【アウディ A4 新型試乗】ドイツ流の乗り味も今やオールドファッションか…中村孝仁

アウディ A4 35 TDI アドバンスト
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ガソリンエンジンの「35 TSFI」に試乗した時もアウディ『A4』の優れた制御やその上質なメカニズムは堪能できた。それは新たに追加された「35 TDI」でも変わることはなかったのである。

走り出すと、何と静かなことか!これまでのアウディというかVWを含めたどのディーゼルエンジンよりもこのA4のユニットは静粛性が高く滑らかに回る。この印象は480kmほど走った後も何ら変わることはなかった。

これまでのディーゼルとは別物な新エンジン

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考えてみれば現行VWのディーゼルはすべて横置きである。翻ってA4は縦置きだ。それに遮音材も奢っているのかな?などと考えていたが、かつて乗った『Q5』のディーゼルは縦置きだが、VWと変わらないざらついた印象の回転フィールに終始していた。

で、色々と調べてみると、このA4に搭載されているのはこれまでとは異なる「EA288evo」と呼ばれる最新のディーゼルユニットだったのである。こいつが新しいエンジンかぁ!と走り終わってからその実態を知ることになった。しかもこれには12Vのマイルドハイブリッドテクノロジーも結合されているから、走り出しがスムーズで且つ力強かったのだと、目から鱗のなるほどだった。

出力は163ps。従来の35 TDIは150ps/340Nmだったから、パワーは13ps、トルクのほうはというと40Nm引き上げられた380Nmとされていた。これだから確かなパフォーマンスアップが感じられるわけである。

EA288evoは従来のEA288から燃焼プロセスを変更し、ターボチャージャーのレスポンスも速めていることに加え、エンジン自体も軽量化され熱損失やフリクションロスを軽減したものになっているということで、それらがスムーズで軽快な回転フィールを作り上げているのだと思う。

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少なくとも一旦走り出して常用スピード領域に入ると、全くディーゼルを感じさせないスムーズさだし、パーシャルから追い越しをかけた時などの湧き上がるトルク感も、これまでのEA288とは別物だった。唯一いただけなかったのは、アイドリングストップからの再始動が、停車中だと乗員を驚かすほどの振動を伴うこと。これは改善の余地ありだと思えた。

ドイツハイエンド御三家ともいえるアウディ、メルセデス、BMWは従来の末弟車がそれぞれA4、『Cクラス』、『3シリーズ』だが、近年はその下に新たなエントリーモデルが誕生していることはご存知の通り。あくまでも個人的な感想として聞いてほしいのだが、これら従前の末弟車と新たに誕生したエントリーカーの間には見えざる大きな崖があって、どのブランドをとっても従来のローエンドカー、即ちA4、Cクラス、3シリーズとはその作り込みも乗ってみて感じる上質感も、大きな差があると感じている。

A4ははっきり言ってアウディの良心が滲み出たモデルだ。これをひとクラス下の横置きFWDモデルと比べると、質の違いを顕著に感じさせる。エンジンのみならず、ゆったりと身を委ねて走るそのフィーリングにそこはかとない上質感を感じさせるのはやはりA4以上のモデルだ。

ドイツ流の乗り味も今やオールドファッションか

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その乗り味というか、乗り心地に対して実はコメントに困っている。どっしりとして何物も寄せ付けないようなガッシリ感の強いボディ構造は、しかしながら大きな入力に対しては顕著なハーシュネスを伴う。しかしこの乗り味はかつてドイツ車が得意とした入力された揺れを一発で収束させる、ショートストローク型のサスペンションが醸し出す乗り味で、確かにこれが出てきた時代に我々ジャーナリストはその乗り味を絶賛した。

そして世界中でドイツ車の独り勝ち状態を作ったのもこの乗り味の成せる業であった。だから当時は猫足で鳴らしたジャガーやプジョーでさえも、硬く剛性感を感じさせる乗り味にしてドイツ車に右へ倣えをして、個性を失った。

しかし今はどうだろう。世界的にも超高速を売り物にする時代ではなく、日本も多くの人が感じていると思うが、高速道路上の平均スピードは以前と比べたら明らかに下がってきている。そんな中で日本の高速道路の最高速度引き上げは全く時流にマッチしていないのだが、すでに多くのメーカー(ヨーロッパの)はこれからやってくる電動車の時代を先取りしてか、乗り心地はマイルドであたりも柔らかい方向へとシフトしている。

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今回A4に試乗してみて感じたのは、ドイツ車全盛の時代の非常に良質なドイツ車のフィーリングそのものだった。ただ、この乗り味はやはり今となってはオールドファッションなのではないかと思うわけである。勿論この乗り味が好きでアウディを求めるお客様がいることは間違いない。しかし、100年に一度の自動車大変革期の渦中にあるとすれば、乗り心地に変化を求めても良いのではないかと思うし、つい先ごろ同じアウディの『RSQ3』に試乗した時は、その乗り味の進化をまざまざと見せつけられた印象があった。

恐らくA4がフルチェンジされるであろう数年先には劇的に変化した乗り味を持つA4が出現すると思われる。だから、このオールドファッションの(敢えて言うが)ドイツ流乗り味を持ったモデルを購入しようと思ったら、現行アウディA4が最もお薦めで、今後このガシっとした強固でいささか大きめのハーシュネスを感じる乗り心地はきっと味わえないと思う。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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