マクラーレンオートモーティブ（McLaren Automotive）は3月23日、「スポーツ・シリーズ」の生産を終了した、と発表した。最終モデルのマクラーレン『620R』は現在、欧州、中東、アフリカで納車が行われている。
スポーツ・シリーズの出発点は2015年に発表された570Sクーペ
マクラーレン 620Rスポーツ・シリーズは2015年4月、米国で開催されたニューヨークモーターショー2015で初公開されたマクラーレン『570Sクーペ』が最初のモデルだった。『P1』や『650S』がスーパーカーセグメントに属するのに対して、570Sクーペは、マクレーレン初のスポーツカーセグメント車として登場した。
570Sクーペのボディサイズは、全長4530mm、全幅2095mm、全高1202mm。室内は2シーターで、カーボンファイバー製のシャシーを採用する。F1のノウハウも応用し、エアロダイナミクス性能を追求していた。
マクラーレン 620R570Sクーペのミッドシップに搭載されるエンジンは、650S用の3.8リットルV型8気筒ガソリンツインターボを専用チューンした「M838TE」型ユニットで、部品の30％を570Sクーペ専用設計とした。
最大出力は570ps/7400rpm、最大トルクは61.2kgm/5000-6500rpmを獲得。トランスミッションは、7速「SSG」（シームレス・シフト・ギアボックス）を組み合わせた。乾燥重量は1313kgと軽量に抑えられ、0～100km/h加速3.2秒、最高速328km/hのパフォーマンスを実現していた。
マクラーレン 620Rスポーツ・シリーズの最終モデルがレーシングカーの公道版の620R
スポーツ・シリーズの最終モデルのマクラーレン620Rは、レーシングカーのマクラーレン『570S GT4』の公道バージョンとして開発された。クーペボディのみを設定し、サーキットと公道の両方で、レーシングカーのエクスペリエンスを提供することを目指している。
マクラーレン 620R620Rのサスペンションは、ドライバーが運転スタイルとサーキットの特性に合わせて、減衰力を調整できる。ダンパーは、通常のスポーツ・シリーズよりも6kg軽量とした。マクラーレンの最新の軽量ブレーキシステムを装備しており、カーボンセラミックディスクは、フロントが直径390mm、リアが直径380mmだ。鍛造アルミ製ブレーキキャリパーを組み合わせ、ペダルのレスポンス、サーキットでの耐フェード性を高めている。
620Rには、ピレリ「Pゼロ・トロフェオR」のセミスリックタイヤを標準装備する。オプションで、フルスリックモータースポーツタイヤが選択できる。ピレリのモータースポーツチームによって、マクラーレン向けに特別開発されたスリックタイヤは、620Rのブレーキとサスペンションを補完するように設計されており、横方向のGフォースを増加させ、ラップタイムを短縮させる。サイズは、フロントが19インチ、リアが20インチを履く。
マクラーレン 620Rエアロダイナミクスに関しては、570S GT4と同じ角度調整可能なカーボンファイバー製リアウィングを装着する。抗力を最小限に抑えながらダウンフォースを増加させるという。角度は3段階に調整できる。フロントバンパー、リップスポイラー、ボンネットは、620R用に再設計された。エアロブレードと専用デザインのリップスポイラーが装備される。カーボンファイバー製ボンネットには、ダウンフォースを引き上げ、車の上部の空気の流れを最適化する2つのダクトが設けられた。
620Rはエアコンやオーディオが未装備
マクラーレン 620Rインテリアは、フロアカーペットやグローブボックスを未装備とした。エアコン、「IRIS」ナビゲーション、オーディオシステムも付かないが、無償オプションで装備することができる。軽量な「Bowers＆Wilkins」オーディオシステムは、オプションで選択できる。
シートは、超軽量カーボンファイバー製レーシングシートで、6ポイントレーシングハーネスを標準装備した。ステアリングホイールには12時の位置に赤いマークが施される。バケットシートに体を固定した状態で、ドアを閉めるのに役立つドアプルストラップが採用された。パドルシフト、ステアリングホイールスポーク、センターコンソールなどには、カーボンファイバー製トリムが装着される。
マクラーレン 620R標準設定のボディカラー3色は、GT4のレーシングカーにインスパイアされたものだ。マクラーレンオレンジに白いストライプ、シリカホワイトにオレンジストライプ、オニキスブラックにオレンジストライプの組み合わせとなる。ゼッケンナンバーのデカールはオプションだ。マクラーレン『セナGTR』にインスパイアされたカラーリングも選択できる。
最大出力620ps のV8ツインターボ搭載
マクラーレン 620R570S GT4と同じく、620Rにはカーボンファイバー製の「モノセル2」シャシーを使用する。このモノセル2が、車両の剛性と軽量化の基盤になるという。620Rの乾燥重量は1282kgに抑えられる。
620Rには、570S GT4と同じM838TE型3.8リットルV型8気筒ガソリンツインターボエンジンが搭載される。620Rでは、レースのレギュレーションが適用されないため、エンジンECUとターボチャージャーのチューニングを変更することにより、最大出力620psを獲得する。歴代のスポーツ・シリーズで、最もパワフルという。
マクラーレン 620Rまた、このエンジンは、最大トルク63.2kgmを発生する。トランスミッションは7速SSGだ。0～100km/h加速は2.9秒、0～200km/h加速は8.1秒。最高速は322km/hに到達する。
スポーツ・シリーズは全7モデルに拡大
マクラーレン 570Sクーペマクラーレンオートモーティブは、このマクラーレン620Rを最後に、スポーツ・シリーズの生産を終了した。2015年に570Sクーペを発売して以来、8500台以上のスポーツ・シリーズ車が全世界で販売されてきた。
570Sクーペから始まったスポーツ・シリーズは、6モデルが続いて登場した。『540C』、『570GT』、『570Sスパイダー』、そして限定車の『600LTクーペ』、『600LTスパイダー』、620Rだ。
マクラーレン 570Sクーペなお、欧州、中東、アフリカで販売されている620Rの大部分は、オプションの「Rパック」を装着。Rパックには、グロス仕上げのカーボンファイバー製ルーフスクープとフロントフェンダールーバー、グロスナノブラックフィニッシャー付きチタン製スーパースポーツエキゾースト、カーボンファイバー製インテリアパックなどがセットされている。
