「ホンダが世界初の自動運転レベル3を市販化」このニュースは昨年の12月に発信されたものであるが、さほど話題にもならず、他の話題に消される事となってしまった。その話題とは、直後の豊田章男自工会会長の「政府電動化推進政策への提言」である。本来、ホンダのニュースは世界に誇るべき重要な発表であり、当事者のホンダのみならず、レベル3を認可した日本政府ももう少し大々的にアピールすべきであったと感じている。
3年前の2018年、ドイツのアウディが世界初の自動運転レベル3の市販車として「アウディA8」を発売した。しかし、当時のドイツ政府は、車両の自動運転に関する法整備を完了しておらず、メーカー(アウディ)の「見切り発車」として、A8はドイツ国内法でレベル3の認証を受けることができなかった。
世界初の自動運転レベル3の車両として認定されるためには、自動車メーカーの企業努力だけでは実現せず、メーカーの責任、ドライバーの責任、ひいては自動車保険の問題も含めた様々な条件が法制化され初めて現実のものとなる。その観点から見ても、ホンダの世界初の自動運転レベル3の市販化は、日本のみならず世界の自動車産業にとっても非常に重要なトピックである。
自動運転の定義とレベル
ひとくちに「自動運転」というと、自動車がドライバーの操作を必要とすることなく自律的に走行するという状態をさすが、自動車業界では明確な定義をもって論じられている。
米国の自動車技術機関であるSAE (Society of Automotive Engineers)は、2014年自動運転をレベル0からレベル5まで6段階で定義した。
「何ら自動化されていない従来の運転者(人間)が自動車の全ての操作を行なう」段階を、レベル0(ゼロ)とした。また、「人間の運転者が運転できる全ての条件下において、自動化された自動車が全ての運転タスクを実施する」レベルを最終段階のレベル5とした。
2017年当時の自動運転のロードマップ
この自動運転の実用化ロードマップ(図1)は、独自動車部品大手のコンチネンタル社が提示したものだが、2025年以前には完全自動運転(SAEレベル4)が実現すると示している。また、2020年までには、自動駐車システム・高速道路でのレベル3-4が普及するようなシナリオである。

図1. 自動運転のロードマップ(出所:独コンチネンタル社)