ロールスロイス、「コーチビルド」部門を復活…世界に一台しか存在しない車を製作へ

カスタマイズプログラム「ビスポーク」の頂点に位置

2017年のワンオフ「スウェプテイル」がコーチビルド部門復活の契機に

当時のファントムクーペの車台に専用ボディを載せたスウェプテイル

ロールスロイスのコーチビルドの歴史:ロールスロイス40/50HPファントム I ブローアム・ドヴィル(1926年)
ロールスロイスのコーチビルドの歴史:ロールスロイス40/50HPファントム I ブローアム・ドヴィル(1926年)全 21 枚

ロールスロイスモーターカーズ(Rolls-Royce Motor Cars)は5月25日、「コーチビルド」部門を復活させた、と発表した。

カスタマイズプログラム「ビスポーク」の頂点に位置

コーチビルドは、ロールスロイスのカスタマイズプログラム「ビスポーク」の頂点に位置し、世界に一台しか存在しない車を製作するものだ。コーチビルドは、選ばれた顧客とロールスロイスの職人による、類まれなコラボレーションになるという。

コーチビルドとは、組み立て済みのシャシーに特注のボディを組み合わせる昔ながらの自動車生産手法。自動車の大量生産によって、ほとんど消滅したにもかかわらず、ロールスロイスはコーチビルドを復活させた。

1900年代初頭の自動車メーカーは、一般的に機械部品のみを製造していた。「ローリングシャシー」(車台)は専門の車体製造業者に送られ、顧客の要望を受けて製作された車体を、ローリングシャシーに組み合わせる方法が取られていた。

1920年代になると、主要な自動車メーカーは、振動やねじり応力などの問題にエンジニアが対応できる車体製造技術を、自社に導入するようになった。しかし、ロールスロイスのような高級車は、さらに数十年の間、社外の専門業者にコーチワークを依頼し続けた。ロールスロイスの顧客は、好きなコーチビルダーにローリングシャシーを納入することができた。コーチビルダーは、オーダーメイドのスーツと同様に、顧客の要望に合う車体を設計・製造していた。

2017年のワンオフ「スウェプテイル」がコーチビルド部門復活の契機に

ロールスロイスが今回、コーチビルド部門を復活させる契機となったのが2017年5月、イタリアで開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」で初公開されたワンオフモデル、『スウェプテイル』だ。

コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステは、イタリア・コモ湖畔で毎年開催されるクラシックカーの一大イベントだ。この長い伝統を誇るイベントは1929年、イタリア北部のチェルノッビオで「コッパ・ドオロ・ヴィラ・デステ」という当時の自動車部門の新製品展示会が開催されたことに端を発する。ロールスロイスが初公開したスウェプテイルは、2017年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステにおいて、来場者の視線を集めることになった。

スウェプテイルは、「オートクチュールに等しい車」をテーマに掲げて開発されたモデルだ。ある顧客が、20世紀初頭のお気に入りの車とクラッシック&モダンなヨットへの憧れから、インスピレーションを得て製作された。顧客の要望を受けて、流れるようなルーフラインや特徴的なテールデザインを備えたワンオフモデルを、ロールスロイスが完成させた。

当時のファントムクーペの車台に専用ボディを載せたスウェプテイル

スウェプテイルでは、ルーフ全面をガラスにすることにより、車内に自然光を取り入れた。スイッチ類は最小限に抑えられており、厳選された素材が際立つように配慮された。シートやアームレスト、ダッシュボード周りには、明るいモカシンとダークスパイスのレザーを使用した。光沢マカッサルエボニーと、オープンポアのパルダオとのコントラストを追求していた。

スウェプテイルの車台やパワートレインなど、技術的なベースは、当時の『ファントムクーペ』だった。ファントムクーペは、ロールスロイスの『ファントム』シリーズの4番目のモデルで、美しい2ドアクーペボディが特徴。エンジンは6.75リットルV型12気筒ガソリンエンジンで、最大出力は453ps、最大トルクは73.4kgmを引き出す。

ロールスロイスはコーチビルド部門を復活させて、このスウェプテイルに続く特注モデルを、特別な顧客のために製作していく。ロールスロイスのトルステン・ミュラー・エトベシュCEOは、「既存の制約を超えて、無限の可能性を探求したい顧客のために、コーチビルド部門を再び設立した。これにより、顧客のニーズに合わせて、ハンドメイドされた自動車を届けることができる」と述べている。

《森脇稔》

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