【川崎大輔の流通大陸】アセアンからの外国人自動車整備エンジニア その9

《撮影 川崎大輔》
《撮影 川崎大輔》全 2 枚

営業事務(フロント)のベトナム人女性

株式会社センチュリーオート(石井社長、千葉県松戸市)では、10名以上の外国人が働いている。2020年5月に、センチュリーオートでは初めて外国人のフロント対応人材を採用した。ベトナム人女性のフォン氏だ。

最近、日本人の営業事務(フロント)人材の採用は厳しくなっている中で、高学歴であり普通に日本語でコミュニケーションが取れる優秀な外国人の需要が増えてきている。コロナ禍の今、中小企業にとって優秀な人材獲得の良いタイミングだ。この時期に優秀な人材の確保をしていこうと人材獲得競争が始まろうとしている。

外国人のフロント候補人材の特徴として、1つは言葉の能力があげられる。N2レベルの高いコミュニケーション能力を持ち、初めて外国人を採用する企業でも安心できる。2つ目に通訳・マネジメント能力。将来の技能実習生(整備)の通訳やマネジメントを担えるリーダー候補として考えることができる。3つ目として、ハイスペックであるということ。TOEIC740点、MOS(Office)、など、語学・パソコンスキルを持つハイスペック人材が採用できる。

そして、ベトナム人には、まじめで優しいという特徴がある。「愛想の良い接客対応、テキパキと書類のやり取りができ、勤勉で真面目な人材です」(自動車業界の経営者)。フォン氏もそんな人材だ。営業事務(フロント)業務以外にも幅広い場面での活躍が期待される。

技能実習生の採用を行なっている企業、またはこれから技能実習生の採用を考えている企業にとっては、彼らの通訳として、また実習生のマネジメントを担う人材として活用することが可能だ。今までコミュニケーションや生活面で技能実習生の活用に苦労されていた企業の問題をクリアにするマネジメント人材候補となるだろう。

◆外国人を採用して本当に良かった!

フォン氏は「今の仕事に就いたのは自動車も好きで、接客も好きだったからです。ベトナムは車も増えてきています。将来の夢は、自動車に関わる仕事で、自分のお店をつくりたいと考えています」と語る。

現在、フォン氏は、受付で接客を行なっている。また、車検・点検整備などの書類作成なども担当しながら業務を学んでいる。「日本で働こうと思ったのは、日本に留学して日本のことをいろいろ知りました。日本人は優しくて、真面目。住んでいる日本のまちはきれいです。だから長く住み働きたいと思いました」(フォン氏)。

自動車ディーラー、整備企業の中において積極的に外国人採用を行う経営者も増えてきた。それに伴い外国人の活躍の幅も広がってきている。

「人材不足の解消。外国人の受け入れのきっかけはそうでした。しかし、外国人を入れてみて、社内の風土が劇的に変わったのです。我々もそうでしたが、外国人の技術、やる気にそれほど期待はしていませんでした。しかし、外国人が入社してみると、休みでも出社させて欲しいと言い、積極的に業務を学び、どんどんと技術が上がっていきました」(石井社長)。

さらに「日本人とは覚悟が違うのです。受け入れる側がよっぽどしっかりやってかないといけないと気がつきました。すると日本人スタッフの意識も変わりました。日本人も外国人を見習うようになり、仕事に取り組む姿勢も変化しました」と言う。

短期的な人手不足とコスト削減の目先の利益で彼らの採用をしているのであれば、やめた方が良いだろう。石井社長は「外国人採用に興味があったら、実際に外国人を採用している会社に聞いたら良いです。二の足を踏んでしまっている会社もたくさんあると思いますが、一歩踏み出さないのはもったいない。そしてぜひ、理解ほしいと思います。受け入れ企業の社長、現場がどのような考えで外国人と接し、取り組み、彼らに期待をしているのかを。うちは外国人を入れて本当に良かったです。彼らがいなくなるというのは考えられません」と語る。

社風を変える外国人採用

満油商事株式会社(橋本社長、愛知県名古屋市)は、自動車のトータルカーサポート企業だ。自動車車検工場、鈑金塗装工場、ガソリンスタンド などを運営し新車・中古車販売なども行う。現在、2名のフィリピン人技能実習生(整備の技能実習ビザ)の他に1名のネパール人の女性フロントスタッフ(就労ビザ)が働いている。

「国籍で選んだのではなく人で選びました。彼らは精神的にも日本人より強いと思います。積極的に仕事をやらせてくれという思いが強く、社内の刺激になっています。彼らが入ってきて、社内のコミュニケーションが良くなりました。FacebookやLINEで皆が繋がっています。外国人たちが故郷の家族に送る写真をみんなが共有したりして楽しんでいます。だから日本人スタッフは一生懸命彼らをフォローしてくれますよ」(橋本社長)。

さらに「思っていた以上に仕事ができる彼らには、整備やフロント業務だけでなく、それ以外にも色々と教えたい。皆、独立志向が強いので彼らの夢を叶えるサポートをしていきたい」と語る。外国人はすでに会社にいてもらわないと困る存在となっている。

見た目でなく、まずはコミュニケーション

外国人に対する日本特有の課題があるという。橋本社長は「お客様に抵抗がある場合があるのはかわいそうだと思う。フロントで接客する外国人を、見た目だけでサービスは本当に大丈夫だろうか心配になるように判断する方が少しいるのは事実」と本音を語る。

フロント業務をこなすネパール人女性のラマさんの仕事は現在、フロント受付、そして来店されたお客様への案内(修理・点検の説明)、電話でのお客様対応、車検に関する書類準備などを行っている。「夢はビジネスを自分でやりたいと思っています。成功したいです。日本人は真面目で仕事に厳しい、けれど優しいです。今のこの日本での仕事の経験は将来の自分のビジネスにつながると考えています」と流暢な日本語で教えてくれた。

お互いを知るコツは、コミュニケーションをたくさん取ることだ。「外国人たちは日本人とのもっとたくさんのコミュニケーションを望んでいます。社内でも生活面でもコミュニケーションをたくさん取ることが大切です」(橋本社長)。

日本は島国だったため、他国と国境を接することがなかった。そのため、外国人と接する機会が他の国々より少ない。アフターコロナ時代、多くの価値観が強制的に変化することは間違いない。働く人々・企業の経営者の考え方、そして働き方が変化する中で、どのように外国人と共存共栄するのか、仲間として受け入れるのか、しっかりと日本人として考える時代が訪れた。

<川崎大輔 プロフィール>
大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年より自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。2017年よりアセアンからの自動車整備エンジニアを日本企業に紹介する、アセアンカービジネスキャリアを新たに立ち上げた。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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