『TCRジャパン』ってどんなレース?ホンダ シビックで6年ぶりに本格レース復帰した中谷明彦選手に密着取材

中谷明彦選手のホンダ シビック TCR(DOME RACING)
中谷明彦選手のホンダ シビック TCR(DOME RACING)全 80 枚

2019年から始まった『TCRジャパン』は今年で3年目。2021年シリーズ開幕戦が4月3日~4日の2日間に渡り富士スピードウェイにて開催されました。

今シーズンは計10人による戦いが繰り広げられます。開幕戦に出場することとなった中谷明彦選手に密着しながらTCRジャパンの魅力に迫ります!

参戦車両は市販車がベース

TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)
TCRジャパンで使用される車は、WSC(世界スポーツコンサルティング)が定めた市販車をベースにレース車両規格にしたものを使用します。

車両の主な規定は、「FF車」「1750~2000cc ターボ付」「ガソリンエンジンorディーゼルエンジン」「4ドアor5ドア」「全長4.2m以上」「全幅1950mm以下」等、とても細かく決められています。

市販車がベースのため、オーナーの方々やカーマニアにも親近感がある車両が多く、BoP(性能調整)で車両間の性能差を少なくすることでドライバーの技術が試されます。1秒でも速く走るために、メカニックとの緻密なやりとりがピット内で繰り広げられています。

2021年シリーズは、国産メーカーとしては「ホンダ シビック TCR」が参戦。他には「アウディ RS3 LMS」「フォルクスワーゲン ゴルフ GTI TCR」「クプラ TCR」「アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェ TCR」が参戦しています。

ホンダ シビック TCR と 中谷明彦選手ホンダ シビック TCR と 中谷明彦選手
中谷選手が使用した車両は、レースチームである「童夢」がメンテナンスを担当する『ホンダ シビック TCR』。

中谷選手は、1993年のF3000(当時の国内トップカテゴリー)で「ダンロップ童夢F103i」で参戦したり、1990年、91年のツーリングカーの大会では「PIAA CIVIC」「JACCS CIVIC」で参戦していたこともあって、最新のシビックで参戦する今回のTCRジャパンは感慨深いレースになったようでした。

「サタデーシリーズ」と「サンデーシリーズ」

TCRジャパンは、各戦に「サタデーシリーズ」と「サンデーシリーズ」があり、名前の通り土日に行われ、それぞれ予選+決勝があるという内容です。

予選は、走行時間15分間の中でのベストタイムラップで順位を決め、決勝はスタンディングスタートで始まり「20分間の走行+1ラップ」の中で争われます。

土曜日の午前中にサタデーシリーズとサンデーシリーズの2回の予選が行われ、午後には決勝(サタデーシリーズ第1戦)を行うというスケジュールです。

TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)
基本的にスーパーフォーミュラとの併催で開催されるこのTCR Japan。今回は、「スーパーフォーミュラ」「スーパーフォーミュラライツ」「N-ONE OWNER‘S CUP」「スーパーカート」「TCRジャパン」と計5つの大会が併催され多くの観客で賑わいました。

もちろん、コロナ対策としてマスクの着用必須、観客席は一定の間隔を空ける、アルコール除菌が各所に設置される等、感染対策がしっかり行われていました。

波乱の開幕戦

#65 加藤正将選手(アウディ RS3 LMS)#65 加藤正将選手(アウディ RS3 LMS)
まずサタデーシリーズ戦決勝では、クプラTCRを駆ってポールポジションを獲得したHIROBON選手(19号車)が1位で独走。9周目には、アウディRS3 LMSの加藤正将選手(65号車)がマシントラブルでリタイアしセーフティーカーが導入。

ファイナルラップでレース再開し、2位を走っていたアウディRS3 LMSの藤井優紀選手(21号車)から見事逃げ切りHIROBON選手が優勝。

しかし、1位のHIROBON選手と2位の藤井選手がリスタート時の違反発覚により順位が見直され、4月3日の第1戦は、1位 井上恵一選手(7号車 RS3 LMS)、2位 佐藤潤選手(10号車 ゴルフ GTI TCR)、3位 中谷明彦選手(97号車)という結果になりました。

左から #10 佐藤潤選手、#7 井上恵一選手、#97 中谷明彦選手左から #10 佐藤潤選手、#7 井上恵一選手、#97 中谷明彦選手
そしてサンデーシリーズ第1戦決勝(4月4日)は、鈴木健自選手(17号車 RS3 LMS)が前日のレース中の接触により手首を負傷。大事をとって出走を取り止め、この日は9台での戦いとなりました。

予選ポールポジションを獲得した藤井選手でしたが、決勝スタート時のエンジンストールにより最下位に順位を落としてのスタートとなる事態が発生。2位スタートのHIROBON選手が首位にたち、2位を大きく引き離し優勝。

一方で前日リタイアとなった加藤選手はマシンを修復し、実力を発揮して見事2位に。3位には大蔵峰樹選手(73号車 ジュリエッタ ヴェローチェ TCR)という結果になりました。

最下位から圧巻の追い上げを見せた藤井選手は4位でゴール。注目の中谷選手は6位でフィニッシュ。

左から #65 加藤正将選手、#19 HIROBON選手、#73 大蔵峰樹選手左から #65 加藤正将選手、#19 HIROBON選手、#73 大蔵峰樹選手

ジェントルマンドライバー達による熱いレース

TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)
「普段まだ寝ている午前7時半からいきなり予選アタックするのは体が目覚めていなくてきつかったよ(笑)。現役の頃だったらすぐ適応できたけど、数年振りのレース参加だったから徐々に勘を取り戻すしかないね」と話しつつも、木曜日初日の練習走行では参加中最下位タイムに。「他のドライバーがみんな天才に見える」と呟いていた中谷選手。

早朝の予選アタックでは8位タイムを出し、直後のサンデーレース予選では大幅にタイムアップして6番手タイムをたたき出すなど言葉通り徐々に速さを発揮しました。

「サンデーレースはだいぶ勘が戻って、順位以上にいいレースができた。タイヤマネージメントして最終ラップまで前車に追いついていけたからね。BoPの関係でシビックはストレートで速度が伸びない辛い状況だったけど、マシンを細かく調整してかなりセットアップを詰めることができたんだ」

「童夢」というプロフェッショナルなチームと組むことで、往年の実力とセットアップ技術の能力を見せつけた中谷選手には「流石!」という周囲の声が沸き上がっていました。

#97 中谷明彦選手#97 中谷明彦選手
初参戦した中谷選手にTCR Japanの注目ポイントを聞いてみました。

中谷選手「TCRのレースは欧州、中国、日本、北米と世界各地でシリーズ戦が組まれていて、F1と同じく世界中のモータースポーツを統括するFIAが規定しているツーリングカーのトップカテゴリー。日本のシリーズはプロドライバーがコーチに付いてアマチュアドライバーに教えながら参戦するチームや、他のカテゴリーで活躍してステップアップしてきた若手など多種多彩なドライバーが揃っていて、想像していたよりハイレベルな戦いとなっている。いわゆるメーカーチームの参戦はなく、皆んな自分の車で走るのでワークスチーム同士によるぶつけ合いとか潰し合いがなく、お互いがリスペクトしあってクリーンなレースをしている真のジェントルマンドライバーが揃っていて、安心して走ることができたよ」

多彩なマシンラインアップや迫力ある接近戦だけでなく、世界に通用するジェントルマンドライバー達の戦い振りにも注目して観戦すると面白そうです。

TCRジャパン 2021シリーズは、第2戦が5月15日、16日にオートポリスで開催されます。公式YoutubeでLIVE中継もおこなわれるので、現地に行くことができない方も要チェックです。

TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)TCRジャパン開幕戦(4月3日・4日 富士スピードウェイ)

TCRジャパン 2021シリーズ 予定
開幕戦 4月3日-4日 富士スピードウェイ
第2戦 5月15日-16日 オートポリス
第3戦 7月24日-25日 スポーツランドSUGO ※第3戦のみSUGOチャンピオンカップ併催
第4戦 8月28日-29日 ツインリンクもてぎ
第5戦 10月16日-17日 ツインリンクもてぎ
第6戦 10月30日-31日 鈴鹿サーキット

※新型コロナウイルス感染状況により予定を変更する場合あり。

TCRジャパン 2021シリーズ 出場選手
#7 井上恵一 アウディ RS3 LMS(NILZZ Racing)
#10 佐藤潤 フォルクスワーゲン Golf GTI TCR(Adenau IDI GOLF TCR)
#17 鈴木建自 アウディ RS3 LMS(バースレーシングプロジェクト【BRP】)
#19 HIROBON CUPRA TCR(バースレーシングプロジェクト【BRP】)
#21 藤井優紀 アウディ RS3 LMS(Audi TeamHitotsuyama)
#45 竹田直人 ホンダ シビック TCR(若甦ドリームドライブ with KCMG)
#65 加藤正将 アウディ RS3 LMS(Audi Team Mars)
#71 大山正芳 ホンダ シビック TCR(ダイワN通商 アキランド CIVIC)
#73 大蔵峰樹 アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェ TCR(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)
#97 中谷明彦 ホンダ シビック TCR(DOME RACING)※第1戦のみ参戦

《渡邊伊緒菜》

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