ファイブスター大賞でも防げない乗員被害にどう対応するか…スバル レヴォーグ 新型

新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得
新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得全 21 枚

スバル レヴォーグ 新型にファイブスター大賞

25日、国交省および自動車事故対策機構(NASVA)による自動車アセスメント(JNCAP)のおいて、スバル『レヴォーグ』が2020年度の全対象車種の総合評価で最高得点となる186.91点(190点満点)を取得し、「ファイブスター大賞」を受賞した。

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JNCAPの評価は「衝突安全」「予防安全」「事故自動通報システム」の3つの項目について行われる。衝突安全では、正面からのフルラップ衝突、正面から少し横にずれたオフセット衝突、側面からの衝突、追突など複数のテストで乗員に与えるダメージを評価する。予防安全では、衝突被害軽減ブレーキの、対車両、対歩行者での性能、車線逸脱抑制、後方視界情報、踏み間違い防止機能といったADAS機能の評価が中心となる。事故自動通報システム(ACN)は、エアバッグ作動時などに、位置情報を含めた緊急通報を自動的に行うシステムの評価となる。

ファイブスター大賞は、JNCAPの評価で5つ星(ファイブスター)を得た車両の中で、もっとも得点が高かった車両に与えられる。アイサイトXを搭載した新型スバル・レヴォーグは、186.9点(190点満点)を獲得しファイブスター大賞に選ばれた。内訳は、衝突安全性能で、96.9点(100点満点)、予防安全性能と事故自動通報システムの評価でともに満点(それぞれ82点満点、8点満点)となっている。

ほとんどの項目で満点

近年、業界全体の安全性能の高まりからJNCAPの自動車アセスメントで5つ星を獲得する車両はそれほど珍しいものではないが、ほとんどの項目が満点というレヴォーグの得点は簡単に出せるものではない。評価項目が固定なら、メーカーは特定試験のための安全性強化に走ることができる。そのため、自動車アセスメントでは、評価条件を年ごとに厳しくしたり、評価項目に新しい技術や機能を取り込んだりしている。

当然、メーカーとしては、アセスメントの評価項目をKPIに安全性能を追求するのは本末転倒だ。スバルもJNCAPの評価項目を先取りする形で、独自の安全基準の設定や新機能の開発を続けている。アイサイトXはその取り組みの賜物といってよい。新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得

たとえば、アイサイトXでは、従来モデルより交差点の右左折での衝突回避や検知機能が強化されているという。現在の衝突安全評価は、前走車の検知と横断歩行者(昼夜間)の検知が対象となっているが、交差点右左折での車両、歩行者検知は対象となっていない。スバル(に限った話ではないが)では、車両の安全性や設計について、自動車アセスメント以外の基準を用いている。

アイサイトXは、自動運転レベルでは2に相当するが、投入された技術はレベル3以上の自動運転を意識したものになっている。センサー類の増設・改良による検知精度の向上、危険検知パターンの拡大、高精度3Dマップによる詳細な位置情報の把握、ドライバーモニタリングシステム(DMS)の採用がその例だ。シートベルトをしていない後席乗員の頭がセンターコンソールを直撃。ナビ他が破壊されている。致命傷は不可避。シートベルトをしていない後席乗員の頭がセンターコンソールを直撃。ナビ他が破壊されている。致命傷は不可避。

シートベルト非装着は人間側の問題だが

しかし、ファイブスター大賞を取ったレヴォーグでも対応しきれない事故があるという。それはシートベルト非装着時の乗員保護だ。シートベルトをしないのは人間側の問題であり、システムや機能だけで対処することは難しい。しかし、スバルはこの問題にも取り組んでいる。

スバルが日本や米国での交通死亡事故を調べたところ、後席はベルトの装着率が低く、事故死亡率が高い。当然の結果であり、対策はシートベルト装着の啓発活動につきるのだが、レヴォーグには警報音付きのベルトリマインダーが初代から装備されている。運転席について、ベルト非装着で警告音を出す車両は多いが、後席まで音付きで警告するシステムはあまり例がない。

ユーザーにネガティブ評価をされそうな後席シートベルトの音付きの警報装置だが、スバルはあえて装着した。スバルが実施したユーザーアンケートでは、インジケーターのみの警告より警報音によるリマインダーが後席ベルトの装着に効果が高いことが確認された。インジケータのみだと25%しかベルトを装着しなかったものが、警報音を伴うと70%にまで増えたという。新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得新型スバル・レヴォーグ:JNCAP ファイブスター大賞獲得

後席乗員が天井を変形、ナビに頭から……

こういったこだわりも、スバルの安全思想が自動車アセスメントをゴールとしたものではないことを如実に語っている。今回のファイブスター大賞受賞の発表では、各種の衝突安全試験の動画を公開している。衝突安全性をアピールする場合、通常はその車両がいかに衝撃を吸収し、乗員を保護し、対車両や歩行者に対する加害性を低減しているかを示す動画になりがちだ。しかし、スバルが公開した動画には、後席の乗員がシートベルトをしていなかった場合の衝突実験映像が含まれている。

映像では、助手席後方の乗員が前席のシートバックを破壊しながら、センターコンソールのナビ画面に頭から衝突する様子が映っている。さらに足や体の一部がルーフに激突し、ルーフを変形させている。シートベルト非装着がいかに危険であるかを伝えるに十分な動画だ。

並みの広報部や広告代理店なら、「せっかくの高評価に水を差すような映像はNG」となりそうだが、あえて、システムや機械で補えない事故を周知することは、正しいリスク評価、事故対応に欠かせない鉄則だ。安全技術の限界や安全でない状況の情報公開が、スバルブランドの信頼性や顧客ロイヤリティにつながっている。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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