CASE、MaaS、スマートシティ2021年の傾向を日本総研に聞く…日本総研 都市・モビリティデザイングループ 船田学氏[インタビュー]

CASE、MaaS、スマートシティ2021年の傾向を日本総研に聞く…日本総研 都市・モビリティデザイングループ 船田学氏[インタビュー]
CASE、MaaS、スマートシティ2021年の傾向を日本総研に聞く…日本総研 都市・モビリティデザイングループ 船田学氏[インタビュー]全 1 枚

2025年から2030年のメガトレンドとされるスマートシティビジネスのトレンド、MaaSやCASEとの関係、失敗や成功要因について、日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 都市・モビリティデザイングループ部長の船田学氏に聞いた。

船田氏が登壇する1月27日開催のオンラインセミナー「スマートシティビジネス2021~HANEDA INNOVATION CITY~」はこちら。

MaaSやCASEの” 実装フィールド”としてスマートシティがメガトレンドに

---:日本総合研究所にはさまざまな部署があります。所属部署の取組みを教えてください。

船田氏:スマートシティやスーパーシティの官民の戦略策定のみならず、社会実装まで携わってきました。例えば、民間企業においては、JR東日本のモビリティ変革コンソーシアムのスマートシティワーキングのご支援や、羽田空港第1ゾーンに関しては鹿島建設等と連携させていただくなど、主に交通事業者やディベロッパーのスマートシティをお手伝いしています。

MaaSの仕事も多く、主に鉄道事業者や自治体等を支援しています。MaaSとは検索、予約、決済を一元化するだけでなく、デジタルな顧客接点を構築していくことだと考えています。

MaaSを花開かせるためには、トヨタ自動車のe-Pallet(イーパレット)などの電動化された自動運転車両を用いて付加価値を付ける必要があり、MaaSはCASEと結びつけて考える必要があるかと思います。

自動運転車両の実用化は2030年時点でも一部だと思われますが、スマートシティエリア内、つまり地域や条件を限定する自動運転レベル4では可能ではないかと考えています。

そのため、MaaSやCASEの” 実装フィールド”としてのスマートシティが注目されています。したがって、スマートシティは2025年から2030年のメガトレンドになると思われます。

そのCASEや MaaSの実装フィールドとして注目されているのが、スーパーシティの候補と言われている会津、夢洲、福岡等や、トヨタ自動車が推進しているWoven Cityになります。

先駆的なスマートシティの失敗事例から学ぶ

---:先駆的なスマートシティの事例を教えてください。

船田氏:スマートシティは2つに分類して考えています。新しく都市を一からつくるグリーンフィールド(夢洲、Woven Cityなど)、そして既存の都市の課題を解決していくブラウンフィールド(会津、福岡など)です。

グリーンフィールドにおける世界の失敗事例をご紹介します。

一つは韓国の松島(ソンド)です。外部環境の変化に対応しきれず、10年以上事業を継続して残れた民間企業がいないような状況で、価格の安いベットタウンになってしまっています。ここから学ぶことは、10年計画では期間が長すぎて外部環境の変化に耐えきれないので、3~5年計画で立てる必要性です。あるいはエリアを区切って、順番に開発を行っていく必要があるでしょう。また、自治体や国と連携するリスクとして、計画が一定の硬直性を持つことも意識しなければなりません。

2つ目はUAEのアブダビ郊外の「マスダールシティ」です。無理やり学生を住まわせましたが、誰もがその街から逃げ出してしまいました。AIで室温がコントロールされるなど、すべてがデジタルでコントロールされ住民が自分自身でコントロールできないなど技術により過ぎてしまった結果です。トヨタ自動車がコンセプトとしているように、やはり「人間(生活者)中心」の視点を忘れてはならないということだと思います。

3つ目はGoogleのカナダ・トロント市での「Sidewalk」の事例です。Googleが市との信頼関係を最後まで築けなかったことや、住民には情報管理の部分で不信感を与えてしまったために、うまく行きませんでした。

アメリカニューヨークの「LinkNYC」では、電話ボックスがありましたがスマートフォンの普及で使われなくなったので、日本でも駅前にあるようなデジタルサイネージを置いて、情報の拠点にしようとしたんです。Wi-Fiもとれるようにしたところ、日本では考えられないような不適切な使い方がされてしまいました。

DXの一部がMaaSだという理解へ

---:MaaSはどのように進化していっていますか?

船田氏:MaaSはディープMaaSとBeyond MaaSに展開していっています。ディープMaaSは交通の情報、動的データ、車両ごとの運行情報などの利活用です。Beyond MaaSは医療、福祉、不動産、エネルギーなど交通領域以外とつながるもので、これはほぼスマートシティの取組みと重なってきています。

検索、予約、決済といったMaaSのみではマネタイズが難しいことや、データ活用が進んだことが今年後半のトレンドかと思います。また新型コロナウイルス流行の影響もありデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に進みました。このような背景を受けて、DXの一部がMaaSだという理解が進んできています。そのため部署名にMaaSを掲げることをやめて、DXに置き換える企業も出てきています。

コロナ禍で在宅勤務やオンライン会議などの働き方改革が進み、通勤利用者が減少しました。鉄道などの交通事業者は、通学以外の需要を作ろうとしておりDXに取組んでいます。

弊社がMaaS支援に取組む過程で、MaaSのモビリティ事業者におけるマネタイズの方法として、3つあるかと考えています。

コロナの影響を仕分けする

---:2021年はどんな年になると予想されていますか?

船田氏:MaaS、CASE、DX、カーボンニュートラルがフィールドとなるスマートシティに落ちてくるかと思います。コロナの影響が一時的なもの、恒久的なものを仕分けする必要があるでしょう。戻るものも多いかと思います。第3波が来る前は、電車利用が大阪では9割、東京でも8割5分まで戻っていました。したがってアフターコロナに合わせた大きな投資を行うことは危険な場合もあります。

船田氏が登壇する1月27日開催のオンラインセミナー「スマートシティビジネス2021~HANEDA INNOVATION CITY~」はこちら。

《楠田悦子》

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