、ドライバーを利用者のところへ向かわせる場合など、すべてスマホを介してUberのシステムを使って行っていることも特徴です。そのため、電話受付やドライバー呼び出しにかかる人的な費用がかかりません。

さらに、住民ドライバーは、Uberアプリで運行できる時は「オンライン」、できない時は「オフライン」の切替えが柔軟にでき、住民ドライバーが送迎できるできないの意思表示が自由にできます。他地域ではドライバーは事務所待機が必要で拘束時間が長くなってしまいがちですが、ささえ合い交通は、どこでも待機ができるため、女性も働きやすいです。

このように、運行管理にかかるコストを抑えることができ、住民ドライバーの拘束時間を低減できるとともに、行政からの補助金を受け取らずに独立採算で運行しています。

電話で配車、現金支払いも可

---:高齢者の利用者が多いかと思います。スマホやクレジットカードを使えない利用者はどのように利用しますか?

東氏:高齢者の代わりに他の人がスマホを操作して、配車依頼を出す代理配車制度をつくりました。また、運行主体であるNPO法人の事務局に高齢者から電話をかけてもらって、事務局がアプリで配車することも行っています。

Uberアプリの決済はクレジットカード決済でしたが、現金支払いも可能になっています。代理配車や事務局が電話で受けた場合は、ドライバーが利用者から現金を受け取り、ドライバーが事務局へその現金を渡すようにしています。

「ドライバー憲法」を制定。安全運行に余念がない

---:住民ドライバーの運行管理の仕方について教えてください

東氏:ドライバーはNPO法人の会員のみならず、会員を通して募った18名です。民生委員2名、自治会長2名、農業従事者、新聞配達の自営業、女性など、日中時間が空けられる人が多いです。

ドライバー憲法十七条を制定して、事故をおこさないように万全を尽くしています。ドライバー憲法には、安全運行、接客、事故対応など十七項目を記しています。

ささえ合い交通の住民ドライバーとして活動する日は、住民ドライバーは運行前の点呼を受けるために、NPO法人の運行管理者宅まで出向いて、運行管理者からアルコールチェックや健康状態の確認を行います。

住民ドライバーとしてマイカーを使うときは、近畿運輸局に登録されたドライバーであることを証明する「運転者証」を車内に掲示します。ドライバーの自分の自動車を使って送迎をするため、ドライバーが行う1年毎の自動車点検整備に加えて、NPO法人が負担して半年に1回点検 を行ってもらい、自動車点検整備結果報告書を提出してもらいます。

保険は、NPO法人が加入する自家用有償運送向けの団体保険で優先的に補償する形になっており、事故の場合ドライバーに補償負担は発生しません。また、 自動車保険は通常、自動車に乗っている間を補償するものですので、自動車に乗る前後の傷害等もNPO法人が加入する団体 保険で適応させています。


町外から町内への移動が問題

---:今後の課題や目標は?

東氏:ささえ合い交通は、交通事業者との営業区域の関係で丹後町内から町外へは運行が可能ですが、町外から町内へ送れません。町外に病院や大型スーパーがあるため利用者は帰りが困っています。そのため、町内の最寄りバス停までバスに乗って戻り、その後はささえ合い交通で自宅に帰るようにしています。

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《楠田悦子》

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