地域交通の課題は優秀な人材不足と交通事業者側主導の取組み…電脳交通 取締役 北島昇氏[インタビュー]

地域交通の課題は優秀な人材不足と交通事業者側主導の取組み…電脳交通 取締役 北島昇氏[インタビュー]
地域交通の課題は優秀な人材不足と交通事業者側主導の取組み…電脳交通 取締役 北島昇氏[インタビュー]全 1 枚

2020年1月にNTTドコモ、JR西日本、Japan Taxi、BBTから2度目の資本調達を行い、更に10月には三菱商事、第一交通、エムケイ、JR東日本、阿波銀行、伊予銀行から総額5億円の資金調達を完了した電脳交通。タクシー業界や地域交通をどのように捉えているのか、株式会社電脳交通取締役の北島昇氏に聞いた。

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タクシー側の立場になって考えるスタンス

---:他のタクシー会社との関係は?

北島氏:電脳交通は徳島出身の近藤洋祐が2015年に設立し代表取締役を務めています。彼の祖父が徳島で吉野川タクシーを経営しており、近藤はアメリカ留学後に祖父の会社を継ぎました。そのため近藤は、自社のような小さな会社の存続のために貢献したい、タクシー側の立場に立って考えています。

主な事業は、クラウド型配車システムと配車センター委託サービスです。

他のタクシー会社からは、近藤は地方の小規模タクシー会社の2代目として、「頑張っている。自分たちの仲間だ」とかわいがっていただいています。

タクシー会社の倒産が相次いでいる

---:タクシー業界の課題は?

北島氏:タクシー業界は、2019年の全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、1~10台規模の法人タクシーが業界全体の70%を占めます。法人タクシーの倒産が相次いでおり1年間で40社が減少し、車両台数が4,000台減少しました。

今後も新型コロナウィルスの影響で、大きな打撃を受けて倒産する会社が増えるでしょう。タクシー会社の財務状況は、車両台数が20台の会社で約1億円の売上です。そこから給料、車両代などを払うため、ITに投資する余裕がないのが実情です。

タクシー配車アプリだけでは解決策にならない

---:タクシー配車アプリをどう捉えていますか?

北島氏:タクシー配車アプリは注目されていますが、アプリでの配車は日本全国でわずか2~3%です。タクシー配車アプリ会社の売上も1~2億円の世界で、事業としても苦しいはずです。他社のタクシー配車アプリを使って、配車サービスを提供している会社は、ただでさえ経営が苦しいのにもかかわらず、手数料を支払う必要があります。さらに、タクシー配車アプリは日本国内でも乱立していて、同業者の中で消耗してしまっています。

頭脳集団を地方に集めたい

---:メイン事業の配車システム・配車センター以外に取組んでいる、地域交通ソリューションとは?

北島氏:地域交通に必要な3つの注力領域で電脳交通が取組んでいるものです。その3つは
1.交通空白地帯や観光地における地域交通課題の解決支援
2.交通以外の生活・観光サービスとの連携
3.売上向上やDX推進などタクシー事業者さまへの支援
に分けられます。

地方の交通の問題は、ドライバー不足ではなく、優秀な人材の不足だと考えています。海外では年収2,000万の専門家が地域交通の計画を立てています。日本にも優秀な人材は他業種にたくさんいます。東京に一極集中している頭脳集団を地方に集めて、地域交通を再構築する必要があると考えています。

地域交通の再構築の際に必要な視点は、交通事業者側の視点です。地域交通は、住民の声を聞いて、自治体がサービスの設計をするため非効率になりがちで、無理な運行をタクシーやバス会社は強いられがちで、持続可能性を欠いたものが多いような状況です。

交通のプロであるタクシー会社などサービス供給側が、地域の移動をコントロールしていく方が、持続可能で質のよいサービスを提供できると考えています。地域の移動をコントロールするためには、自治体や他企業からの運行委託では、うまく調整ができません。電脳交通がフロントラインに立つなど、動きやすいポジションを確保することが大切だと考えています。将来的には、国や自治体から直接的に投資を受けたい。

このような考え方のもと、既に1年以上前から兵庫県篠山でタクシーの定額制パッケージ、山口県阿東ではタクシー会社を2社8日間買い上げての乗り放題サービス、広島県尾道でグリーンスローモビリティの配車などの実証実験、その他の地域でも交通空白地帯における乗合タクシーなどの取組みを行ってきました。

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《楠田悦子》

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