新連載[プロセッサー入門]タイムアライメントの仕組みと効果

「タイムアライメント」機能の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。
「タイムアライメント」機能の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。全 3 枚

カーオーディオシステムのサウンドクオリティをバージョンアップさせようと思ったとき、「プロセッサー」が重宝する。当特集では、これが何で、どのようなタイプがあり、どう用いると楽しめるのかまでを詳しく解説していこうと試みている。

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「タイムアライメント」とは、スピーカーの発音タイミングを制御する機能!

前回は、「プロセッサー」とは何なのかその概要を説明し、これによって何ができるのかを紹介した。その中で、現代カーオーディオではデジタルタイプの「プロセッサー」である「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)」が使われることがほとんどであること、そしてそれに搭載されている基本機能は3つあること、さらにその内の1つである「クロスオーバー」機能の役割について解説した。

それに引き続き今回は、「DSP」に搭載されている3つの基本機能の内の2つ目として、「タイムアライメント」に関して説明していく。

さて、「タイムアライメント」とはどのような機能なのかと言うと…。これはすなわち「発音タイミングをコントロールする機能」だ。そしてこのような機能が必要となる理由はズバリ、「クルマの中では“ステレオ”の効果を感じ取りにくいから」だ。

これが何を意味するのかを詳しく説明していこう。まず“ステレオ”とは、音楽を左右のchに分けて録音しそれを左右2つのスピーカーで再生することで演奏を立体的に再現しようとするものだ。人間は左右に2つの耳が付いていて、ゆえに音の出どころを感知し音像を立体的に感じ取れる。

“ステレオ”はいわば、その原理を逆手に取っている。音楽を左右のchに分けて録音するのはまさに、右耳で聴こえる音と左耳で聴こえる音とを個別に録音しているということなのだ。そしてそれぞれを別々のスピーカーで再生すると、演奏現場にて演奏を左右の耳で聴いているかのような状態を作り出せる。結果、音像を立体的に感じ取れるようになる。これが“ステレオ”のメカニズムだ。

「タイムアライメント」機能の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。

クルマの中では、ステレオ感を十分に感じ取りにくい。ところが…。

しかしクルマの中では、“ステレオ”の効果を体感し難い。なぜならば、リスニングポジションが左右のどちらかに片寄ってしまうからだ。“ステレオ”の効果を額面どおりに享受するには、左右のスピーカーから発せられる音を同様の音量で、かつ同様のタイミングで聴ける必要がある。ところが例えば右ハンドル車では、右側のスピーカーの音ばかりが耳に入ってくる。これでは“ステレオ”のメカニズムは発動されない。

なお、左右の音量差は比較的簡単に解消可能だ。どのようなカーオーディオメインユニットにも、左右のスピーカーの音量バランスを整えるための機能が付いているからだ。しかし、音の到達タイミングがズレてしまうことはいかんともし難い…。

ちなみに言うと、スピーカーの取り付け方を工夫することでもその緩和が可能となる。「ツイーターをキックパネルに装着する」という手法を取ると、右側のツイーターを奥まったところに設置できるので、左右のツイーターの距離差が少なくなる。ゆえに、リスニングポジションをやや中央よりに移動させたかような効果が得られる。結果、“ステレオ”の再現性がかなり上がる。

でも「タイムアライメント」を活用すると、それ以上の効果が得られる。近くにあるスピーカーの発音タイミングを遅らせることができるので、左右のスピーカーから放たれた音が同時にリスナーの耳に届くようになる。つまり、左右のスピーカーから等距離の場所にいるかのような状態を、擬似的に作り出せるのだ。

ただし、簡易的な「タイムアライメント」機能では、ツイーターとミッドウーファーとが別々の場所に装着されていてもそれを1つのスピーカーとして扱わざるを得ない。なので、ステレオ感をパーフェクトに再現するのは難しい。

「タイムアライメント」機能の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。

「クロスオーバー」が搭載された「DSP」なら、高度に「タイムアライメント」を運用可能!

しかし「クロスオーバー」機能が搭載されている「DSP」であれば、ツイーターとミッドウーファーのそれぞれの信号を“個別制御”できる。なぜならば、「DSP」内であらかじめ音楽信号をツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに分割できるからだ。

というわけで、もしもより詳細に「タイムアライメント」を効かせたいと考えるなら、「クロスオーバー」機能が充実した機器を選ぶべきだ。

しかし…。そのような機器を使う場合にはコントロール性能は上がるもののそれと引き換えに、1つのデメットが発生してしまう。そのデメリットとは、「システムが大掛かりになること」だ。

というのも、「DSP」内であらかじめツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに帯域分割すると、そのあとそれぞれの信号を個別に伝送する必要性が生じる。なので信号を増幅するパワーアンプも、スピーカーと同数のchが必要となる。

であるので例えば高度な「DSP」が搭載されているAV一体型ナビを使う場合には、ツイーターとミッドウーファーの信号を個別にコントロールする際には、内蔵パワーアンプの4chすべてをフロントスピーカーにあてがわざるを得なくなる。結果、リアスピーカーは鳴らせなくなる。また外部パワーアンプを使う場合には、フロントスピーカーを鳴らすために2chアンプではch数が足らず4chアンプが必要になる。

ちなみに、ツイーターとミッドウーファーのそれぞれにパワーアンプの1chずつをあてがうシステムレイアウトのことは「マルチアンプシステム」と呼ばれている。というわけで、高度な「DSP」を使う際には、「マルチアンプシステム」を構築する必要が出てくる。このことはぜひ、覚えておいていただきたい。

今回はここまでとさせていただく。次回は「イコライザー」について解説していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

「プロセッサー」活用学・入門 第2回「タイムアライメント」の仕組みと効果を解説!

《太田祥三》

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