【ホンダ ヴェゼル 新型】「モデルチェンジというよりリファクタリング」…開発責任者 岡部氏

ホンダ ヴェゼル 開発責任者の岡部宏二郎氏(本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター チーフエンジニア)
ホンダ ヴェゼル 開発責任者の岡部宏二郎氏(本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター チーフエンジニア)全 16 枚

新型ホンダ『ヴェゼル』のデザインや機能にはどんな狙いがあるのだろうか。商品開発責任者の岡部宏二郎氏(本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター チーフエンジニア)に話を聞いた。

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岡部氏は、初代ヴェゼルの車体研究プロジェクトのリーダーを務め、その後のマイナーチェンジでも常に設計にかかわっている。今回のモデルチェンジでは、ディメンションは大きく変わっていないものの、内外装の質が向上し、ハイブリッドシステム「e:HEV」採用による走りの改善、ホンダセンシングやホンダコネクトが最新バージョンでほぼフル搭載となった。

装備が過剰になっていないか?という反省があった

----:今回のモデルチェンジで、一番こだわった点を教えてください。

岡部宏二郎氏(以下敬称略):私は初代ヴェゼルから設計にかかわってきており、自分でも所有していた車でもあります。ユーザーからの声に加えて、自分でも反省を含めてここをこうしたい、といった思いがずっとありました。

モデルチェンジに際して心掛けたのは、時代のニーズにあわせて今風のクルマにしたいという点です。ヴェゼルはクロスオーバーSUVとしての基本性能を追求していましたが、コンパクトSUVブームの競争の中で、やや装備が過剰になっていないかという反省がありました。カタログでの差別化のためのだけの数値の追求に意味があるのかと疑問も持っていました。

----:具体的には、どんな課題があったのでしょうか。

岡部:たとえばリアの荷室。容量の数値だけ追い求めると、中に段差ができてしまう、開口部が出し入れしにくい形状になってしまう、ゲートの開け閉めがしにくくなってしまう、さらには、後席空間やシートが犠牲になる、といった本末転倒なことになっていないか、という自問です。

一方、グローバルでは384万台もの累計販売実績があります。世界中の人に長く愛されているクルマとして残すべき変わらない価値もあると思っています。SUVとしての信頼性や力強さなどです。これらを残しつつも、時代にそぐわない部分や反省点は思い切って変えていきました。

時代のニーズや使える技術を最大限に生かし、各部の適正化を進めたという点では、正常進化と言えます。狙いそのものは初代から変わっていないつもりですが、改善や適正化の手法はまったく新しいものを採り入れてリファインしました。

----:一度完成したものを、最新技術や手法で機能や性能を改善し構造の無駄を省き、設計の見通しをよくする。エンジニアリングでいうリファクタリングですね。

岡部:はい。見た目もかなり変えましたが、ヴェゼルっぽさは残っていると思います。それでいて今の時代に合ったライフスタイルを提供できるクルマを目指しました。

----:ライバルと思っているクルマはありますか?

岡部:コンパクトSUVはどのメーカーもラインナップしており、グローバルでも激戦区のセグメントです。なので、どのクルマがライバルということはありません。北米は『CR-V』などもう少し大きいサイズが人気ですが、日本や欧州ではBセグメントからCセグメントの中間くらいの車種が増えています。

今のSUVは街乗りからロングドライブなど十分な性能を持っているので、コンパクトSUVはグローバルでもスタンダードになるのではないでしょうか。このサイズはディメンションにまだ自由度があります。ホンダの個性を出しやすいセグメントでもあるのです。

クルマにおけるデジタルの価値も考えた

----:時代に合ったというのは、クルマの購入層でいうとどんな人たちになるのでしょうか。

岡部:「ジェネレーションC」と呼んでいますが、新しい価値観を持ちシンプルで前向きなライフスタイルを大事にする人たちです。クルマに限らず、得られる体験やプラスアルファの価値を求めているような人です。この価値観は年齢や性別、家族構成、職業などマーケティング的な属性ではくくれません。幅は広くなりますが、ヴェゼルはもともと若い世代からファミリーなど幅広いオーナー属性を持つクルマです。

----:そういう人たちに「刺さる」ポイントや機能は、今回のヴェゼルではどのような部分ですか?

岡部:今の人たちは、燃費や馬力といったスペックではクルマを選びません。どんな体験が得られるのか、自分のライフスタイルに合っているのか、といった点を重視すると思っています。

通信モジュールは全車装備として、オプションのホンダコネクトディスプレイを装着すれば、アプリサービスや各種コネクテッドサービスが受けられます。利用できる機能は、『ホンダe』でも提供しているリモートキーやアプリセンターの利用、地図自動更新などですが、アプリは順次追加予定です。購入後もサービスやアプリは拡張されていきます。

コネクテッド機能はEVであるホンダeがリファレンスモデル的な位置づけですが、それとほぼ同じ機能が他の車種に展開されるのはヴェゼルからとなります。

スマホだけでなく家電や家もコネクテッドになっているのに、実はクルマだけ対応が遅れています。クルマのリアルな価値、アナログな価値とともにデジタルの価値も同じように考えました。

ホンダセンシングも制御ソフトウェアの改良によって、ほぼすべての機能が改善されています。先代モデルからは、後退の誤発進抑制装置、近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビームが追加されています。

電動車でも楽しい運転を

----:e:HEVが今回のモデルチェンジで搭載されました。ヴェゼルのe:HEVは、『フィット』や『インサイト』と違いはあるのですか?

岡部:当然、ヴェゼル用にチューニングされたe:HEVです。SUVとしての力強さも必要なので、フィーリングはかなり変わっているはずです。モーター走行範囲をさらに広げて、運転のしやすさを向上させました。4WDもこだわっています。ハイブリッドの4WDには、リアにモーターを追加して駆動させるものが多いですが、このタイプの協調制御は難しく、4WDといいながら限られた条件でしか後輪を駆動させないことがあります。

ヴェゼルはプロペラシャフトとフル電子制御のディファレンシャルによって、常に4輪を制御しています。この制御はガソリンよりモーターのほうが各段に制御しやすいので、走行性能や運転のしやすさには自信があります。

----:なるほど。電動車は、エンジンやトランスミッションがどう変わったかよりも、ソフトウェアや電子制御がどう進化したかがひとつのポイントになりそうですね。しかし、全部電子制御というのは運転を楽しむという点でどうでしょう。

岡部:電動車の運転がつまらないということはないと思います。ヴェゼルは、ドライブモードと減速セレクターの組み合わせを手動で切り替えることで、加速も減速を細かく調整できます。ステアリングのパドルで回生ブレーキの強さを切り替える減速セレクターを組み合わせると、エンジンブレーキのようなフットブレーキを使わない減速が可能です。

たとえば、ドライブモードをECONモードにしてセレクトレバー(シフトレバー)をBレンジにすると、回生ブレーキの介入が大きくなり、アクセル操作での速度調整がしやすくなります。SPORTモードでBレンジにすると加速も減速もよりダイレクトになります。

すべてクルマにまかせても快適ですが、運転操作を楽しみたい人は積極的にモータートルクや回生ブレーキを制御することができます。

----:確かにホンダeは、SPORTモードでパドル操作を積極的に行うと非常に楽しいクルマでした。渋滞や高速道路はホンダセンシングのアシスト機能、ホンダコネクトのアプリケーションを活用すれば、幅広い年齢層、今風のカーライフに対応しそうですね。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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