メルセデスベンツ博物館、特別展「未来のモビリティ」開催…次世代電動技術搭載のコンセプトカー出展

伝説の「シルバーアロー」の再来目指すEVコンセプトカー

2種類のボディパネルが載せ替え可能な『ヴィジョン・アーバネティック』

次世代の安全テクノロジーを満載した『ESF 2019』

メルセデスベンツ・ヴィジョン・アーバネティックとメルセデスベンツ・ビジョン EQ シルバーアロー
メルセデスベンツ・ヴィジョン・アーバネティックとメルセデスベンツ・ビジョン EQ シルバーアロー全 32 枚

メルセデスベンツ(Mercedes-Benz)は5月31日、ドイツのメルセデスベンツ博物館において6月1日から、特別展「未来のモビリティ」を開催すると発表した。

この特別展は、メルセデスベンツ博物館の「フューチャーラウンジ」のリニューアルオープンに合わせて開催されるもの。特別展は「エキサイト」、「直感的」、「エナジー」 、「責任」の4つのテーマのエリアに分かれており、それぞれがモビリティの未来に焦点を当てている。

特別展では、現在市販車に導入されている技術と、将来のモビリティのためのデザインとコンセプトを紹介する。中でもコンセプトカーに関しては、この数年に製作されたエポックメイキングなモデルが展示される。

伝説の「シルバーアロー」の再来目指すEVコンセプトカー

EVコンセプトカーの『ビジョンEQシルバーアロー』もその1台だ。同車は、メルセデスベンツのチーフデザイナー、ゴードン・ワグナー氏が中心となり、デザインされた1台。このコンセプトカーのキーワードが、「スイッチ・トゥEQ」と、「EQシルバーアロー」。「EQ」はメルセデスベンツが立ち上げた電動ブランドの名称だ。「シルバーアロー」は、メルセデスの伝説のレーシングカーを指す。ビジョンEQシルバーアローは、1937年に登場し、数多くのモータースポーツで成功を収めたメルセデスベンツ『W125』をモチーフにしている。

ビジョンEQシルバーアローは1名乗りでありながら、ボディサイズは、全長がおよそ5300mmと大きい。流線形のシルエットは、細身でありながら官能的なイメージを追求した。ボディの構造には、カーボンファイバーを使用する。フロントリップスポイラーなどの機能部品も、カーボンファイバー製とした。リアのディフューザーはモータースポーツを連想させるデザインだ。可変式のリアスポイラーは、減速が必要なときに風の抵抗を増加させることにより、エアブレーキとして機能する。

マルチスポークホイールは、ホイール1本あたり168本のスポークを使う。スポークは軽量なアルミ製で、メルセデスEQ特有のローズゴールドで塗装された。タイヤはピレリ製で、フロントが255/25R24、リアが305/25R26サイズを履く。

インテリアは、シートとステアリングホイールにサドルブラウンの本革を使う。キャビン全体にわたって、磨かれたアルミ素材をあしらう。フロアは、クルミ材を使ったダークウッド仕上げだ。これにより、シルバーアロー時代の歴史的なレーシングカーを再現している。ペダルは、ドライバーの身長に合わせて調整でき、ペダルを調整するためのコントローラーがシートに付く。

ビジョンEQシルバーアローは、EVレーシングコンセプトカーでもある。モーターは前後アクスルに搭載され、システム全体で750hpのパワーを発生する。床下に搭載されるバッテリーは、蓄電容量80kWhだ。1回の充電での航続は、400km以上の性能を備えている。

ビジョンEQシルバーアローには、最新のコネクト技術を搭載する。コクピットには大型パノラマスクリーンを装備した。車両周囲の映像をカメラで取り込み、3Dで表示する。誘導充電が可能な道路の車線を、このパノラマスクリーン上に重ね合わせて表示することも可能で、将来の充電テクノロジーを提示した。

また、AI(人工知能)の助けを借りて、かつてのシルバーアローレーシングカーや現在のレーシングカーとの仮想レースに参加することもできる。仮想レースでは、他のマシンがパノラマスクリーン上の実際の道路に現れる。バーチャルレースコーチアシスタント機能によって、ドライバーは運転技術を高めることが可能だ。

さらに、ステアリングホイールには、タッチスクリーンを装備した。ドライバーは、コンフォート、スポーツ、スポーツ+などのプログラムを選択し、運転特性を切り替える。サウンドの設定もでき、最新のF1マシンやメルセデスAMG のV8サウンドが再現できる。

2種類のボディパネルが載せ替え可能な『ヴィジョン・アーバネティック』

コンセプトカーの『ヴィジョン・アーバネティック』も展示される。ヴィジョン・アーバネティックは、メルセデスベンツが考えるオンデマンドで効率的、快適で持続可能なモビリティのためのコンセプトカー。EVパワートレインを搭載した完全自動運転車の提案となる。

ヴィジョン・アーバネティックは、1種類の車台を基本に、使用目的に応じて2種類のボディパネルを載せ替える。人を載せるライドシェアリングで使用する場合、丸みを帯びたエアロダイナミクスボディが特長。最大12人の乗客を収容できる。

また、荷物を運ぶ商用車として使用する場合、積載性を追求したスクエアなボディが特徴。荷室には欧州の標準規格の「ユーロパレット」を最大10個搭載できる。両ボディともに、完全自動運転車のため、ステアリングホイールやペダル、ダッシュボードなどは装備されない。

ヴィジョン・アーバネティックは、複数のカメラやセンサーシステムを使用して、車両の周囲をモニター。車両の前面には大型ディスプレイが装備されており、歩行者など他の道路利用者に対して、メッセージを表示。死角に入る歩行者や自転車などを車両が認識していることを、知らせることもできる。

ヴィジョン・アーバネティックは、少ない車でより多くの人や物資を輸送することを想定。これにより、人々の柔軟で快適な移動、効率的で持続可能な物資輸送、騒音や汚染物質の排出を大幅に減らし、都市計画の自由度を高め、都市生活の質の向上を実現するという。

次世代の安全テクノロジーを満載した『ESF 2019』

次世代の安全テクノロジーを搭載したコンセプトカー、メルセデスベンツ『ESF 2019』も特別展のハイライトの1台だ。ESF 2019は、メルセデスベンツ『GLE』をベースに開発された。パワートレインには、プラグインハイブリッド(PHV)を搭載する。車名の「ESF」とは、エクスペリメンタル・セーフティ・ビークル(安全実験車)を意味しており、ESF 2019はESFの最新モデルだ。

メルセデスベンツは1970年代から、ESFを安全技術の向上を目的に製作してきた。メルセデスベンツはESF 2019の公道走行テストなどを行い、その技術を将来の市販車に導入することを目指す。現在、研究開発を進めている最新の自動運転技術など、次世代テクノロジーを搭載しており、メルセデスベンツによると、一部のテクノロジーはシリーズ生産できるレベルにあるという。

ESF 2019には、メルセデスベンツの最新の自動運転技術を搭載する。完全自動運転モードで走行している時、ステアリングホイールとペダルは格納される。完全自動運転モードでは、ドライバーは移動中、運転操作以外の事を行える。これに配慮し、ESF 2019では、シート一体型シートベルトやシートバックレストのサイドボルスター一体型サイドバッグが装備された。ESF 2019には、手動運転モードも採用されている。

自動運転車では安全上、車両の意思を他の道路利用者に知らせることが重要となる。ESF 2019のセンサーは、車両の周囲を監視するだけでなく、あらゆる方向に通信し、他の道路利用者に警告することができる。また、ESF 2019には、革新的なヘッドランプ技術の「デジタルライト」を採用した。ハイビームでも対向車や歩行者がまぶしさを感じることなく、200万画素以上の解像度を備えている。

ESF 2019は、万一の交通事故の際、二次的な事故を防止するために、事故後に自動的に車両の後部から小さなロボットが現れ、三角停止板を掲出して他の交通の安全を確保する。同時に、車両のルーフから警告板がポップアップし、リアウインドウに警告メッセージが表示される。

ESF 2019の後席エアバッグでは、新開発のインフレーションを導入して、エアバッグを展開する。ベルトフィーダ、ベルトバックル照明、USBベルトバックル、ベルトヒーティングなど、後席の乗員のシートベルト着用率を高める多くのアイデアを採用している。

《森脇稔》

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