日本ミシュラン、産官学連携で「群馬積層造形プラットフォーム」を設立…タイヤを超越して

左から群馬県産業経済部の鬼形尚道部長、群馬積層造形プラットフォームの鈴木宏子代表幹事、ジェトロ群馬貿易情報センターの柴原友範所長、日本ミシュランタイヤの須藤元社長、同研究開発本部新規事業部の伊藤祥子部長
左から群馬県産業経済部の鬼形尚道部長、群馬積層造形プラットフォームの鈴木宏子代表幹事、ジェトロ群馬貿易情報センターの柴原友範所長、日本ミシュランタイヤの須藤元社長、同研究開発本部新規事業部の伊藤祥子部長全 3 枚
日本ミシュランタイヤは6月25日、群馬県の製造メーカーと日本貿易振興機構(ジェトロ)群馬貿易情報センター、群馬県、前橋市、太田市、群馬大学などと連携し、「群馬積層造形プラットフォーム」という一般社団法人を設立すると発表した。

設立のきっかけは2年前の7月、ジェトロ群馬貿易情報センターから群馬県太田市に研究開発拠点を持つ日本ミシュランタイヤに声を掛けたことだったそうだ。

周知の通り群馬県は自動車やその関連企業が多く、経済的にもそれらの企業に依存している。ところが、その自動車産業が今、脱炭素社会に向けた電動化、さらにデジタルなものづくりによって大きな環境変化が起きている。それに危機感を持った群馬県は、より高付加価値な産業を育成するために、最新の技術、特に3D金属プリンターに目をつけた。しかし、群馬県の企業にはそんな装置を持っているところはなく、ましてその技術を教えるような指導者はいなかった。

「そんななか、ミシュラングループがタイヤ以外の新規事業で、10年以上にわたって積層技術を使ってタイヤの金型をつくり、かつ積層技術の教育プログラムを持っていると聞いたのです。それで、ミシュランと地元企業で金属積層技術を活用した人材育成や研究開発ができるようなプラットフォームを群馬県で一緒につくりましょうと打診した」とジェトロ群馬貿易情報センターの柴原友範所長は話す。

一方、ミシュランも「タイヤを中心に、タイヤ関連で、タイヤを超越して」の3分野で事業を伸ばしていこうという成長戦略を描いている。特に「タイヤを超越して」の分野でサービスやソリューションを積極的に展開している。その一つが積層造形技術のサービスだ。

ミシュランは2000年代初頭に、タイヤの金型製造に3D樹脂積層造形プリンターの適用を開始し、現在はタイヤ金型部品を金属積層造形で量産化している。さらに、合弁会社「AddUp」社で3D金属積層造形プリンターの販売、それを使った受託製造サービスも行っている。

「実はタイヤというのは複雑な商品で、200種類ぐらいの部材をつくったり、いろいろな工程がある。そのなかで培ってきたいろいろな技術があり、それをダイヤだけに限らず、社会に対してサステナブルやイノベーションの面で貢献できるのではないかと考え、今回の積層造形技術を軸にした産官学連携に加わることにした」と日本ミシュランタイヤの須藤元社長は説明する。

日本で最初の官営模範製糸場である富岡製糸場は1872年、フランスから技術導入し、研鑽を積んで日本のものづくりの近代化に大きく貢献をした。150年以上経った今、群馬積層造形プラットフォームで再びフランスからデジタル技術を学び、デジタルものづくりの礎を築こうとしているわけだ。

同プラットフォームは7月に立ち上がり、22年春に本格稼働する予定だ。現在、会員企業は8社で、これから興味がある企業を県内外問わず募っていくという。また、会員企業の募集の他に、地元の小中高、大学生を対象にして、デジタルものづくり人材の育成も計画している。

「最終的には、群馬県発のユニークで世界にない新しい材料や、設計、造形などの手法を開発し、知的所有権を共同で保有して、それを世界に発信していくオープンイノベーションを目指していきたい」と群馬積層造形プラットフォームの鈴木宏子代表幹事は抱負を語る。

《山田清志》

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