日本での注目度が高まる電動キックボード
タクシーやカーシェアよりも気軽でかつ、従前のキックボードや自転車のように脚力を使って漕ぐ必要がないElectric Scooter(以下、電動キックボード)は、排ガス規制にも対応したマイクロモビリティの手段として注目度が高まっています。また、スリムな車体で場所を取らないことから、都市部での駐車スペースの問題を解決する移動手段としても有効であるといえます。さらに、コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、公共交通機関で移動することが見直されつつあり、密を避けた移動方法の1つとしても普及が期待されています。
日本でも電車・バスなどの公共交通機関が発達していますが、ラストワンマイルと呼ばれる徒歩15分程の距離を手軽に移動できる交通手段のバラエティに欠けるという課題があります。また、複雑な路線図や言語の観点から外国人観光客にとってバスの利用は難しいと考えられるため、電動キックボードには、これらのギャップを埋めるモビリティ手段としての期待がかかります。
電動キックボードシェアリングサービスの市場規模
2019年5月にボストン コンサルティング グループが発表したレポートによると、2025年時点で世界の電動キックボード市場(販売市場を除いたシェアリング市場のみ)は、400~500億米ドルまで成⻑する⾒込みとなっています。また、関連するスタートアップも資金調達に成功しているケースが多くなっており、電動キックボードシェアリングサービス市場には注目が集まっています。

欧米先進国での動向
欧米の先進国では、電動キックボードのシェアリングエコノミーの導入が既に進んでいるケースが多く、普及しているエリアで乗りたい車体を見つけたら、スマートフォンのアプリでロックを解除し、乗った時間だけ利用料を支払うというサービスが爆発的な広がりを見せています。アメリカでは、Lime(本社:サンフランシスコ)やBird(本社:カルフォルニア州サンタモニカ)といった電動キックボードシェアリングアプリを開発するスタートアップがサービス提供地域を世界各地に拡大しており、UberやLyftといったライドシェアの代表企業もこの事業に参入しています。また、自動車大手のFordも2018年に電動キックボードシェア、サイクルシェアを運営するSpin社を買収して事業領域を拡大しています。また、欧州ではVOI(本社:ストックホルム)、Circ(本社:ベルリン)、Tier(本社:ベルリン)、Dott(本社:アムステルダム)、Bolt(本社:タリン、エストニア)などがサービス提供範囲を拡大しています。なお、電動キックボードの主な製造拠点としては中国があげられ、中でもNinebot(本社:北京)は2015年にSegwayを買収するなど、積極的に事業規模を拡大しています。
欧米の先進国での競争が激化する中、2020年5月にはLimeがUber及び投資ファンドから170百万ドルの出資を受け入れ、Uberの電動キックボードシェアリング事業であるJUMPと発表されるなど、業界再編も進みつつあります。



電動キックボードが積極的に導入されているアメリカでも、導入後に規制が強化されるケースが見受けられます。サンフランシスコでは、同サービスがいち早く導入されたものの、住民からの苦情が相次いだため、一時は電動キックボードの使用が禁止されました。その後、サンフランシスコは企業に安全性や使用方法に関する提案を求め、Skip及びScootの2社のみがサービスの再開を認められました。このように、サービス提供が開始されても住民の反対によって禁止されるケースが各地で見受けられます。
また、Unagi(本社:カリフォルニア州オークランド)やGrover(本社:ベルリン)など、電動キックボードのサブスクリプションサービスを始めた企業も登場しています。Unagiは月額49米ドル(年間契約の場合は月額39米ドル)、Groverは月額19.9ユーロをスタート価格として電動キックボードを貸し出すサービスを提供しており、これらの価格には保険及び修理サービスの費用も含まれています。このようにシェアリング以外にも、サブスクリプションでサービス拡大を目指す企業が増加しつつあります。
