米中と異なる日本のあるべきスマートシティ像…アクセンチュア・イノベーションセンター福島 中村彰二朗氏[インタビュー]

米中と異なる日本のあるべきスマートシティ像…アクセンチュア・イノベーションセンター福島 中村彰二朗氏[インタビュー]
米中と異なる日本のあるべきスマートシティ像…アクセンチュア・イノベーションセンター福島 中村彰二朗氏[インタビュー]全 1 枚

日本のスマートシティのパイオニア「会津若松市スマートシティ」。東日本大震災がきっかけで始まったプロジェクトは今年で9年を迎える。会津若松に移住し、現場密着で日本のあるべきスマートシティ像を追求するアクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括 マネジング・ディレクターの中村彰二朗氏に聞いた。

中村氏が登壇する、1月26日開催のオンラインセミナー「会津若松・高松・福岡のスマートシティ、スーパーシティ戦略」はこちら。

市民が自分の意志でデータを出し活用する「オプトイン」が成功のカギ

---:会津若松のスマートシティ推進において大切にしている考え方を教えてください。

中村氏:スマートシティでは情報が大切になります。個人のスマートフォンやウェアラブルからの情報、個人が所有するコネクテッドカーから発される情報など、スマートシティのすべての情報の大本は市民で、市民が自分の情報を使うことを許容しないと良いサービスは生まれません。

Googleの兄弟会社であるSidewalk Labs(サイドウォークラボ)は、カナダ・トロントのスマートシティ事業を断念しました。民間会社に自分のデータを預けることについて、地域・住民からの賛同を得ることができませんでした。市民からの自由意志(オプトイン)ではなく、民間企業が未承諾の情報を使おうとしたこと(オプトアウト)が問題だったのではないかと考えています。

アクセンチュアが目指す日本のスマートシティは、この街を住みやすい地域にするために、市民が自分の意志でデータを出し活用するオプトインを大切にしています。データに対する日本人の扱い方や感じ方を許容するような社会です。

プラットフォームの運営体制は各国で異なるのではないか

---:プラットフォームの運営体制はどのような形が望ましいのでしょうか?

会津若松の場合は、民間企業のアクセンチュアに直接データを預けるのではなく、地元の産官学が参画するスマートシティ会津という地元の法人を作っています。また行政中心、企業中心ではなく、あくまで「市民中心」でスマートシティの取組みを推進しています。

アメリカや中国はGAFAやBATHの巨大企業がプラットフォーマーとして運営し、日本や欧州は産学が連携し地域のプラットフォームを運営するかたちが主流になるのではないでしょうか。

シェア、自動運転、MaaSには21世紀モデルのアプローチが必要

---:シェアサービス、自動運転、MaaSをどのように考えますか?

中村氏:デジタルは、パソコンやデータなどといった存在を、人々が気にしなくなった状態が一番良い状態だと言えます。パソコンに向かって人がキーボードを叩いていたり、自動運転もハンドルが付いているのにもかかわらず、ハンドルを触らずに前を向いて乗ったりしている状況は発展の途中にあるといえます。

シェアカーの話は単発でよく上がってきますが、シェアというものはデータから見ると、最終フェーズにあるサービス形態だと考えています。データをフラットにオープンにして、つないで、許容できるようになれば、いろいろなものをシェアできるようになるかと思います。スマートシティの中の街づくりではこの順番で考えていかなければいけないと思います。

MaaSの自動運転の実証実験が日本でも全国各地で行われています。しかし、街の中にモビリティがあることを忘れていて、モビリティばかりに焦点を当てがちではないでしょうか。自動運転のプロジェクトだけでは、サービスは全く成立しないと思います。自動運転の車両は非常に高額で、自動運転を走らせることの方がかえって費用が高額になってしまいます。二次交通のバスが運行できないから自動運転を活用しようという考え方は安直ではないでしょうか。

これまで各社が追求してきたモビリティスタイルは20世紀モデルではないでしょうか。21世紀モデルは市民や地域が追求するサービスに対して、企業がどのように参入するかを考える必要があると考えます。街全体のモビリティをどうするかという中に自動運転やウォーカブルを取入れたり、MaaSを取入れることを考えていく必要があるでしょう。

中村氏が登壇する、1月26日開催のオンラインセミナー「会津若松・高松・福岡のスマートシティ、スーパーシティ戦略」はこちら。

《楠田悦子》

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