【第105回インディ500】走行開始を前に佐藤琢磨が会見…野球の大谷やゴルフ松山らの活躍も励みに「3勝目を狙って全力で走ります」

今年もインディ500に挑む佐藤琢磨。狙うは2連覇での通算3勝目だ(写真は2021年シーズン開幕前に撮影されたポートレートのなかの1枚)。
今年もインディ500に挑む佐藤琢磨。狙うは2連覇での通算3勝目だ(写真は2021年シーズン開幕前に撮影されたポートレートのなかの1枚)。全 9 枚

第105回インディ500(決勝5月30日)の走行開始を目前に控えた5月17日、日本時間の夜に、昨年の覇者・佐藤琢磨が日本メディア向けのオンライン会見に臨んだ。自身同様に米国で活躍する異分野の選手たちの名も挙げながら、2連覇、通算3勝目に向けての意気込みを語っている。

観客がいてこそのインディ500

「今年でインディ500は105回目を数えますが、自分自身にとっても、もう12年目ですね。インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)にはたくさんの思い出があります」

IMS伝統のスーパースピードウェイ(ビッグオーバルコース)における大レース「インディ500」で、2017年、2020年と2度の優勝経験を誇る佐藤琢磨はそう語る。アメリカのインディカー・シリーズおよびインディ500には2010年から出場しており、既にベテランといっていい存在だ。

昨年はコロナ禍の影響で8月に延期され、無観客での開催だったインディ500。琢磨はそこで自身3年ぶりの2勝目を飾った。2012年に勝利目前まで迫るもそれを実現できなかったときの所属チーム、2018年からの現所属でもあるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)とともにインディ500を制したのは初めてで、「8年越しの夢。本当に嬉しかったです」と振り返る。

ただ、やはり無観客であったことには、こうした思いも抱いた。

「観客がいないのは、ものすごく寂しかったですね。インディ500(の凄さ)って、100年以上ある歴史(初回は1911年)もそうなんですけど、通常なら30万人を超える観客のみなさんがいる会場との一体感、とてつもないエネルギー、あの雰囲気こそがインディ500だと僕は思っているんです」

これぞインディ500、という雰囲気を感じることは叶わなかった昨年の第104回大会。でも、今年は例年の5月開催へと戻り、「通常の40パーセントですが、14万人の観客が戻ってきます」。そう話す琢磨の声は、とても弾んで聞こえる。

“聖地”IMSでの戦いは既に始まっており、現地15日決勝の今季インディカー・シリーズ第5戦“インディGP”(ロードコース戦)を戦い終えているが、そこでは2019年シーズン以来、シリーズで初めてだったというドライバーズパレードがあり、参加時の観客の反応からも琢磨はスポーツイベントの“現場力”の大切さをあらためて実感した、そんな旨を語っている。2020年、第104回インディ500を制した佐藤琢磨。2020年、第104回インディ500を制した佐藤琢磨。

変わりゆく戦い方への適合は大きなチャレンジ

インディ500では直近4年で2勝、3位が1回(2019年)。近年の琢磨にはインディ500マイスター襲名、というようなムードもある。だが、戦いの様相は毎年少しずつ、あるいは大きく、変わり続けている。今年の戦いに向けてはこんな分析を語った。

「先月も(現地での)テストがあったんですが、今年のマシンはエアロパッケージ(空力パーツ群)のアップデートによって(全車的に)昨年よりも前走車に近づきやすくなっています。そのあたりは(ドライバー防護デバイスのエアロスクリーン装着元年だった)昨年ともだいぶ違ってきているところですね。展開的に“底上げ”されますので、単独で逃げるような走りは(より一層)難しくなる。そこで、どれだけの(戦闘力がある)クルマを(チームと)つくっていけるかは大きなチャレンジだと思います」

テストでは「最終的には2番手のタイムが出ました」という。ただ、「それはニュータイヤを使って、集団の風も(うまく)使って出した速度だったので、それが出せていることはいいのですが、自分のなかでは(総合的なマシンの仕上がりに)納得いっていなかったですね」とも述懐する琢磨。今シーズンのシリーズ戦での戦いが「苦労していますよね」という状況であることも事実だ(5戦してトップ10は2回、最高6位)。

日本代表のひとりであることの重みも受けとめ、全力で挑む

そうした状況も含め、「連覇のハードルは高いと思います」とも琢磨は語る。とはいえ、もちろんそれに挑む意欲は旺盛である。

「どんな状況からでも、あの大谷選手の素晴らしい逆転ホームランから気持ちとエネルギーもいただいて、頑張っていこうと思います」

メジャーリーグ・ベースボール(MLB)の大谷翔平選手(エンゼルス)の直前の活躍も引き合いに出し、たとえ苦戦に陥ったとしてもあきらめずに勝利を追求し続ける姿勢を琢磨は強調した。インディ500という特別な舞台での約2週間という長い戦いが、シリーズの流れを一変させる可能性もはらむことは熟知している、そんな力強さが言葉に宿る。

思えば、2017年の琢磨のインディ500初制覇あたりから、日本勢の米国での各種スポーツにおけるトップレベルでの躍進が顕著になったようにも感じるところだ。テニスでは大坂なおみ選手が四大大会のひとつ「全米オープン」で2度の女子シングルス優勝(2018、2020年)を達成。バスケットボールの世界最高峰、NBAでは八村塁選手や渡邊雄太選手が活躍するようになり、MLBでも多くの選手が躍動し続いている。

琢磨は今回の会見のなかで大谷選手と男子ゴルフの松山英樹選手の名を挙げており、「先日の松山選手のマスターズ優勝は歴史的なことですし、僕もテレビで見ていて凄いことだなと思いました」と語った。2017年と2020年、琢磨は既に2つの優勝リングをもっている(記者会見)。2017年と2020年、琢磨は既に2つの優勝リングをもっている(記者会見)。

「日本人選手がそれぞれの舞台で世界の頂点に立つなど活躍していますが、自分もそういうチャンスをいただいているひとりであることは重く受けとめています。ディフェンディングチャンピオンとして戻るインディ500、3つめのリング(インディ500優勝リング)を狙って全力で走っていきたいと思います」

ライバルに関しては台頭する若手を含めて五指に余るくらいの状況を語っているが、最警戒選手はやはりスコット・ディクソンのようだ。昨年のインディ500でも最後まで争った相手(2位)であり、シリーズチャンピオン6回の猛者。ただ、インディ500では意外にも過去1勝に留まっており、昨年は互いに2勝目をかけた戦いに琢磨は勝利している。ディクソンを筆頭に並み居る強豪を押しのけ、史上6人目の2連覇、史上11人目の通算3勝目に琢磨は挑む(歴代最多は4勝で3人、3勝が7人。3連覇以上は過去に達成なし)。

第105回インディ500(今季インディカー・シリーズ第6戦)は現地18日に走行開始となり、同30日に決勝日を迎える。

《遠藤俊幸》

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