【プジョー 3008 ハイブリッド4 新型試乗】独自性が光る待望の本格四駆モデル…中谷明彦

4WD PHEVの「ハイブリッド4」

アウトランダーPHEVとの相違点は

待望のプジョー本格四駆モデル

プジョー 3008 GT ハイブリッド4
プジョー 3008 GT ハイブリッド4全 17 枚

4WD PHEVの「ハイブリッド4」

ベースの『3008』は基本的にFF(前輪駆動)だが、『3008 GT ハイブリッド4』は、フロントに200psの1.6リットル直噴ターボ4気筒エンジンに110psのモーターを装着したパワーソースを搭載して前輪を駆動、リアアクスルにも112psのモーターをつけて後輪を駆動する。合わせて約300psのシステムパワーを発揮する四輪駆動を実現したモデルだ。

四輪駆動ゆえオフロード走行時でもトラクションがかかり、かなりの悪路でも問題なく走れる踏破性を持つ。ハイブリッド4にはEVモードに該当する「エレクトリックモード」がありフル充電だとEVとして64km(WLTCモードのメーカー公表値)の走行が可能とされているのだ。ハイブリッドモードを選択しなくても、通常は後輪モーターを駆動して発進し、特に急な登坂路でFF車では登れないような場所でも、リアモーターが積極的に駆動力を発揮して登っていくことができた。

プジョー 3008 GT ハイブリッド4プジョー 3008 GT ハイブリッド4
市街地での発進もリアモーターが行い、エレクトリックモードでは135km/hの最高速まで制御されるという。リアアクスルのモーター駆動ゆえRR車(後輪駆動)に近いような形になるわけだ。アクセルを強く踏み込み、強力な加速を要求すると前輪のエンジン+モーターも駆動し四輪駆動として機能する仕組みだ。

この車の特徴は、リアがモーターのみでフロントがモーター+エンジンということで、回生時はフロントがメインだが「スポーツモード」にするとリアも回生するようになる。路面のミューの違いを判定して、低ミュー路ではリアがロックしやすいのでフロントメインで回生、乾燥舗装路の高速道路など路面ミューが高いところでは後輪も回生させて回生効率を高めるというような仕組みをとっている。

アウトランダーPHEVとの相違点は

プジョー 3008 GT ハイブリッド4プジョー 3008 GT ハイブリッド4
またハイブリッド4システムは、三菱『アウトランダーPHEV』と非常によく似ていて、前輪と後輪が機械的に結合されていないので、自由自在に前後トルク配分ができる。その結果ハンドリング面でも状況に応じて最適な駆動力配分が前後で行えるのが強みとなっている。ドライブモードは「4WD」「スポーツ」「ハイブリッド」「エレクトリック」と4つのモードがある。ただ駆動配分制御のキャリブレーション(制御の煮詰め)的にはアウトランダーPHEVに一日の長があると言えそうだ。

悪路の登坂路(5%)での発進時には後輪をまず駆動し、後輪がスリップするとトラクションコントロール制御が介入し、同時に前輪も駆動し始める。前輪もすぐにグリップしないので、前後で制御が介入しあい、少しドタバタした印象を受けたのだ。

プジョーは、FFのSUV車にも四輪駆動のような高い走破性を得るために「ノーマルモード」「スノーモード」「マッドモード」「サンドモード」、ESCをオフにすることができる「オフモード」の5つが備わる「アドバンスドグリップコントロール」という制御を盛り込んでいるのだが、ハイブリッド4は四輪駆動なのでそれがなくても高い踏破性を発揮できる。その代わりにドライブモードを仕込んでPHEVの特性として多くのキャラクターを与えているというわけだ。

下り坂に関しては「ヒルディセントコントロール」機能がついていて、四輪のブレーキを自動的に制御してくれるのでドライバーは何もしなくても下ることができる。その際ギアはニュートラルにしていて「低速ディセントコントロール作動」という表示が出る。ニュートラルギアで惰性を使って降りてくるシステムで普通とはまたちょっと違っていて面白い。

プジョー 3008 GT ハイブリッド4プジョー 3008 GT ハイブリッド4

待望のプジョー本格四駆モデル

「ハイブリッド4」というシステムは実は歴史が古く、10年ほど前から採用していたプジョーだが、初代3008 ハイブリッド4はフロントにディーゼルエンジン、リアアクスルにモーターを搭載した「ディーゼル・ハイブリッド」であり、僕としては非常に興味があった車のひとつだ。

WRCにもハイブリッド4システムを搭載したラリー車を走らせたりして好成績を収めていたので、「ハイブリッド4」というプジョーの名を冠したモデルがいつ登場するか楽しみにしていたわけだが、今般ようやく3008がハイブリッド4として復活し、さらに近代的な技術を採用してモーターの出力も上げ、フロントにもモーターを付けて、ハイブリッドでもあり四輪駆動でもありという独自な車として仕上げてきた。

プジョー 3008 GT ハイブリッド4プジョー 3008 GT ハイブリッド4
このハイブリッド4だが、後輪モーターの作動範囲が低速の発進から最高速度135km/hまでアシストしてくれる。135km/hを超えるとリアモーターは完全に切り離される。リアモーターとドライブシャフト間にクラッチがついていて、それを切り離し、それ以上の速度域はFFモデルになるという。これはモーターの回転数制限から135km/hで切り離しているわけだ。135km/h以上の速度域ではフロントのモーターも切り離され、ガソリンエンジンだけでカバーするようになる。

こうしたさまざまな特徴を備えたハイブリッド4。パッケージングとしてはCセグメントのSUVだが、これまでの3008はFF車だからと購入を控えていたユーザーの方々にも安心して四輪駆動としての走破性を期待して購入してもらえる。プジョーとしても今回の新型3008ハイブリッド4の存在に高い意義を感じているようだ。

プジョー 3008 GT ハイブリッド4プジョー 3008 GT ハイブリッド4

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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