[カーオーディオの素朴な疑問]サブウーファーのボックスはどこに置いてもOK?

ユニットサブウーファーの一例(フォーカル)。
ユニットサブウーファーの一例(フォーカル)。全 3 枚

「カーオーディオは何となく分かりづらい…」、そう感じているドライバー諸氏に向けて当特集を展開してきた。今回はその最終回として、「サブウーファー」の設置場所に関する解説をお届けする。「サブウーファー」の置き場所は、どこでも良いのか否か…。

ホームオーディオでは、スピーカーと対峙するのが普通だけれど…。

ホームオーディオでは、スピーカーと対峙して音楽を楽しむこととなる。つまりスピーカーは、リスナーの前方に設置されるのが普通だ。しかしカーオーディオではドアスピーカーとは正対できず、「サブウーファー」に至っては正対はおろかドライバーの前方に置くことも、多くの場合不可能だ。シート下に設置されたりトランクルームに置かれたりする。さて、ドアスピーカーはドライバーの前方にあるからまだ良いとして、「サブウーファー」は真下だったり遙か後方であったりしても良いのだろうか。

本当のことを言うと、「サブウーファー」も目の前に置けた方が良い。だが、サブウーファーボックスはある程度の大きさとなるので、置ける場所が限られる。そしてこのことは、ステレオ再生を良好に行おうとするときに不利要因と成り得る。超低音だけが違う方向から聴こえてきて、しかも設置場所が遠くなるほど音が遅れて耳に届く。結果、ビート感が不自然になったり音像の立体感も落ちてしまう。

しかし、「サブウーファー」が真下にあろうとも、ましてやより遠いトランクルームに置かれようとも、「サブウーファー」から放たれる超低音がその他の音とズレないように、さらには前から聴こえてくるようにすることも可能だ。ゆえに、今回のテーマである「サブウーファーはどこに置いても良いのか」という問いに対しての答はズバリ、「良い」だ。これが結論となる。

なおこのように「サブウーファー」が放つ超低音が目の前から聴こえてくる状態のことは、「低音の前方定位」と呼ばれている。さて、このようなことが可能となるメカニズムとは…。

ユニットサブウーファーの一例(モレル)。

高音から低音までが上手く“繋がる”と、超低音も前から聴こえてくる!

「低音の前方定位」を実現させるためには、愛車のカーオーディオシステムにある程度のサウンドチューニング機能が搭載されている方が有利だ。そうだと、より確実にそして合理的に「低音の前方定位」を実現できる。で、それを駆使すると、フロントスピーカーから放たれる音と「サブウーファー」から放たれる音とが、上手く繋がる。つまり、高音から超低音までが一体となる。そうなると、超低音も目の前から聴こえるようになる。

さて、高音から低音までが上手く繋がると、なぜに超低音も前から聴こえてくるようになるのかと言うと…。そのメカニズムは以下のとおりだ。

音は、音程が高くなればなるほど出どころが分かりやすくなり、低くなればなるほどどこで鳴っているのかが分かりにくくなる。で、カーオーディオは、各スピーカーがそれぞれ異なる場所に設置されるのだが、もしも高音から超低音までが上手く繋がると(一体化すると)、音の出どころがもっとも分かりやすいのはツイーターから放たれる高音なので、その他の音もツイーターから聴こえているかのように錯覚する。

さらには、高音から超低音までが上手く繋がると、音像が立体的に再現されるようになる。そうなると、スピーカーの存在感が弱まっていく。音がスピーカーユニットから出ているという感じが希薄になり、ただサウンドステージが目前で展開されることとなる。このようなメカニズムにより、「低音の前方定位」が実現されることとなるのだ。

また、音は音程が高くなるほど真っ直ぐに進もうとする性質が強くなる。逆に低くなるほど障害物があってもそれを回り込んで進めるようになる。なので「サブウーファー」をトランクに置いたとしても、超低音はシート等を回り込んで耳に入ってくる。このような性質であることも、「低音の前方定位」の実現の一助となっている。

ユニットサブウーファーの一例(DLS)。

「クロスオーバー」と「タイムアライメント」を駆使すると…。

続いては、「低音の前方定位」を実現させる方法を解説していく。あると役に立つサウンドチューニング機能とは、以下の2つだ。1つが「クロスオーバー」でもう1つが「タイムアライメント」だ。

まず「クロスオーバー」とは、音楽信号の帯域分割を行うための機能だ。当機能を活用すると「サブウーファー」を導入した際に、「サブウーファー」とドアスピーカーのそれぞれの“役割分担”を設定できる。例えば、境目を80Hzに設定し、ドアスピーカーには主に80Hzより上の信号を、「サブウーファー」には主に80Hzより下の信号を送れるように設定できる。

なお、もしもこのような設定を行わないと、超低音が「サブウーファー」とドアスピーカーの両方から聴こえてくる。そうすると音がダブって聴こえ、音が上手く繋がらない。しかし「クロスオーバー」を掛ければ、ダブりがなくなり一体感を出しやすくなる。

そして「タイムアライメント」を活用すると、各スピーカーから放たれる音の到達タイミングを揃えられる。例えば「サブウーファー」はドライバーの130cm後方にあり右のドアスピーカーはドライバーの80cm前方にあったとしよう。で、「タイムアライメント」を使うと、この距離差をなくすことが可能となる。右のドアスピーカーの発音タイミングを遅らせて、あたかも前方130cmのところにあるかのような状態を作り出せるのだ。

ちなみにこれらのサウンドチューニング機能は、高度なメインユニットやプロセッサーを導入すれば必ず搭載されている。または一般的なナビにも、それぞれが搭載されている機種がいくつかある。各機能が簡易的な内容になっていることも多いが、将来的に「サブウーファー」の導入までを視野に入れるのであれば、これら機能が搭載されている機種を選んでおくと有利だ。

とはいえ、これらの機能がメインユニットに搭載されていなくても、「サブウーファ−」を導入するメリットは味わえる。しかし、チューニングを行えるようになると一層楽しくなることもまた確かだ。「サブウーファー」を導入する際には、チューニング機能が充実したメインユニットもしくはプロセッサーも導入すると吉と出る。覚えておこう。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

今さら訊けない“カーオーディオ”の素朴な疑問 Part6「サブウーファー編」その5「ボックスはどこに置いてもOK?」

《太田祥三》

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