“5%ルール”で「二輪車のような航空機」開発を目指すヤマハのエンジニア

「二輪車のような航空機」の開発に取り組む金城さん、広瀬さん、竹之内厚志さん(左から)
「二輪車のような航空機」の開発に取り組む金城さん、広瀬さん、竹之内厚志さん(左から)全 3 枚

ヤマハ発動機が配信するニュースレターから、注目のトピックを紹介。今回は、ヤマハの研究部門に存在する「エボルビングR&D活動」(通称5%ルール)を活用して「二輪車のような航空機」の開発を目指すグループの活動をピックアップ。以下、全文掲載。

「二輪車のような航空機」を目指す小さな一歩

当社の研究部門には、通称5%ルールと呼ばれる「エボルビングR&D活動」という制度が存在します。この制度は事業に直結した日々の研究活動とは別に、就労時間の5%を自発的な研究に充てることでエンジニアとしての幅をひろげていこうというもの。「二輪車のような航空機」の開発を目指すグループは、その5%の時間をフルに使って、飛行可能な自作飛行機キットの組み立てにチャレンジしています。

自発的研究を奨励する「5%ルール」

 「一歩一歩、積み上げるかたちでここまで来ました。そこに関しては、誇らしさも感じています」。そう話すのは、当社FSR開発部の金城友樹さん。金城さんらは職場近くの倉庫を借り、4年前からこの秘密基地でご覧の小型飛行機の組み立てを進めてきました。

 当社の研究部門には、通称5%ルールと呼ばれる「エボルビングR&D活動」という制度が存在します。これは事業に直結した日々の研究活動とは別に、就労時間の5%を自発的な研究に充てることでエンジニアとしての幅をひろげ、そのパワーでイノベーションを創出していこうというもの。そうした自発・自律的な研究活動の中から、2018年には 電動トライアルバイク「TY-E」が誕生しました。

 「エボルビングR&D活動は、志を抱いている人の情熱の入り口。そして僕らの志は、『二輪車のようにパーソナルでスポーティな航空機』の開発です。その目標を実現する第一歩として、まずは自分たちの手で自作飛行機キットを使った組み立てに取り組むことで、航空機の設計やつくり方の基本の習得に励んでいます」

試運転を終えて機体への搭載を待つエンジン試運転を終えて機体への搭載を待つエンジン

オートバイのように付き合える飛行機を

 機体はすでに胴体まわりの組み立てを完了し、昨年は手づくりのダミーフレームにエンジンを搭載して試運転まで漕ぎつけたメンバーたち。今年はいよいよそのエンジンを機体に搭載して、残る主翼づくりに着手します。「そこまでが2021年の計画。その後は飛行試験に向けて性能検査や書類整備を行い、許可を得て飛行させる計画です」

 飛行可能な機体を自分たちの手で組み上げることで、航空機の図面を描ける知識を手に入れ、また解析技術や整備スキルも身につける。壁に当たって頭をひねった分だけ、また慣れない作業で手を動かした分だけ、はるか遠くに見える「二輪車のような航空機」の開発の実現に向かって、確実に近づいている感覚を得ながらのチャレンジです。

 「オートバイでのツーリングは、一人でもみんなでも楽しめますよね? それからレースのように競い合う喜びや、自分らしくカスタムする愉しみ、ガレージでうんちくを語り合うことだって魅力の一つ。僕らが目指しているのは、そんなふうに付き合うことができる飛行機です。海外には、もうそうやって楽しんでいる人たちがいます」

 メンバーの一人、広瀬量平さんが見せてくれたデザインスケッチには、機体にまたがって操作するパイロットと、タンデムシートにまたがるパッセンジャーの姿が描かれています。「空想のように思えるかもしれませんが、思い描かなければ生まれない。僕らはそんな乗りものを生み出したいと考えています」。朝日が差し込む物流倉庫は、夢の研究室。何かが生まれそうな空気がゆっくりと流れています。

自作にこだわり、操縦席のシートなど部品製造にもトライ自作にこだわり、操縦席のシートなど部品製造にもトライ

夢と志を持って、ゼロから航空機開発に挑むグループのリーダー金城さんは、京都大学在学中から人力飛行機づくりに取り組み、入社後は当社の人力飛行機同好会「チームエアロセプシー」で飛行距離の世界記録樹立を目指した経歴の持ち主です。現在は研究部門に在籍していますが、かつては産業用無人ヘリコプター「FAZER」の設計を担当したこともあります。ほとばしる情熱を発しながら、それでも急ぐことなく堅実に一歩一歩前進しようとするその姿はまさに純粋そのもの。ものづくりの原点を目の当たりにした思いでした。(企画グループ: 海野 敏夫)

《協力 ヤマハ発動機》

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