【MaaS体験記】建設現場の移動を効率化「建設MaaS」とは…全国初のオンデマンド貨客混載輸送

建設MaaSの専用車両
建設MaaSの専用車両全 9 枚写真をすべて見る

今回の取材は、大阪市内において株式会社竹中工務店と株式会社NTTドコモが取り組む「建設MaaS」だ。建設業におけるMaaSの取り組みは全国でも初の試みで、ドコモの提供する「AI運行バス」システムを活用し、建設現場における需要に応じた貨客混載輸送を検証する。今回は、実際の専用車両に同乗し、建設現場を移動するヒトの移動と建設資材やお弁当などモノの配送までを現地取材した。

建設MaaSとは

「建設MaaS」は、竹中工務店が大阪・関西万博 People’s Living Lab 促進会議アイデア提案募集で提案した概念で、近年世界で取り組みが進んでいるMaaS(Mobility as a Service)の考え方や技術サービスを建設業に適用し、建設中の「現場」に関わる交通・物流・サービス領域の課題解決をしながら、完成後のまちで実装されるMaaSに活かすことをめざす取り組みだ。

今回の実証実験では、ヒトの移動時間を削減しながら、同時にそのモビリティを利用したモノの搬送を、ドコモの提供する「AI運行バス」システムを活用して利便性高く簡単に行うことを目指すもので、「AI運行バス」では全国初となるオンデマンドによるヒト・モノの貨客混載輸送の検証となる。今後両社は、2025年大阪万博の開催が予定されている夢洲エリアでの大規模開発を視野に入れ、建設資材の移動や物流に加えて、ヒト・モノの移動などサービス面の最適化を目指す。

貨客混載輸送の実車体験

建設MaaS車両(手前がハイエース、奥がプリウス)建設MaaS車両(手前がハイエース、奥がプリウス)
当日は、竹中工務店の社員および協力会社関係者に混じって、竹中工務店の入る御堂ビルから建設MaaSの専用車両に同乗した。今回の車両は2台でワゴン車(ハイエース)と乗用車(プリウス)を利用する。それぞれ「AI運行バス」システムのタブレットを設置しており、コロナ対策用の消毒液などの設置はもちろん、膝上デスクや車酔い軽減眼鏡などもあった。貨客混載ということで、車両の座席一部および荷台にはBOXが設置されている。

通常、建設現場(拠点間)のヒトの移動には、社用車や公共交通機関を利用する。ただし、各拠点は駅などから少し離れている箇所も多く、社用車も台数が限られているなど移動に関してはこれまでにさまざまな課題があった。それを今回の実証実験で、拠点から拠点までをダイレクトにつなぐオンデマンド交通を導入したことで、移動時間の短縮につながり、移動中もまわりを気にすることなく業務に集中できるようになったと、竹中工務店の天雲氏は話す。

建設資材供給サプライヤの拠点である「ミウラ」で建設副資材(養生材・カラーコーン・消耗品雑材など)をワゴン車に載せ、次の経由地である「ほっかほっか亭」に向かう。あらかじめ予約した時間に車両が到着し、積荷を載せていく行程には無駄がない。建設資材を配送する仕組みとして、オンデマンド交通を取り入れている会社はまだ少ないと、竹中工務店の小谷氏は言う。

荷台に建設副資材を積み込む荷台に建設副資材を積み込む

お弁当の配送

今回は、モノの輸送のうち建設副資材のほかにも現場で必要となるお弁当などの飲食物も配送する。実証実験には「ほっかほっか亭」総本部を運営するハークスレイも参加しており、建設現場の人がアプリからメニューを選んで配送を予約することができる。建設MaaSの専用車両で店舗に立ち寄ると、店舗スタッフが駆けつけてお弁当などを荷台に積み込む。およそ5分もかからない時間で積み込み、すぐにお届け先の大阪中部地区FMC(ファシリティー・マネジメント・センター)に向けて出発した。

お弁当を荷台に詰め込むお弁当を荷台に詰め込む
中部FMCに着くと、すぐに予約していた関係者が専用ケースを運んできてお弁当などが入ったケースと交換する。オンデマンド交通を活用したお弁当など飲食の配送は、ヒトの移動と合わせて一石二鳥のサービスであり、ヒトとモノが別々で移動する場合に比べて、とても効率がいい。

お弁当のケースと交換するお弁当のケースと交換する

拠点をダイレクトにつなぐ有効性

実証実験で使うアプリは、ドコモの提供するAI運行バスのアプリを竹中工務店向けにカスタマイズして利用している。実証実験開始後1カ月くらいで、500人弱(およそ関係者の半数)がインストールしており、関係者同士の口コミで徐々に利用者が増えていったと、ドコモの桧皮氏は話す。

日々アンケートもとっており、回答には「もう一度利用したい」や「仕事の効率が上がった」、「移動の短縮ができた」など好評を得ている。通常業務に定着すれば、さらに利用は増える見込みだ。予約制だがオンデマンドで移動できるメリットが、利用者には喜ばれたに違いない。実証実験提供者のほうが驚くくらい高評価が続いているため、実証実験終了後に「建設MaaSロス」が起こるのではないかと逆に頭を悩ますくらいだ。

建設MaaSのアプリ画面建設MaaSのアプリ画面

建設現場の業務効率アップに

2017年から竹中工務店では、クロスファンクショナルな組織としてワーキンググループを発足。建設人口の減少に加えて、20年来業務の刷新ができていなかったことを背景に、今回の新たな取り組みにもつながったと、竹中工務店の有田氏は話す。

これまで拠点間の移動には、社用車と公共交通機関(タクシーや地下鉄)、また徒歩や自転車などさまざまあったが、今回の「AI運行バス」によるオンデマンド交通の活用により、拠点間をダイレクトにつなぐ取り組みにすることができた。

膝上デスクと車酔い軽減眼鏡膝上デスクと車酔い軽減眼鏡
オンデマンドで貨客混載輸送という全国初の取り組みも、竹中工務店のような建設現場の移動や建設資材等の輸送には大いに活用できることも確認ができた。もともと、建設現場ではコロナ禍であろうと在宅勤務というわけにはいかない。建設現場をつなぐオンデマンド交通を取り入れることで、業務をしながら移動ができるなど「オフィスの移動」とも呼べる取り組みとしても注目できる。

大阪万博が開催される2025年には、夢洲エリアへの配送だけでなく、大阪市や関西圏でのモノとヒトの物流が最適化される必要がある。交通渋滞解消にも貢献できるのではとの思いもあり、今回の取り組みはその先駆けとして見ることができる。

■MaaS 3つ星評価
エリアの大きさ ★★☆
実証実験の浸透 ★★☆
利用者の評価 ★★★
事業者の関わり ★★★
将来性 ★★★

坂本貴史(さかもと・たかし)
株式会社ドッツ/スマートモビリティ事業推進室 室長
グラフィックデザイナー出身。2017年までネットイヤーグループ株式会社において、ウェブやアプリにおける戦略立案から制作・開発に携わる。主に、情報アーキテクチャ(IA)を専門領域として多数のデジタルプロダクトの設計に関わる。UXデザインの分野でも講師や執筆などがあり、2017年から日産自動車株式会社に参画。先行開発の電気自動車(EV)におけるデジタルコックピットのHMIデザインおよび車載アプリのPOCやUXリサーチに従事。2019年から株式会社ドッツにてスマートモビリティ事業推進室を開設。鉄道や公共交通機関におけるMaaS事業を推進。

《坂本貴史》

この記事はいかがでしたか?

ピックアップ